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サザエやアワビ、勝手にとったらダメ! 罰金刑の前科がついてしまう可能性も

2021年09月06日 10:11  弁護士ドットコム

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兵庫県の沿岸で海水浴客によるサザエやアワビの密漁が多発している——。神戸新聞(8月11日掲載)の記事が話題となりました。


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記事によると、記者が海上保安官に密着した8月上旬にも、ウエットスーツの女性が素潜りを繰り返し、サザエ44個とアワビ1個を取っていました。女性は「採取が禁止されているとは知らなかった。少し取るぐらい構わないのでは」「自宅に持ち帰って食べるつもりだった」と話したといいます。



「自然のものだから自由に採っていいのではないか」と勘違いしている人もいるかもしれませんが、アワビやサザエなどの採取は禁止されており、高額な罰金が科される可能性もあります。



「子どもの喜ぶ顔を見たかった」という理由で、サザエやアワビを採った男性の事例について解説した記事(2021年6月5日掲載)を再掲載します。



●「前科がつくのを回避できないか」相談

サザエとアワビを採ったら、海上保安庁から任意聴取を受けた——。岩場で密漁した男性から「前科がつくのを回避できないか」という相談が弁護士ドットコムに寄せられました。



家族5人で磯遊びに行った男性。子どもの喜ぶ顔を見たいと意気込み、ウェットスーツに着替え、海に潜ってさざえ5個、あわび1個をとりました。これらは家族で食べる用だったと言います。



しかし、海から上がったところで、海上保安庁に呼び止められました。密漁と条例規定サイズ以下の貝を無許可で採ったとして、後日詳細な聴取が行われる見込みです。



男性は貝類を採ってはいけない場所を、「海女さんがいる海」と認識していたため、密漁だとは思ってもいなかったとこぼします。



果たして、男性はどのような罪に問われるのでしょうか。また、前科がつくのを回避する方法はあるのでしょうか。岡本裕明弁護士に聞きました。



●無断であわび「3年以下の懲役または3000万円以下の罰金」の可能性も

釣り堀のいけすの中を泳いでいる魚や、市場で売りに出されている魚介類を持ち去れば窃盗罪が成立することはイメージしやすいと思います。



同じように、定置網漁によって獲られた魚介類を持ち出す場合でも窃盗罪が成立します。それは、「他人の財物」を窃取したと評価できるからです。



今回の相談内容からすると、お父さんがとってしまったさざえやあわびは、まだ誰のものにもなっていないように思います。しかしながら、あわびは、特定水産動植物として指定されており(他にはなまことうなぎの稚魚が定められています)、無断でとること自体が禁止されています。



「特定水産動植物を採捕した者」に対しては、3年以下の懲役または3000万円以下の罰金を科すことが定められています(漁業法第189条1号)。



また、さざえは、特定水産動植物としては指定されていません。しかしながら、特定水産動植物以外の魚介類であっても、都道府県知事が漁獲割当管理区分を定めている場合には、その割当が設定されていない者による採捕行為に対して、3年以下の懲役または300万円以下の罰金を科す旨が定められています(漁業法第190条1号)。



さらに、法律だけでなく、各都道府県が定める漁業調整規則は、いかなる水域においても採捕を禁止する水産動植物やそのサイズを定めております。さざえ等の乱獲が懸念されるものについては、多くの都道府県において採捕が禁止されており、違反行為に対しては罰金刑等が定められているのです。



●漁業法違反の事件は珍しいものではない

漁業法違反の事件は珍しいものではなく、法務省が公表している検察統計統計表によると2019年には3件が正式に起訴され、636件が略式罰金に科され、294件が不起訴とされているようです。



今回の事案におけるお父さんには、常習性や転売目的等も認められないように思われますし、とってしまった量も多くありませんから、不起訴処分を得ることも十分可能だと思われますが、罰金前科がついてしまう可能性も十分に認められます。



お子さんを喜ばせることができないばかりか、前科まで付いてしまったのでは、楽しい海水浴の思い出が悲惨なものになってしまいます。海で生物をとる時には、とっていい物・場所であるのかについて、十分な確認を行っていただければと思います。




【取材協力弁護士】
岡本 裕明(おかもと・ひろあき)弁護士
刑事事件及び労働事件を得意分野とし、外国人を被疑者・被告人とする事件を多く取り扱っている。多数の裁判員裁判も経験している一方、犯罪被害者の代理人として、被害者参加等も手掛ける。

事務所名:弁護士法人ダーウィン法律事務所
事務所URL:https://criminal.darwin-law.jp/