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「アーツ前橋」作品紛失、市から責任指摘された前館長が反論「原因が調査されていない」

2021年09月03日 12:21  弁護士ドットコム

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群馬県前橋市の美術館「アーツ前橋」で、作家の遺族から預かった作品が紛失した問題をめぐり、当時館長をつとめていた住友文彦氏は9月1日、前橋市による調査報告書に反論する「意見書」を公表した。


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前橋市の報告書で大きな問題点の一つとされたのが、遺族に対する報告の遅れだ。2020年1月に紛失が確認されたにもかかわらず、遺族への報告はその6カ月後だった。前橋市は報告書で、住友氏と学芸員が遺族に事実を伝えることを避けようとしていたことなどを原因として指摘していた。



これに対し、住友氏は意見書で、作家の遺族や市民らに謝罪する一方、紛失について「調査すべき点について調査されていない」などと反論した。



●住友氏「盗難の可能性が調査不足」

2018年12月、アーツ前橋の学芸員が作家の遺族らから52作品を預かり、閉校した中学校舎のパソコン室に搬入したが、2020年1月にアーツ前橋に移動させる作品を確認したところ、3作品が見当たらないことがわかった。2月には新たに3作品が確認できず、合計6作品の紛失が判明した。



前橋市の報告書では、紛失の原因については誤廃棄の可能性が示唆されるにとどまり、作家の遺族らへの報告の遅れや、市長への報告などの初動が遅れたことを指摘。住友氏と学芸員が、「作品リストを更新して、紛失した作品は最初から借用していなかったと遺族に伝える」「2022年に作家の企画展を提案し、その終了後に紛失の事実を伝えるか判断する」などと提案したとした。



これに対し、住友氏は意見書で、「美術品の紛失に関する原因調査について、調査すべき点について調査がされず、報告しなくてもよい点について報告がされているなど諸々の問題がみられます」と反論。前橋市側が紛失発覚時当初から、「誤廃棄」の可能性を強く打ち出していたことから、他の可能性も調査してから作家の家族に報告する予定だったと釈明した。



住友氏は、盗難の可能性について調査不足であるなどと批判している。



この意見書は住友氏が6月、前橋市に対して提出したもので、今回公表した理由について、「私が沈黙を保ってきたので、批判を容認していると考えていた人もいると聞いたので公表することにしました」と説明している。



●美術評論家連盟にも「抗議」

この問題をめぐり、美術評論家連盟は5月、情報公開請求によって入手した資料をもとに検討した結果、「(前橋市の)調査報告書の内容がおおむね妥当」という見解を公表した。その中で、住友氏の言動を「美術館員及び評論家としての職業倫理に悖(もと)るもの」と厳しく非難していた。



これを受けて、住友氏は6月、美術評論家連盟を退会したことも明らかにした。9月1日に公表された文書で、住友氏は「私が抗議したいことのひとつは、このように今後前橋市宛に送付される私の『意見書』や他の報道等が将来明らかにすることを待たずに、判断を進めようとしている点です」としている。