ポルシェとフェラーリは、FIAとACOフランス西部自動車クラブが将来のル・マン24時間を含むWEC世界耐久選手権で、GT3ベースのカスタマーレースに焦点を当てるプランへの支持を表明した。
WEC組織委員会は先週、現行のGTE規定を2023年シーズン後に終了し、2024年からは世界的に成功を収めているGT3プラットフォームに基づく車両に置き換えることを発表した。
また、コスト削減の一環として現在LMGTEプロクラスで認められているオールプロドライバーのラインアップと、メーカーワークス体制での参戦は禁止されることになる。
ポルシェのモータースポーツ部門責任者であるパスカル・ズーリンデンと、フェラーリのアッティビタ・スポルティーブ・ディレクターのアントネッロ・コレッタはこれらの考え、とくにGTカテゴリーへのメーカーの関与を制限することに賛同している。
GTEプロクラスに参戦している2社は、ワークス・スポーツカーレースの焦点を2023年からプロトタイプカテゴリーに移行する計画を進めており、ポルシェはマルチマチックと共同でLMDhカーを、フェラーリは4輪駆動のハイブリッド・ル・マン・ハイパーカー(LMH)を開発中だ。
「私たちの見解では、LMHとLMDhがプロトタイプのグローバル・プラットフォームになるため、(WECが)GTのグローバルプラットフォームを採用することは、メーカーとカスタマーの両方にとってコストと戦略を追求する面で正しい方法であると考えている」とズーリンデンはSportscar365に語った。
「したがって、すでにグローバル・プラットフォームとして成功を収めているGT3をベースにすることは、私たちの側から見て正しいことだ」
「我々はGT3はカスタマーレーシングであり、顧客志向であると考えている」
「このフィールド(ル・マン)にジェントルマンドライバーが乗るクルマが何台いるか見てみると23台にも上る。ブロンズとシルバーランクのドライバーに家に居るように言うことはできない」
「彼らは過去数年間で、ル・マンとWECを現在の形にしてきたのだから自分たちの居場所を確立する必要がある」
「GT3でもGT3アマでも、どんな呼び方であっても、これらの人々の居場所を確保するためには本当に重要なステップであると考えている」
■ワークスが直接関われば「“別のGTE”が生まれる」
コレッタによれば、ファクトリーGTレーシングプログラムの関与を制限することで、“別のGTE”の出現を防ぐために支出を抑えることができるという。
ポルシェと同様に、フェラーリはすでにGT3カスタマーレーシング・ネットワークが充実しており、LMHプログラムが稼働すればWECでファクトリーGTチームと一緒にレースをする必要はないと考えている。
「正直なところ、将来のGTクラスはカスタマーだけのものになることを願っている」と語ったコレッタ。
「メーカーの協力を得て新しいカテゴリーを始めれば、コストはどんどん増えていく。2、3年後には“別のGTE”が誕生するだろう」
「おそらく、プラチナドライバーやゴールドドライバーを派遣するなどドライバーに関する支援はできると思う。しかし私の意見では、そのパートナーはシルバーやブロンズドライバーであるのが最善の方法だと思う」
■GT3車両を持たないGMは懸念を表明
WECと北米のウェザーテック・スポーツカー選手権を運営するIMSAは、将来のトップレベルのGTクラスに同じGT3プラットフォームを導入するが、メーカーが直接関与するエントリーを認めるかどうかで見解が分かれている。
FIAとACOが新しいGTクラスでカスタマーレーシングを重視している一方、IMSAはプロ/アマカテゴリーであるGTDに加え、オールプロのGTDプロクラスを2022年に創設する。これは今シーズン限りで廃止されるGTLMクラスに代わるものだ。
ズーリンデンによれば、ポルシェにとってこの決定は問題にならないという。
「IMSAでの活動はカスタマー・レーシングだ。来年も再来年も、そこにワークスチームは存在しない」と同氏。
「もし、顧客がGTDプロへの参戦を決めた場合、ル・マンでGTEプロへの参戦を決めた人がいたように、私たちは彼らをサポートするとともに最高のマテリアルを提供し、レースで勝てるようにする。それが我々の哲学だ」
WECの将来のGTカテゴリーがカスタマーレーシング志向になることについて、ゼネラルモーターズ(GM)のコルベット・レーシング陣営は懸念を表明している。
GMのスポーツカーレース・プログラム・マネージャーを務めるローラ・ウォントロップ・クラウザーは最近、コルベットがル・マンでファクトリープログラムを実行できないとしたら「がっかりする」と語っている。