2021年09月07日 10:31 弁護士ドットコム
「バイトAKB」として活動していた元アイドルで、現在は人気ラーメン店を経営する梅澤愛優香さん(24)が、トラブルに見舞われ、今秋にも予定していた新店のオープンを見送る事態となっている。
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新店で使う具材を仕入れるはずだった取引先に、「梅澤さんと反社会的勢力の関わり」を指摘するメッセージが届いたことで、梅澤さんは取引を打ち切られてしまったという。
メッセージを送った男性は、弁護士ドットコムニュースの取材に「業者への善意で送ってしまった」と送信の事実を認め、謝罪する意向を示した。
しかし、梅澤さんは、慰謝料など計220万円の損害賠償をもとめて、9月8日にも横浜地裁に提訴する。
梅澤さんは、東京と神奈川でラーメン店「麺匠八雲」、つけ麺の店「沙羅善」の計3店を手がける経営者だ。
AKB48グループの派生アイドル「バイトAKB」として活動したのち、2017年に「八雲」1号店をオープンすると、人気店に成長させた。
今年10月末には、沙羅善(鎌倉市)と同じ敷地内に、新店「絹ノ郷(きぬのさと)」を開く予定だった。コンセプトは、スープや具材に日本三大地鶏を使い、「生の絹」を練りこんだ麺でつくるラーメンだ。
生の絹で作る「絹ごし麺」が大きな特徴。生の絹は、東北の業者から仕入れることを予定していた。梅澤さんは業者の代表とも懇意にしており、新店で生の絹を扱う話は前向きに進んでいたという。
ところが、5月ごろから持ち上がった出店計画は、トラブルによっていったんストップすることになった。
弁護士ドットコムニュース編集部は、梅澤さんに、どんなトラブルがあったのか聞いた。
原因は、都内在住の男性が、業者の代表に送ったフェイスブックのメッセージだという。
そこに書かれていたのは、「私と反社や山口組との間で関係があると読める内容でした」(梅澤さん)
画像から日付はわからないが、梅澤さんによれば、8月11日から12日にわたって、送られたものだという。
〈●●さん(伏せ字=業者の代表)が応援してらっしゃる、麺匠八雲さんですが、人間性に問題ある方です、ネガキャンするつもりは毛頭ございません。あれだけ、ラヲタや評論家に毛嫌いされているラーメン屋さんはないと思います〉
〈先々トラブルに巻き込まれないか心配でメッセージさせて頂きました、余計なお世話だったらお許しください。裏に反社がいるのは事実なようです〉
上記のメッセージに対して、代表からは詳細を知りたがる返信がなされている。
ほかにも、男性からは「山口組」の関与をほのめかす内容のメッセージも送られていた。
〈何故か、夕方に脅迫めいた電話が来ました、洒落になりません 私のツイートが気に入らないのかは分かりません、どうやって調べて電話来た経由も分かりませんが、裏の人間は山口組絡んでるのでマジで気を付けてください。深入りは禁物です。呉々も。嘘でもなんでもないです。〉
「この男性はいわゆる『ラーメンヲタク』のかたです」(梅澤さん)
男性のものとされるツイッターやインスタグラムには、店で食べたり、自分で作ったりしたラーメンの情報が多数投稿されている。ラーメン業界関係者との交流も広く、業者の代表ともつながりがあったようだ。
メッセージの真偽を確かめるため、代表は8月13日、梅澤さんにメッセージのスクリーンショットを送ってきたあとで、電話してきたという。
梅澤さんは「そのような事実は今も昔も一切ありません」と否定したというが、代表は「メッセージが送られている以上、疑惑を晴らしてくれないと、お付き合いは厳しい」などとして、「生の絹」納入を取りやめにしてしまった。
ビジネスの相手に、反社会的組織との付き合いがあれば、大きな問題があることは言うまでもない。そのため、梅澤さんは、代表の決断を責める気はまったくないという。
「むしろご迷惑をおかけしてしまったことに申し訳なく思っております」(梅澤さん)
だが、梅澤さんが新店で自らのこだわりを実現するためには、「生の絹」がどうしても必要だった。
「粉の絹を練りこんだものもありますが、粉と生では圧倒的に違いがあって、生の絹は本当に絹のような滑らかさな口当たりが生まれます。生の絹は現在、この業者のほかでは手に入りません」(梅澤さん)
梅澤さんによれば、この男性は自身のツイッターでも、「そもそもバイトAKBだしww」などと、梅澤さんや店を遠回しに否定するような投稿をしてきたという。
業を煮やした梅澤さんは8月2日にアカウントをブロックした。「私を茶化したりして、他の人と一緒になってバカにしたりしているツイートを見て、腹が立ちました」(梅澤さん)
男性は、このブロックについても、「なんなのこの店主」「気にいならい輩はすべてブロックらしいな」(ママ)と反応し、不満をもらしていた(8月2日のツイート)。
出店計画が狂い、見直しを迫られたことから、梅澤さんもただ黙っているだけではいられなかった。
反社との関係があると吹聴されたことで名誉を傷つけられ、さらにビジネスの機会を失ったとして、男性を相手取り、慰謝料および業務妨害による損害賠償計220万円をもとめて、9月8日、横浜地裁に裁判を起こすことにした。
「8月時点で、新しい店の準備は進んでいて、すでに料理は9割、内装工事は8割完成していました」(梅澤さん)
さらには、今回の損害賠償のみならず、絹ノ郷の開店が遅れた場合、見込んでいた売り上げがたたないことから、営業損害についても請求する求める予定だ。
警察にも業務妨害の被害をうけたとして相談を進めているという。
弁護士ドットコムニュース編集部は9月5日、男性に電話で取材し、メッセージの送信が事実かたずねた。
男性は上記のメッセージを送ったことを認めたうえで、「又聞きで鵜呑みにした間違った情報を送ってしまった」などと話した。
「私としては、善意なんです。●●さん(=業者の代表)への善意で送ってしまった」とも説明し、「沙羅善さん(=梅澤さん)に直接謝罪したい」との考えも語った。
なお、梅澤さんに対するネガティブなツイートについても、「ツイッターやってて、スイッチが入って、余計なことをツイートしました」(男性)
男性は過ちを認め、謝罪の意向を示している。しかし、梅澤さんは、民事でも刑事でも、法的手続きをとる考えに変わりないという。
「考えに変わりはありません。取り返しがつかない内容ですし、私の心を深く傷つけるものでした。『やばい』と思ってから、ごめんなさいでは済まない問題だと思っています。
このかたとは、直接会ったことも話したこともありません。怒りというよりは落胆の気持ちが大きいです。いやなことをされる側の気持ちを理解してほしいと思います」(梅澤さん)
最後に、本当に反社会的組織との関係がないか聞いた。
「ありません。社員にもおりません」(梅澤さん)