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なぜか区に抗議? 中野ブロードウェイの乱「まんだらけアダルト店VSファンシーショップ」と、いつもの外野の泥仕合

2021年09月07日 13:10  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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サブカルチャーの聖地と呼ばれる東京都中野区の中野ブロードウェイ。4階から地下1階まで300あまりの店舗がひしめき合い、様々なカルチャーを発信する、日本にはほかに類を見ないカオスな文化の震源地である。

そんな混沌とした場で起こった騒動が話題になっている。新たに出来たアダルトを扱う店に向かいの店が難色を示しているというのだが……。(取材・文:昼間 たかし)

ファンシーショップの向かいがアダルト専門店

発端となったのは8月28日に中野ブロードウェイの4階に店舗を構える女性向けのファンシーショップ「Spank!」のツイートだ。同店は2014年に高円寺から中野ブロードウェイに移転し営業を開始、海外からも注目される人気ショップである。そんな同店が28日に「コロナ禍でも日々営業がんばってましたが、まさか、コロナと全く関係ない事で店を閉める事になるかもしれません」とTwitterで発表したのが騒動の始まりだ。

その理由を同店のTwitterは次のように語る。

「Spank!向かいにアダルトDVD店がオープンしました。幅1m95cmの細い通路を挟んだ真正面です。当店としましては、営業を続けるのは大変厳しい状況です」

このアダルトDVD専門店とは、8月28日にオープンした、古書店・まんだらけ系列のアダルトショップ「禁書房」のこと。通路を挟んだ向かいに、アダルトショップがオープンしたことに対して「Spank!」の主張はこうだ。

「アダルト店自体が問題なのではなく、こういったお店が当店のような女の子むけファンシーショップ(もしくは、未成年者が多いお店や家族連れが多いお店など)の向かいにオープンすることに強い違和感を覚えます」

「Spank!」の説明によれば「禁書房」のオープンを把握したのは8月12日のこと。「Spank!」は、これに難色を示し、まんだらけ及び管理組合と相談をしたものの「ここしか空いている場所がなかった」として、開店に到ったため8月28日より店舗を休業しネット通販のみの営業に切り替えるとしている。

このことを告知する「Spank!」は、最後に、こう呼びかけている。

「違法では無いのかもしれません。しかし、ある日突然目の前にアダルト店がオープンし、営業が困難になってしまう、という事は、本当にあって良い事なのでしょうか?」

なぜか中野区役所に抗議する動きも

こうした話題がネットで賛否両論を集め、部外者による泥仕合が始まるのは、いつものことだが、今回も主にTwitter上では強い主張が錯綜している。「まんだらけの配慮がなさすぎる」「中高生も来店する」「Spank!の主張は営業妨害」というものまで。さらには「中野区役所に対して抗議が行われている」とか「すでに中野区役所がこの件で動くことを検討している」という、まことしやかな噂までが錯綜している。

まず気になるのは、中野区役所に抗議が行われているとか、区役所がなんらかの対応をするという噂。真偽を確かめるべく、区役所の産業振興課に話を聞いてみたところ……

「ご意見は頂いていますが、区として動くことはありません。そもそも条例などでそうした権限はありません。アダルトに関することでなにか問題があるとしたら、警察の担当です」

これまで区役所に寄せられた意見は10件程度。内容は、まんだらけを批判するものから、擁護するものまで賛否は様々だという。

実際の現地の状況は

ネットの情報だけを見ていると、通路を挟んだ向かいにあるだけで禍々しい空気を放っているかのように感じる「禁書房」。実際はどんな様子なのか、現地を訪問してみることにした。

訪問したのは9月4日の土曜日。中野駅の北口を出ると中野ブロードウェイへと続くサンモール商店街はコロナ禍とは思えない賑わいで完全な密。

むしろ、こっちのほうが心配である。

中野ブロードウェイに入り、エスカレーターで3階を経由して階段で4階へ。事前に案内図を見ていたのだが、なかなか店が見つけられずに迷ってしまった。というのも、イメージでは、通路からもすぐにわかるアダルトな雰囲気が全開かと思っていたのだが、そうではなかったからだ。店舗の前のショーウィンドウも上段はレトロな雰囲気すら感じるアダルトVHSやDVD、下段は昭和の文芸的マニア誌である。

通路から見える店内にはジャンル分けの卑猥な文字も見えるが、特にヌードやセックスシーンが露わになっているわけではない。むしろ、通路からは展示されている巨大な人形の足だけが見えるので、中野ブロードウェイによくあるニッチなマニア向けの店舗という趣である。ようは、思った以上にたいしたことなかったのである。しばらく様子を見ていると、店の前を歩く女性もいたが特に気にしている風には見えなかった。

落としどころは、どこにあるのか

ネットに散らばる様々な意見を見ていると、アダルトショップが通路から、僅かでも販売物が見えるスタイルで営業していることを問題視する声が多々見られる。これには、いささか疑問を感じる。

ここは店舗の最上階の4階である。通りかかるのは、近隣店舗の客たちで、何も知らない小さな子どもがふらりと訪れるような場所ではない。知っている人には宝の山、知らない人には禍々しさを感じる3階を通り抜けて、ここまでたどり着くころには、ある程度の心構えもできているだろう。加えて、中野ブロードウェイの店舗イコールニッチなマニア向けの店ということは、どの店も同様である。この建物に入ってしまえば、アダルトもファンシーショップも分別されはしない。

いずれにしても、アダルトも含めてあらゆるカオスな文化が集結するのが、中野ブロードウェイの特徴である。最初は忌避したマニアックな文化にいつの間にか染まっていくのも人生には、よくあること。外野の強い主張に惑わされず当事者同士で落としどころを探ってもらいたいものである。