参戦台数は8台ながら、激しい戦いが予想される第89回ル・マン24時間レースのLMGTEプロクラス。決勝日を前に、クラッシュの影響でシャシーを交換するマシンが出たり、レースウイーク2度目のBoP(性能調整)が実施されるなど、慌ただしい動きが続いている。
ポルシェGTチームは、木曜夜の“ハイパーポール”セッション序盤で92号車ポルシェ911 RSR-19のケビン・エストーレがクラッシュしたことを受け、92号車のシャシーを交換することになった。
エストーレはインディアナポリスでコントロールを失い、リヤエンドからバリアへと接触した。ポルシェのWECオペレーション責任者であるアレクサンダー・ステューリッヒによると、シャシーは「大きな」ダメージを受けたという。
「昨日、事故が発生した。実際には、とてもとても小さなミスだった」と金曜日にステューリッヒはSportscar365に語っている。
「ケビンはただプッシュしていただけなので、ミスとは言いたくない」
「彼はコントロールを失い、アンラッキーなことにバリアにヒットした」
「マシンには大きなダメージがあり、シャシーを交換する必要が発生した。それはレギュレーションで許されている」
「シャシー交換は理想的な作業ではない。しかし一方で、我々はこういった事態にも備えている。我々が実行するひとつのプランにすぎない」
ステューリッヒによれば、作業はマシンをガレージに戻した時点で始まり、損傷したシャシーをストリップ・ダウンしてから、以前に走行していたスペアのシャシーへの組み付けに入った。
ACOの規則により、完全な車両の入れ替えは許されていない。既存のコンポーネントについては、損傷したシャシーから引き継がれる必要がある。
「スタッフは予定よりも夜遅くまで働いたが、睡眠を取るため宿舎に戻った。彼らは(金曜日の朝は)少し遅れてサーキットに到着しており、我々は個々の負荷を抑えるため、少しシフト制を敷いて働いている」
「夜通し作業をしたわけではない。そんなことはまったくない。まだやるべき仕事は少し残っていたが、それでも彼らは睡眠を取ることができた」
「彼らはリラックスしてサーキットに現れた。(金曜の)午後遅くには、彼らが計画した作業が終わるだろう」
「最悪のことは、ケビンがハイパーポールでドライブできず、(ハイパーポール後の)FP4の走行機会も逃したことだ。それを除けば、実際のところ問題はない」
クラッシュを喫したWEC世界耐久選手権GTEポイントリーダーのエストーレは「非常に残念」と語っている。
「アタックラップの始まりは、いいものではなかった。どういうわけかブレーキの感触がつかめず、思ったほど速さを発揮できなかった」
「必要な自信がない状態だった。インディアナポリスに入るとき、あまりにも速すぎた。コントロールを失い、リヤからバリアにヒットした。大きな衝撃ではなかったが、リヤはひどく損傷した。チームにとっても残念なことになってしまった」
エストーレは、新しく組み上げられた92号車を、ミカエル・クリステンセン、およびWECレギュラードライバーであるニール・ジャニとともにドライブする。
■BoP変更でコルベットの最低重量が削減
また、金曜日にWECエンデュランス・コミッティが下した決定により、コルベット・レーシングが走らせる2台のシボレー・コルベットC8.Rは最低重量が7kg削減され、1269kgで決勝レースに挑むことが分かった。
このBoP変更は木曜日のFP3直前に発行されたブルテンに次ぐ、レースウイーク2回目のもの。
コルベットではさらに、燃料タンク容量が1リットル削減されるほか、木曜日にブースト圧削減の決定を受けたフェラーリ488 GTE Evoについても、木曜日のマイナス1リットルに加え、さらに3リットルの燃料タンク容量が削減されることになった。フェラーリ488については、LMGTEアマクラスの車両も同様に削減されている。
決勝スタート前わずか24時間という土壇場でBoPが変更された背景は、現在のところ明らかになっていない。