2021年08月27日 18:01 弁護士ドットコム
茨城県で1967年に男性が殺害された「布川事件」で、冤罪により29年間自由を奪われた桜井昌司さん(74)が、捜査が違法だったなどとして国と茨城県に対して起こしていた国賠訴訟の控訴審判決が8月27日、東京高裁であった。村上正敏裁判長は、国と県に対して連帯して約7500万円の支払いを命じた。
【関連記事:お通し代「キャベツ1皿」3000円に驚き・・・お店に「説明義務」はないの?】
判決では、警察だけでなく、検察も自白を強要する違法な取り調べをおこなったと認定した。
法廷で判決の読み上げを聞いた桜井さんは、「今までは裁判で勝っても、部分的に否定されてきた。54年前にされたことを初めて素直に認めてもらい、涙が出そうになった」とコメントした。
認容額は、仮釈放後の逸失利益の算定が変わり、一審の約7600万円からわずかに減ったが、弁護団からも「我々が書いた書面が読み上げられているのかと思った」など、「血の通った判決」「全面勝訴」だと高く評価する声が上がった。
なお、桜井さんは無実の罪で自由を奪われた刑事補償はすでに受け取っている。
布川事件では事実上、自白のみを証拠として桜井さんと杉山卓男さん(2015年に死去)に無期懲役の判決が下された。
一審でも警察の取り調べが違法だったことは認められていたが、今回は担当の検察官についても違法だと認定。警察の調書のままでは、客観的事実と整合しない部分について供述を変えさせるなどして、矛盾が生じないようにしたと判断した。
その理由の一つとして、布川事件の一審の被告人質問で、この検察官が杉山さんに対し、犯行をおこなっていない理由を説明してもらいたいなど、立証責任が検察官にあることを無視するかのような高圧的な態度を示していることをあげ、取り調べでも相当に高圧的であったことが推認できるなどとした。
これらの認定から、警察・検察の自白強要がなければ、桜井さんらが逮捕・勾留・起訴をされることもなく、有罪になることもなかったとした。
支援者らに勝訴を報告した桜井さんは、「勝ったのは嬉しいが、これで検察や警察が痛い思いをするのか」ともコメント。
昨年2月に、がんで余命1年の宣告を受けたが、「だんだん元気になってきた」と言い、「誰もが冤罪を受けないようなシステムを作るために頑張りたい。道理が通る国にしたい」と語った。
報告会には、いずれも再審無罪となり、国賠訴訟を起こしてる東住吉事件の青木惠子さん、湖東記念病院事件の西山美香さんも駆けつけた。