2020年のル・マン24時間レースでLMGTEアマクラスを制し、2021年の第89回大会ではクラス2連覇を目指していたアストンマーティン陣営のTFスポーツ。33号車アストンマーティン・バンテージをドライブしたフェリペ・フラガによれば、デブリによってタイヤバーストに見舞われた直後には、リタイアを強いられると信じていたという。
最終的にはクラス優勝したAFコルセの83号車フェラーリ488 GTE Evo(フランソワ・ペロード/クラス・ニールセン/アレッシオ・ロベラ)に続く2位表彰台に立ったフラガとディラン・ペレイラ、ベン・キーティングだが、フラガによれば最初の6時間で「かなりの数のトラブル」から回復する必要があったとという。一方でAFコルセ83号車は、大きな問題を回避することができ、優勝を飾っている。
連覇を目指したTFスポーツを襲った主な事件は、フラガが実質的なクラストップを走っていた6時間30分経過時点で起きた。タイヤのバーストによって、ユノディエールの第1シケインを直進し、タイヤバリアにノーズをぶつけて停止したのだ。
フラガの事故の直前、チーム・プロジェクト1の56号車ポルシェ911 RSR-19を駆るエギディオ・ペルフェッティが同じ場所でタイヤバリアへ激しくクラッシュしており、この一連のアクシデントによりセーフティカーが導入された。
「コース上には、エギディオをクラッシュさせたデブリがあったのだと思う」とフラガは語っている。
「僕は彼のすぐ後ろにいて、彼のクルマの至るところから火花が出るのを目にした。まるで、警察が(犯人を止めるための)バリアを作るビデオゲームのようだった」
「彼のタイヤは破裂した。そして、何が起こったかって? その5秒後、僕の両方のリヤタイヤもまた、バーストしたんだ」
「確かに、何かがコース上にあったんだ。それが僕の左右のリヤタイヤをヒットした。ひとつは、実際にはブローアップするまでには至らず単なるパンクと言えるほどのものだったが、もう一輪はひどいものだったね」
「(後続より)1分くらい前、つまりセーフティカー1台分前を走っていたのに、これでセーフティカー2台分のおくれとなった」(※ル・マンでは3台のセーフティカーが同時に介入する)
フラガはリヤエンドの損傷が致命的であることを恐れつつも、なんとかアストンマーティンをピットに戻すことができた。
しかしながら、通常のルーティンピットの倍ほどの時間を要しただけで、33号車はレースへと復帰することができた。
「ピットインしたときは、レースをリタイアすることになるものと信じていた」とフラガ。
「タイヤだけではないと思っていたんだ。だが、僕らはコースに戻ることができた。セーフティカー中だったので、タイヤとともにリヤのディフューザーも交換した」
「あんなにハードにバリアに当たったのに、その後は最後までクルマの調子は良かった。僕らはただ、マシンを走らせ続けた」
83号車フェラーリが総合的に速かった一方で、フラガのTFスポーツもレース後半は83号車と同様のペースで走れていた、とフラガは認識している。
フラガは、最終的にはレースが「些細なこと」に集約され、AFコルセのトリオに優位性を与えたと感じたという。
「僕らは1分30秒をリードしていたが、アクシデントのあと、5番手に落ちた。83号車からは2分50秒おくれだった」と、レース序盤に他のフェラーリとの接触したことにより、中団グループから上位に進出する必要のあったフラガは語っている。
「ある時点では、彼らと同じセーフティカーの隊列の後ろまで戻ることができた」
「レース中、彼らはスローゾーン導入中に3~4回のピットストップをすることができたが、僕らはできなかった。これらの些細なことが、彼らに勝利をもたらしたんだ」
「トラックポジション、ピットストップ、スローゾーンがすべてだ。うまくやれば、最速でなくとも勝つことはできる。彼らはとてもうまくやったし、おそらく彼らは最も速いクルマでもあった」
「彼らは良い戦略を立てたし、問題があるようには見えなかった。一方で僕らには、レースの最初の6時間でかなりの数の問題が発生していた」
「2位で終えるのはとても痛いけど、ここにいられるのはとても特別だし、2位を得るのも簡単なことではない。多くのクルマがレースを終えることができないなか、僕らは懸命に戦った。だから、僕らは幸せだよ」