2021年WEC世界耐久選手権第4戦ル・マン24時間レースでは、24時間を戦い終えようする最終ラップで、クラストップ車両がストップするという悲劇が起きた。
この悲劇の主人公となってしまったのは、チーム内での激しいトップ争いに決着をつけようとしていた、LMP2クラスのチームWRT41号車オレカ07・ギブソン(ロバート・クビサ/ルイ・デレトラズ/イーフェイ・イェ)だ。
最終スティントのステアリングを握ったイェは、ベルギー籍のチームWRTにとって初出場のル・マンでのワン・ツー・フィニッシュという偉業に向け、ひた走っていた。
しかし、フィニッシュまであと3分、目を疑うような映像がモニターに映し出された。イェがダンロップ・ブリッジ先のコース上にマシンを止めている。これで、クラス首位は31号車へと移った。
3分後、JOTAの28号車オレカから0.7秒差で逃げ切った姉妹車の31号車オレカ(ロビン・フラインス/フェルディナンド・ハプスブルク/シャルル・ミレッシ)が劇的な勝利を手にしピットは湧いていたが、同じピットガレージ内の反対側は声を失っていた。
41号車の最終ラップのストップは、のちにスロットルセンサーのトラブルであったことが判明した。
「波乱に富んだレースだった」とイェは説明している。
「僕はそれが崩壊するまで、夢にまで見たリードを保っていた。ルイ、ロバートとともに、そこまで長いレースを戦ってきた。慎重にクルマを運び、僕がドライブした最後の数時間で首位に立った」
「なるべくクルマに優しい走りをした。縁石を避け、ただクルマをゴールへと運ぶことに集中していた。しかし、それは意味をなさなくなってしまった」
「何が起こったのか分からない。すべてが止まったんだ。チームのみんなを気の毒に思う。チーム全員は素晴らしい仕事をしてくれた。チームメイトの31号車を祝福したい」
「前を向こう。まだELMS(ヨーロピアン・ル・マン・シリーズ)の戦いは続く」
デレトラズは、この結果には「打ちのめされた」と語ったが、チームメイトがクラス優勝を獲得するのを見て喜んだ。
「僕らの側では、すべてを問題なく行ない、タイムを切り詰めることができ、大きなギャップでリードしていた」とデレトラズ。
「だが、最後に起こってしまったことは、みんなが見たとおりだ」
「後悔はない。このことは、誰も忘れないだろう」
アウディのファクトリードライバーでもあるハプスブルク、ミレッシとともにクラストップの表彰台に立ったチーム代表のヴァンサン・ボッセは、最終ラップに発生した41号車のスロットルセンサーの故障は、極めて「残酷だった」と語った。
「もちろん、喜びと悲しみの両方の感情がある。勝利を収めかけていた41号車がラスト1周で止まるのを見るのは大きな失望だった」とボッセ。
「それは極めて残酷だった。ラッキーなことに2番手にも我々のクルマがいたわけだが、こういう状況では勝利を存分に楽しむということは困難だ」
「それでも、このレースに備え、1週間を通して途方もない仕事をしてくれたチームとっては、素晴らしい日だ」
「我々に寄せられたメッセージの数から判断するのならば、我々が重要な何かを手にしたことは間違いない」