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100巻はもはや通過点? 結末は知りたいけれど、終わってほしくない長期連載漫画をピックアップ

2021年09月03日 17:51  リアルサウンド

リアルサウンド

結末は知りたいけど終わってほしくない漫画

 世の中には長く続く物語というものがある。漫画でも長編と言われる作品では100巻越えというものも少なくない。近年では2016年に『こちら葛飾区亀有公園前派出所』が最終回を迎え、多くの人がその終了を惜しんだ。コミックスは全200巻、連載期間は1976年(昭和51年)から2016年(平成28年)と40年にわたる。40年。ひとつの作品を40年描き続けるパワーたるや。


(参考:【画像】長期連載作品の”最新刊”をチェック


 このように長期にわたって人々を楽しませ、ほとんど生活の一部として愛されている人気作たち。本稿では、そのいくつかを紹介したい。


■尾田栄一郎『ONE PIECE』


 1997年にスタートした『ONE PIECE』。主人公であるモンキー・D・ルフィが「ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)」を巡って仲間たちと共に海から海へと冒険を繰り広げていく。


 「週刊少年ジャンプ」ではこち亀に次ぐ長期連載で、9月3日には100巻が発売。全世界累計発行部数は4億9000万部を突破した。


 「海賊王になる!」と言っていたルフィは大きく成長し、精悍な青年になった。仲間たちも増えたが、敵も強大になっていくばかり。作者の尾田栄一郎も最終回が近いとテレビ番組でも話しているが、ルフィたちの行く末はいかに。


■青山剛昌『名探偵コナン』


 1994年にスタートし、こちらも今年コミックス第100巻が発売される。連載誌の「週刊少年サンデー」では史上最長の連載となっている。


 黒の組織によって少年の姿にさせられた高校生探偵・工藤新一が、「江戸川コナン」となって数々の事件を解決していく。一方で元の体を取り戻すべく黒の組織の陰謀を追う。


 多くの事件が起こるが、大半は黒の組織とは無関係だ。組織に関しては長い伏線が張られていて、それがどのように全て回収されていくのかが見どころだ。連載は20年以上にわたるが、作中では半年程度しか経っていない。その間に、数えきれないほどの事件が起き、人間関係も変化している。一体、新一は元の姿に戻れるのか、そして、黒の組織の陰謀とは。


■原泰久『キングダム』


 2006年から「週刊ヤングジャンプ」で連載されており、現在コミックは62巻まで発売されている。2019年には実写映画化され大ヒットを記録、続編の制作も発表された。中国史において初めて天下統一を果たした始皇帝と、彼の支える将軍李信が主人公の物語だ。


 『ONE PIECE』や『名探偵コナン』と異なるのは、史実をもとにした話であり、ある程度の結末を予測することができること。それでも人気があるのは中国戦国時代が好きな読者が多いことのほか、エッジが効いた魅力的なキャラクターが多いこと、そして冒険譚としてではなく、戦略・戦術などが描かれており、「読み解く」という側面でもおもしろいから、ということもあるだろう。


 それに、始皇帝が中国を統一することを知っていても、その過程を詳しく知る人は少ない。今後、どのような展開が待っているのか、注目したい。


■美内すずえ『ガラスの仮面』


 1976年から「花とゆめ』で連載されている『ガラスの仮面』は2012年時点で49巻までが発売されている。


 貧しい家庭で育った少女、北島マヤが演劇の才能を開花させ、大女優・月影千草やライバルの姫川亜弓とと出会い、成長していく姿を描く。アニメ化、ドラマ化もされ、何らかの形で目にしたことがあるという人は多いのではないだろうか。


 連載開始から45年経ち、2012年から新刊は出ていないが、完結させることは明言されているようなので、読者としては待つしかない。中には「死ぬまでにどうか完結してほしい」と願う人も。


■ほかにもある! 長期連載漫画


 ごく一部しか紹介できていないが、他にも長期連載漫画は多数ある。1968年(昭和43年)から連載がスタートし「最も発行巻数が多い単一漫画シリーズ」としてギネス世界記録に認定されている『ゴルゴ13』(201巻)を始め、『ミナミの帝王』(162巻)、『クッキングパパ』(158巻)、『はじめの一歩』(131巻)、『パタリロ!』(103巻)。1983年に連載がスタートした『課長島耕作』は、『島耕作シリーズ』として社長、会長を経て、現在も『相談役島耕作』が「週刊モーニング」で連載されている。


 また、連載はストップしているが、続きが切望されている作品も。2000年からCookieで連載されていた『NANA』は、作者である矢沢あい療養のため2009年でストップしている。Twitterで「連載再開」がトレンドに入ると、セットで必ず目にするのが冨樫義博の『HUNTER×HUNTER』だ。1998年から連載がスタートし、「少年ジャンプ」内では『ONE PIECE』に継ぐ長期連載だが、たびたびの休載のあと、2018年11月から約3年近く休載となっている。これらの作品も、もちろん著者の体調が最優先だが、結末まで読みたい作品だ。


 長期連載となる作品にはたくさんの魅力がある。物語の緻密さ、魅力的なキャラクター、何度読んでも新しい発見があること、さりげなく反映された世相。何より、ひとつの作品を描き続けられる作者本人のパワーと物語構成。『ゴルゴ13』は連載開始から52年目を迎えるまで、一度も休載がなかったというから驚きである。


 長く続く作品が終わるのは寂しい。しかし、結末を知らされないのもつらい。最終回が訪れるのは読者としては複雑な心持ちだが、その結末を楽しみながらも、心して待ちたい。


(文=ふくだりょうこ)