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ウエット経験が少なく苦戦した角田。ガスリーは速さを発揮も「予選はもう少し上に行けた」/ホンダ本橋CEインタビュー

2021年09月02日 22:21  AUTOSPORT web

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2021年F1第12戦ベルギーGP ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)
悪天候で1周もレースのできなかった今年のF1第12戦ベルギーGPだが、予選6番手と今回も安定した速さを見せたアルファタウリ・ホンダのピエール・ガスリーはそのまま6位入賞を射止めた。その結果についてホンダの本橋正充チーフエンジニアは、「初日から狙ったセットアップが決まり、(路面コンディション変化にも)いい感じで最適化できた」と分析する。

 また予選16番手にとどまり、イギリス、ハンガリーGPに続く3戦連続ポイント獲得はならなかった角田裕毅については、「雨のスパに手こずった。(F1でのレインという)絶対的な経験が足りなかった」としながらも、「そこはしっかり学んだので、今後に向けて意味のある1戦だった」と、次戦以降への期待を語った。

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──大変なレースでした。

本橋正充チーフエンジニア(以下、本橋CE):レースと言っていいんですかね(苦笑)。

──初日からどんどんコンディションが悪化していきましたが、そんななかピエール・ガスリーは週末を通してドライでもダンプでもフルウエットでも、安定して速かった印象です。

本橋CE:そうですね。狙ったセットアップが最初から決まっていました。あとはどこでタイムを伸ばすか、その作業に早い段階から集中できた。そういう感じです。

──2日目から完全ウエットになりましたが、初日のセッティングから大きな変更は施さなかったのですか?

本橋CE:はい。ウエット路面とレインタイヤに合わせたアジャストはしましたが、基本的なセットアップの方向性は変わらず、それほどバタバタすることなく進められました。

──予選の最高速を見ると、ダウンフォースを削り気味のセッティングだったのでしょうか?

本橋CE:そうですね。

──ローダウンフォースでも、ウエット路面で安定して速さを発揮できましたか?

本橋CE:はい。ダウンフォースの付け方に関してはチーム側も悩んでいたようですが、(ある程度削っても)メカニカルグリップの方で対応できると判断しました。いい感じで最適化できたと思います。

──パワーユニットのセッティングも、路面コンディションが目まぐるしく変わる状況では、対応に苦労したのでは?

本橋CE:エネルギーマネージメントに関しては、通常以上にウエット路面に合わせたセッティングにしないといけなかったです。ウエット路面ではドライバビリティも重要な要素になりますが、そこもしっかりチューニングできていましたね。現場で大きくセッティングを振ることもなく、微調整で対応できました。

──今週末の天候悪化を事前に予想して、準備してきたのですか?

本橋CE:いや、雨を前提にしたセッティングというより、あくまでドライバーの要求に忠実に応えることを前提にしています。そのなかでウエットになると当然、スロットルの踏み方も変わってくる。でもドライでもウエットでも、やることは基本的に同じです。

──Q3での赤旗中断後のアタックで、ガスリーのペースが遅かった1周は、チャージラップではなかった?

本橋CE:チャージの意味もある程度はありましたが、主な目的はタイヤでしたね。

──2分程度のラップタイムだと、連続アタックでもデプロイ的には大丈夫ですか?

本橋CE:いや、連続はちょっと厳しかったかもしれないです。残っているエネルギーは積極的に使っていくというやり方でしたから、1周休ませるのが正解だったと思います。そこはタイヤのクールラップを必要としていたチーム側と、うまく連携ができました。

──6番グリッドは、順当な結果でしたか。

本橋CE:う~ん、もうちょっといけた感じはします。ここはまだ足りないかなという部分が、車体側、パワーユニット側、双方ありましたし、前とのタイム差もそんなに大きく離れていなかった。もう少し上にいけたという希望も含めてですが、そこはありました。

──その意味でフロントローを獲得したウイリアムズのパフォーマンスは、驚きですか。

本橋CE:ええ。最近のジョージ(・ラッセル)は、ドライでも速いですからね。気になる存在ではありました。とはいえ2番手ですからね。ウエットのなか、本当にうまく走った。ドライバー、チーム両方に、おめでとうと言いたいです。

──Q1からウイリアムズだけは最初からインターミディエイトタイヤで出て行ったりと、独自のやり方を貫いていました。

本橋CE:ええ。ライバルと同じやり方でやっていてもダメだというのは、我々もいつも思っていることではあります。それにしても今回は、チームも手応えを感じて狙いにいっていたんでしょうね。

──とはいえウイリアムズでフロントロウというのは、本来ならありえない。ウエット路面の温度でマシンの性能差が縮まったのでしょうか?

本橋CE:どうでしょう? ドライバーの腕もあるし、ウエット状況に合ったセッティングもはまったのでしょうね。一方でマシン戦闘力が上がっていることも確かだと思います。そこが全部うまく噛み合ったのでしょう。

──たらればで恐縮ですが、もしコンディションが改善されてウエットレースが行われていたら、どのあたりの位置を狙えていたと思いますか。

本橋CE:難しいですね。でもガスリーはひとつ、ふたつは(ポジションを)上げていた手応えはあります。角田(裕毅)もドライなら、あの位置からでも3つ、4つは全然いけたと思います。ポイント圏内までいけたかと。ただウエットのままでは、ちょっと厳しかったかもしれません。

──角田選手は下位カテゴリーではここで好成績を上げていますが、今回はウエットのスパにちょっと手こずっていたのですか?

本橋CE:ウエットでのF1経験自体が、まず少ない。さらにそれがスパということで、だいぶ手こずっていた印象です。ただQ1もそうでしたが、走りながら向上させていく感じで、タイムも伸ばしていた。いい調子だったのですが、わずかにタイムが足りなかったですね。レインタイヤをどう使っていくか、どうすれば温度を下げないかとか、絶対的な経験が足りなかったですね。ただその辺りは今回しっかり学んだので、今後に向けては意味のある週末だったと思います。