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『ガラスの仮面』速水真澄の“嫉妬”エピソード3選! マヤが気付かないのが不思議なほどバレバレの恋心

2021年09月03日 11:21  リアルサウンド

リアルサウンド

『ガラスの仮面(9)』

 少女漫画の大作『ガラスの仮面』(白泉社)主人公・北島マヤの運命の相手は、マヤが舞台に立つたびに紫のバラを贈り続ける、大手芸能事務所の社長・速水真澄(はやみ・ますみ)だ。マヤは正体を知らずに「紫のバラの人」と呼んで感謝していた。彼は冷酷な性格で知られていたが、マヤに出会い初めて人を愛する気持ちを知る。


 真澄はマヤへの恋心を隠して生きている。ところが読者からすると、真澄の気持ちは周囲にバレバレなのだ。マヤが他の男性と何かあったとき、いつも嫉妬心が行動や表情に出てしまうからである。


 その中でも特に衝撃的な真澄の“嫉妬エピソード”を三つ紹介したい。


関連:【画像】『ガラスの仮面』39巻、42巻表紙


■マヤが初恋宣言! グラスを手で割りケガをする(9巻)


 マヤが諸事情で速水真澄の芸能事務所に所属し、テレビドラマに主演していた頃のエピソードである。マヤは共演した俳優・里見茂(さとみ・しげる)と惹かれ合っていた。しかし芸能界の若手スターにとって恋愛はご法度。マヤは自らの思いを心に秘める。


 しかし事件はマヤの初主演映画『白いジャングル』完成披露試写会で起きた。多忙なスケジュールにも関わらずお祝いに駆け付けた里見茂は、マスコミから注目されながら、堂々と宣言する。


”ぼくは彼女が好きです”


 即座に記者たちは、マヤはどうなのかと聞く。驚いて止めようとするマヤのマネージャー・水城に、なぜか速水真澄は「まて」と指示する。


 マヤも自分に嘘をつけなかった。


 茂への気持ちを記者に聞かれ「好きです…」と答えたとたん、真澄は持っていたシャンパングラスを握りしめるように割る。手のひらは血だらけだ。どう考えても嫉妬しすぎである。


 これは『ガラスの仮面』ファンに強い印象を残した。真澄のマヤへの思いが表れた場面ともとれるし、胸熱シーンのように読んで楽しむ人もいると聞く。


■若手俳優の桜小路優がマヤにやさしくすると……(39巻)


 マヤにずっと恋をしているのは真澄だけではない。マヤと年齢の近い若手俳優・桜小路優(さくらこうじ・ゆう)も『ガラスの仮面』序盤からマヤに惹かれている。


 真澄の最大の恋のライバルは、初恋で終わった里見茂ではなく、桜小路優だ。


 一時は身をひいた優だが、どうしてもマヤのことを忘れられなかった。マヤにとって紅天女候補に戻れるかどうかの運命がかかった舞台『忘れられた荒野』で、二人は再会する。マヤは狼に育てられた少女ジェーン、優はジェーンと出会う若き人類学者スチュワートを演じ、この舞台をきっかけにマヤは紅天女候補に返り咲いた。そして優は紅天女の運命の相手・一真役候補になった。


 『紅天女』の稽古中、マヤに「寒くない?」と上着を着せる優。それを見ただけで真澄は、1ページのほぼ半分にあたる縦1コマすべてを使って「ズキーン」とショックを受ける。追い打ちをかけるようにマヤの友人たちはマヤと優をヒューヒューとはやしたてる。


 『ガラスの仮面』では、衝撃を受けたとき、登場人物の瞳から黒目がなくなる描写がある。それは俗に「白目」と呼ばれているが、マヤと優が親しくしているのを見るたびに、真澄は白目になる。


 『紅天女』の試演でマヤと優は愛し合う役なので、真澄が嫉妬心をたぎらせる場面も従来より増える。次に挙げるエピソードも『紅天女』試演に向けて稽古中のときのものだ。


■マヤと桜小路優のツーショット写真を見て激しく動揺(42巻)


 マヤは、自分が立つ舞台が上演されるたびに紫のバラを贈ってくれる「紫のバラの人」が真澄だと気づき、恋心を抱き始める。しかし真澄は仕事柄断れない縁談が進み、鷹宮紫織(たかみや・しおり)との婚約パーティーが開かれた。


 失恋したと思い込んだマヤは元気をなくす。そんなマヤを連れ出したのが優だった。いとこの家へ連れて行き、相思相愛のカップルのように二人ははしゃぐ。


 その後も優がバイクでマヤを送ったり、一緒に食事をしたりして、優の気持ちは高まっていく。稽古の合間に携帯電話で撮影されたマヤと自分の写真を見つめ、優は頬を染めながら携帯に映った写真にキスをする。


 ちなみにガラケーが『ガラスの仮面』に登場したのは42巻(2004年)が初めてである。「序盤は黒電話だったのに」と多くの読者が驚愕した。なお、47巻(2011年)ではスマートフォンも出てくる。


 ここまでで、もうツッコミどころ満載なのだが、優の携帯の写真をひそかに真澄に送る男がいた。彼は聖唐人(ひじり・からと)、真澄の影武者のように裏の仕事をしている青年だ。


 42巻は、コーヒーカップを落とし、たくさんのマヤと優のツーショット写真を社長室の床にばらまいて、窓の外を見ながら煙草を吸う真澄の姿で終わる。青ざめていて、明らかに動揺している。


■他にもたくさんある速水真澄の嫉妬シーン


 今や速水真澄の嫉妬する姿は、『ガラスの仮面』の見どころのひとつである。マヤへの愛情の深さを示すシーンでもあり、読みながら心をときめかせる読者もいれば、ギャグとしてとらえる読者もいる。いろいろな角度から楽しむことができる真澄の嫉妬シーンは、1巻から追っていくとまだまだある。『ガラスの仮面』を読んだことがある人も、もう一度振り返ると新しい読み方ができることに気づくだろう。