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運転席から見た〝迷惑撮り鉄〟 現役鉄道マン「あの人たち、本当に危ないんで」

2021年09月04日 08:01  弁護士ドットコム

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鉄道ファンの中でも「撮り鉄」と呼ばれる人たちの撮影マナーをめぐって、トラブルが頻発している。


【関連記事:【動画】撮り鉄の線路侵入で電車が止まった瞬間】



たとえば、2021年3月には東京都日野市内のJR中央線(快速)の線路上に撮り鉄らしき複数人が侵入し、電車が緊急停車した。運転士が大声で説教する動画がネットで反響を呼んだ。







また、今夏には千葉県のJR南船橋駅で、電車が近づいてきているのに、黄色い点字ブロックをはみ出して撮影していた撮り鉄に対し、駅員が激怒する動画が拡散するなど、ホームでの撮影でもトラブルが複数起きている。



一部の迷惑な撮り鉄について、ある鉄道会社の運転士は「鉄道の細かい知識はあるのに、どうして運転士や運行側の立場で考えられないのだろう」と顔をしかめる。匿名を条件に話を聞いた。



●線路内などの立ち入りは違法行為

運転士目線では、線路近くでの撮影が特に迷惑だという。



「撮り鉄の中には、列車に当たるか当たらないか、ギリギリのところまで近づいてくる人がいるんです。



本人たちはなまじっか知識があって、『車両限界』や『建築限界』は侵していないと言います。要するに接触しない距離は守っているということですが、そもそも『鉄道営業法』という法律では、鉄道地内に入ったらアウトなんです」



●本人たちは「大丈夫」でも、運転士にとっては…

距離は関係ないというのは、実際に電車を運転してみれば分かるという。



「車を運転するとき、歩道と車道のギリギリに人がいたら怖くないですか?



車はまだ左右に避けられますが、電車は真っ直ぐにしか走れません。しかもスピードは高速道路並みか、それより速いこともある。



本人たちは大丈夫のつもりかもしれませんが、こちらからすれば、ギリギリまで線路に近寄られたら、当たるか当たらないかなんて分からないんですよ。実際に運転席にいたら、めちゃくちゃ近く感じますよ。



電車は急には止まりません。人影を認めてブレーキをかけても、止まるまでの制動距離は400mになることもある。そんな遠くから接触するかどうかが分かりますか? その人が飛び込んで来ないと断言できますか?



会社からは危ないと思ったら止めろと言われています。急に人が飛び込んできても、減速していれば、運転士がとがめられることはまずありません。でも、当たらないだろうと思って、減速せずに接触したら逮捕されてしまう。人生かけるくらいなら止めるか、少なくともスピードは緩めますよね。そもそも死者を出したくありません。



いつも通っているルートですから、人がいたら分かりますし、撮り鉄の人はカメラのレンズが反射するんで特に目立ちます。線路に〝あの人たち〟の姿が見えるたびに、いつも緊張します」



●電車が止まると各所に大迷惑が…

電車を止めてしまうと、鉄道会社のさまざまな人たちが忙しくなるという。



「制動距離が長いから、だいたいは通り過ぎてしまいます。なので、走って現場まで戻って、問題がなかったか確認します。運転中に衝撃を感じなくても、人間の腕とか指とかって簡単に吹っ飛んでしまうので。撮り鉄がまだその場にいれば、出ていくように言う必要もある。違法ですから。



接触していたら体が隣接線まで吹き飛ばされていることも想定しないといけません。運転士は二次災害を防止するため、上り下りにかかわらず、周囲の列車を停止させる措置を講じるよう指導されています。



ただ、この措置は一定の距離にいる電車すべてに働いてしまうので、まったく関係ない路線にも影響することがあります。



停止した他の電車は指令所の連絡待ちです。でも、指令所も停止無線の理由は、その車両に聞かないと分からない。この確認だけで数分かかります。電車って数分遅れただけで運行調整が忙しくなってくるんです。乗り換えの接続があるから、玉突きでどんどん遅れていく。



一度酷かったときは、電車を止めた運転士が撮り鉄と揉めて、指令所からの電話をいつまでもとれずにダイヤが大幅に乱れたことがありました」



●電車に近づきすぎると本当に危険

撮影は駅のホームからなされることもあるが、ここでのマナーも問題になることが多い。



「その駅で停車するのなら、電車との距離が近い人がいても、減速して慎重にやれば良いので、ある程度は何とかなります。やはり怖いのは通過するときですね。



駅の利用者からすると、点字ブロックや線ってホームのへりから少し離れてあるように見えるでしょう。でも、運転する側から見ると、あの線の上にいるだけでも結構危なく見える。



通過する電車ってスピードが出ているじゃないですか。空気の流れの関係で、身体が車体側に引き寄せられる恐れがあるんですよ。電車の車体って意外と凸凹しているんで、ちょっと触れただけで、指とか腕とか簡単に持っていかれてしまいます。本当に危険なんですよ」



撮影している側からすれば、そんなことは分かっている、自分たちは大丈夫だと言うことかもしれない。しかし、鉄道会社サイドからしたら、そんなものは信用できないだろう。



「危ないときは警笛を鳴らすんですが、挨拶だと思っているのか、手を振ってくる撮り鉄もいて、イラっとしますね。そうじゃねーよと。挨拶は出発式のときぐらい。走行中の警笛は基本的に注意喚起です」



鉄道の安全運行は法的にも保護されている。この鉄道会社では、困ったときは警察を呼ぶように指導されているという。駅ホームからの危険な撮影が想定されるときは、あらかじめ警察に警備を依頼することもあるそうだ。