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結婚を約束した彼氏が浮気! 妊娠中の許せない裏切り、相手にどんな請求ができる?

2021年08月21日 09:51  弁護士ドットコム

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結婚を約束し、妊娠もしたーー。そんなタイミングで相手の浮気がわかったら、慰謝料を請求できるのでしょうか。このような相談が弁護士ドットコムに寄せられています。


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相談を寄せた女性は、約4年間同棲しているパートナーの子を妊娠しています。双方の親にも報告し結婚する予定でしたが、「あまりにもいい加減なため、頭を冷やす意味もこめ、変わる努力をするという約束」をした上で、彼は実家に戻り、週に数回会うという生活に変えたそうです。



それにも関わらず、相談者が妊娠中から彼が同じ会社の人と浮気していたことが発覚したそうです。彼は「離れていたんだし、事実婚ではない」と慰謝料請求を拒絶しています。



結婚も同居もしていませんが、相手とは結婚を約束して妊娠もしている状況です。相手や相手の女性に慰謝料請求することはできるのでしょうか。久保田仁弁護士に聞きました



●婚姻前でも「慰謝料請求」が可能な場合とは?



――相談者はまだ結婚も同居もしていない状況です。このような場合でも、慰謝料請求はできるのでしょうか



婚姻前でも、不貞行為などがあれば慰謝料請求ができる場合はあります。



具体的には、相手方と(1)婚約が成立している場合か、(2)内縁関係(事実婚)が成立している場合です。このような関係が成立している場合は、婚約は婚姻の前段階ですし、事実婚も婚姻に準じた関係ですので、一定の法的な保護に値するということになります。婚約や内縁を正当な理由なく破棄・解消する場合には、不法行為が成立する場合があります。



(1)の婚約の成立は、明確な婚姻の約束があればもちろん婚約が成立していたと言えますが、明確な約束がなくても様々な事情を総合考慮して婚約が成立していたと評価される場合があります。



具体的には、例えば、婚約指輪にふさわしい指輪を贈る、両家の親としかるべき形で会う、式場などの下見、婚姻後を見越した新居の下見、などの事情は婚約の成立について肯定方向の事情だと思います。



――(2)内縁関係(事実婚)の成立についてはどうでしょうか



内縁関係(事実婚)とは籍を入れていないだけで、婚姻とほぼ同視しうる生活を営んでいる状態を言います。



これも様々な事情を総合的に考慮して、婚姻とほぼ同視しうる生活を営んでいると評価される場合には成立していると判断されます。



具体的には、例えば、同居している、二人の間に子どもが居る(これから生まれる)、財布を一つにしている(互いの収支を一つにしている)、周囲にパートナーであると公言している、周囲からパートナーであるとみられている、などの事情は内縁関係の成立について肯定方向の事情だと思います。 なお余談ですが、最近、事実婚が同性間で成立するかどうかが争われた裁判がありましたが、最高裁判所は同性間の事実婚状態でも異性間の事実婚の場合と同様に法的保護に値する場合がある、との判断をしています。



いずれの場合も、様々な事情を総合的に考慮して判断されますので、この事実の存在が認められれば、婚約・内縁関係の成立それが必ず肯定されるというものではありません。



●慰謝料の金額はどう決まる?

―― (1)の婚約、もしくは(2)の内縁関係が成立していたとすれば、慰謝料が認められるとのことですが、金額はどのように決まるのでしょうか



婚約、もしくは内縁関係が成立していたのであれば、婚姻している場合と同様に当事者は貞操義務(浮気をしてはいけない義務)を負いますので、不貞による慰謝料は発生します。



慰謝料の金額については、不貞の慰謝料の金額は、様々な事情を総合的に考慮して決まりますので、一概に判断することはできません。



具体的には、不貞の期間、不貞の頻度、婚姻期間(内縁含)、幼い子どもの有無、などの事情が考慮されることになると思います。



ただ一般的には、婚姻が成立している場合の不貞の慰謝料と比べて、婚約・内縁の場合の不貞の慰謝料はやや低額になる傾向があります。



――相談者は相手男性だけでなく、浮気相手となった女性に対しても慰謝料請求をしたいと考えているそうです。



その場合は、相手女性に故意・過失があるかどうかで決まります。



簡単に言えば、相手女性が、彼に婚約相手がいる、もしくは内縁関係の相手がいるという事を知っていたような場合には、慰謝料を請求できると思います。



しかし、逆に、彼が相手女性に対して自分には交際相手はいないなどと言っており、相手女性もそれを信じていたような場合は、相手女性に故意はなく(おそらく知らないことに過失も無い)、相手女性に慰謝料を請求することはできないと思います。



この場合は、相手女性もある意味被害者という事になるのではないでしょうか。




【取材協力弁護士】
久保田 仁(くぼた・じん)弁護士
香川県弁護士会所属。平成20年弁護士登録。香川県出身。平成25年丸亀市において丸亀みらい法律事務所開設。香川県弁護士会副会長(平成29年度)、日弁連子どもの権利委員会委員(幹事)、日弁連家事法制委員会委員,香川県弁護士会刑事弁護センター運営委員会委員長(平成26年~平成28年)、高松家庭裁判所家事調停官(非常勤裁判官)など。
事務所名:丸亀みらい法律事務所
事務所URL:http://mirai-law-office.com/