2021年08月31日 17:11 弁護士ドットコム
「緊急事態宣言発令中」。大きな文字で描かれた看板のアドトラックがいま、都内を走行している。トラックには「東京都」のシンボルマークが描かれ、公式的な宣伝であることがわかる。
【関連記事:カーテンない家を「全裸」でうろつく女性、外から見えてしまっても「のぞき」になる?】
しかし、そのナンバーはいずれも都外。なぜ、東京都の走らせているアドトラックは都外ナンバーなのか。
アドトラックは、アーティストの新譜発売や映画の広報などさまざまに利用され、都内の繁華街でもよく見かける。
一方で、大音量の音楽を鳴らしたり、派手なデジタルサイネージや電飾を用いるなど、公共空間にそぐわない内容の広告をおこなうアドトラックもあり、近年では都民から多くの苦情が寄せられ、社会問題になっている。
東京都は、「東京都屋外広告物条例施行規則」などで街中の広告の規制をおこなっているが、アドトラック(広告宣伝車)については、「消防自動車または救急自動車と紛らわしい色を使用しないこと 」とあるだけで、内容についての規制はない。
しかし、都民からの苦情を受け、東京都では2011年、屋外広告物条例施行規則を改正して、広告宣伝車のデザインの自主審査制度をスタートさせた。審査は、業界団体などで構成する「公益社団法人東京屋外広告協会」(東京都千代田区)が実施。この自主審査を通らなければ、アドトラックは東京では走れないことになる。
ところが、都外で車庫証明書を受けたアドトラックはこの厳しい自主審査の対象とはならないため、近隣県のアドトラックが都内を走行するという、いわば「抜け道」を走る事態となっている。
今回の東京都のアドトラックも都外のナンバーばかりが目撃されているが、いったいなぜなのか。
東京都・総務局総合防災部防災管理課によると、新型コロナ感染拡大を防止するための啓発活動として、入札によって決まった民間企業に、4月からアドトラック5台を走行させているという。
担当者は、「アドトラックが都外ナンバーなのは、委託先の民間企業が都外にアドトラックを持っているため」と説明する。
さらに、「委託先には、公益社団法人東京屋外広告協会の自主審査を通すように条件が出ていますので、都外ナンバーですが、東京都の基準にそったものになっている」という。
なお、東京都としては、もっと目立って、都民の目に止まるよう、赤くするなどを検討したが、警視庁から信号機と混同するなどの指摘を受け、実現しなかったという。
いつまでアドトラックが走行するかは未定だ。