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戦略を分けて“野尻包囲網”に挑むも届かず。攻めたチームインパル、関口&平川に聞く【第5戦もてぎ決勝】

2021年08月29日 20:11  AUTOSPORT web

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果敢にトップの野尻を追い、アンダーカットを狙って早めのピットインをした関口だったが、叶わなかった
野尻智紀(TEAM MUGEN)のポール・トゥ・ウィンで終わった2021年のスーパーフォーミュラ第5戦。昨日の予選同様に速さと強さが際立ったレースだったが、そんな彼に最後まで果敢に挑んでいったのがcarenex TEAM IMPULの関口雄飛と平川亮だった。

 まずは野尻に仕掛けていったのは2番手スタートの関口。「スタートと1周目が勝負だと思っていた」と記者会見でも語った通り、オープニングラップからオーバーテイクシステムを積極的に使って勝負を試みたが、野尻に並びかけることはできなかった。

 その後、関口はピットストップのウインドウが開いた10周目にピットイン。アンダーカットを狙った。

「僕は10周目に入りたかったので入りました。オーバーカットという選択肢はなかったですね。あのタイヤで仮に前が開けたとしてもペースを上げられる自信がないと無線で言っていました。なのでタイヤを換えることで、次のスティントでうまくいければなと思っていました」

 タイヤ交換のタイミングなどで突破口を見出そうとした関口だが、翌周には野尻もピットストップを行うなど迅速な対応をみせ、逆転を果たすことはできなかった。

 その後は野尻についていく展開となったが、最終ラップでは残っているオーバーテイクシステムを全て使い切り、コース後半ではテールスライドしながらも、トップに食らいつく走りをみせた関口。やれることはすべてやったという。

「最終ラップに入った時点で、あの距離だと抜けないということは分かっていました。でも、最後まで何が起こるか分からないので、全力を出し切るというつもりで、OTSを最後まで使いました」

「打てる手は全部打ちましたけど、届かず……という感じでした。でも、ミスもなかったですし、とにかくやり切ったので、後悔はないです」

 一方、5番グリッドからスタートした平川も、序盤から“打倒野尻”をテーマにレースを進めていた。抜群のスタートダッシュを決めてポジションをひとつ上げると、3番手を走る松下信治(B-MAX RACING TEAM)に迫る勢いをみせた。

 ただ、関口とは対称的にレース後半にタイヤ交換をする作戦を選んだ。

「ここまま勝たせるわけにはいかないと思っていたので、とにかくトップに行けるチャレンジをしたかった。そこで10周目に入るよりも、後半まで引っ張って自分のペースが良ければオーバーカットできるなと思ったので、そのチャレンジをしました」

 そう語った平川。実際に前のマシンが次々とピットに入り、15周目にトップに立つと、1分34秒前半のペースで周回し、途中からは先にピットインした野尻に対して序々に差を広げていった。そして約25秒差をつけて26周目にピットインをするが、タイヤ交換でわずかにタイムロスしてしまい、野尻を逆転することはできなかった。

「計算上では2番手で復帰できる予定でした。僕の方がタイヤが新しい状態になるので、そこで野尻選手にアタックできればなと思っていました。ただ、ピット作業で失敗してしまって……そこはレースなので仕方ないですし、うまくいかないこともありますけど悔しいです」

 それでも平川は最後まで諦めずにポジションアップを狙い、松下と激しいバトルを繰り広げた。90度コーナーで仕掛け、その後、残り2周のS字ではひとつめのコーナーでギリギリまでブレーキを我慢してインに飛び込むも、逆転することはできず。最終的に4位でレースを終えた。

「(S字での攻防戦は)正直、コーナーを見ていなかったです。抜くことしか考えていませんでした。一瞬、抜けたかなと思ったんですけど……イン側からだとラインがタイトなので、追い抜くのは無理でした。(仕掛けるのを)もう少し後にすれば良かったかなという反省点はありますが、もてぎは抜きづらいというのを痛感しました。あとは、予選の順位が大事なんだなと思いました」

 昨年のもてぎ大会では予選・決勝ともライバルを圧倒する速さをみせた平川。ただ、今回はそのフィーリングを得られず、予選日も悩んでいる様子だった。決勝日になって、改善はできていたようだが、まだまだ分析をしなければいけない点は多いという。

「だいぶ良くなったのかなと思いますけど、それでも昨年のクルマとは違う雰囲気はあります。そこはなぜなのか分からないですが、そこは次のレースもここなので、しっかりと分析して準備したいなと思います」

 今週末は群を抜くような速さをみせた野尻に対し、打てる手をすべて打って立ち向かっていった関口と平川。結果的に優勝は飾れなかったが、次戦に向けて前を向こうとしている様子が印象的だった。

「今日の決勝がそうなんですけど、気温が下がってくると僕のクルマは調子がいいです。次のもてぎは今回よりは暑くないと思うので、その辺はすごく期待しています」(関口)

「残り2戦ともでポール・トゥ・ウィンをすれば46ポイント稼げるので……まだ諦めずに頑張ります。次ももてぎですが、感触が昨年と違ったりしているので、そこはしっかりと準備していきたいと思います」(平川)

 チームインパルが全力で野尻の攻略にかかり、2台がそれぞれ見せ場を作って存在感を見せた。今回は好調なライバルを止めることはできず、レース後のピットもどこか悔しい雰囲気が流れていたが、間違いなく同じツインリンクもてぎが舞台となる第6戦でも、このふたりがポイントリーダーに立ちはだかる走りを見せてくれそうだ。