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高島屋化粧品の2021年1~6月は地域密着の郊外店が好調 8月に初の化粧品専用ウェブサイト開設

2021年08月17日 15:32  Fashionsnap.com

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(左)8月下旬にオープンする化粧品専用ECのイメージ、(右)ベルナチュレール 玉川店 Image by: 高島屋
昨年から続く新型コロナウイルスの影響で、百貨店の化粧品売り場は接客の制限に苦しみながら各社の強みを活かした売り方で奮闘している。高島屋の強みは「地域に密着した店舗づくり」。顧客からの要望で取り扱いを開始したブランドもあるほど、売り場と顧客の距離が近い。化粧品売り場の2021年1~6月実績(全店舗合計)は前年同期比3%増と堅調だったが、地域密着を強める郊外店は2桁成長で着地する。今後は、引き続き顧客に寄り添いながら、時代に合わせたデジタル戦略も必須だという。

地域住民の声に柔軟に対応しリピーター獲得
 高島屋は新宿や日本橋、大阪などの都心型店舗(基幹店)のほか、二子玉川や高崎など郊外の店舗を持つ。東京や大阪は今年に入り、緊急事態宣言が再発令されるなど、化粧品売り場を開けていたとしても打撃は否めなかったが、一方で宣言が出ていなかった地域や郊外店は通常に近づけた営業で、玉川店が同10%増、高崎店が同12%増、基幹店の横浜も同25%増とマイナスをカバー。この背景には、地域住民との近しい関係性にあると言っても過言ではない。「郊外型の店舗は特に地域のインフラを果たしていると改めて実感した。都市型店舗でも見受けられたことだが、特に郊外店では昨年の宣言明けは美容部員と顧客が会えた喜びで涙を流していた。強みのお客様との繋がりは大事にしたい」と高島屋MD本部 化粧品・特選・宝飾品部の田中浩美マーチャンダイザー担当部長は語る。
 郊外店の中でも、地域の顧客との強い繋がりを築いているのが玉川店だ。2019年のリニューアル時に、地域住民からのメイクブランドのニーズを受け「アディクション(ADDICTION)」や「スリー(THREE)」などエリア初展開のブランドを導入。美容家・オーガニックスペシャリストの吉川千明氏をプロデューサーに迎えたナチュラルブランドを中心に揃えたセレクトショップ「ベルナチュレール(Belle Naturelle)」は、展開4店舗中、最も売上が高い。ポップアップを行ったフランスのスキンケアブランド「コンダンセ パリ(CONDENSE PARIS)」を、反響の大きさから常設で取り扱うことなどはもちろん、店内のインテリアとして設置していたテラリウムを、販売希望が寄せられたことから取り扱いを開始するなど、化粧品に捉われずリアルな意見に耳を傾け柔軟に対応することで、再来店に繋げている。

 ベルナチュレールでは、今トレンドになっているフェムテックアイテムの取り扱いでも、同店ならではの価値を置く。玉川店ベルナチュレールのセールスマネージャーの船橋麻美課長は「玉川店には高感度なお客様が多く、昨今盛り上がりを見せるフェムテックに興味を持つ方も増えている。地域住民のウェルネスに寄り添うという考えから、人生100年時代において健康で長く美しく生きるお手伝いとして、商品やハウツーを紹介していく」と語り、いわゆる“テック”ではない、心身の健康を意識したフェムテックを取り入れる。今後は感染拡大防止の観点から、イベントなどを別会場で行うことも視野に入れ、直接案内できる機会を創出する。
 また感染拡大により外出を控える顧客とは、電話注文やそれに伴うリモート接客が大きな役割を果たした。各店舗の公式サイトにブランド直通の電話番号を記載し、代表番号から売り場に繋ぐ手間を省いている。遠隔での購入という点はECと同様だが、会話があることで従来の売り場の強みを活かせているという。「電話注文だとお悩み相談もできるため、プラスワンの購入も生まれている印象だ。衣料品との違いとして、ただ買うだけではなく『美容部員と美容について語りたい』ニーズがあると再認識した」と船橋課長は語った。
好調ブランドも地域で違い
 同期間の好調ブランドについても都心・郊外の違いが出た。「ポーラ(POLA)」や「コスメデコルテ(DECORTÉ)」は玉川店では地域の富裕層に支えられ好調だったが、都心では元々インバウンドが大きかったため、全体の成長率はやや前年超えにとどまった。好調だったのは、おうち時間の充実に沿った「サボン(SABON)」や「ジョー マローン ロンドン(JO MALONE LONDON)」のような香り系で、両ブランドともに同50%以上の成長となった。
初の化粧品専用ウェブサイト開設、デジタル注力も軸は店頭
 下半期は顧客との繋がりを大切にしながらオンラインにも力を入れる。8月25日に同社初の化粧品専用のウェブサイト「TAKASHIMAYA BEAUTY」を開設。限定品や新作など混雑が予想される商品はオンラインで来店予約を受け付けることで、店頭での個別の接客時間を確保する。田中部長は「電話注文で美容部員と相談してから購入したいというニーズが分かり、一方で売り場からもお客様一人一人にきちんと接客したいという声が上がっていて課題だった。来店予約はこれらを解決できると思う」と期待を寄せた。

 同サイトでは、毎シーズン発行するコスメカタログ「美風」(今秋冬コレクションは女性誌「エル(ELLE)」(ハースト婦人画報)とコラボ)と連動し、新作情報やコラムを発信。田中部長は「カタログは目を引くヴィジュアルが好評で、複数購入にも貢献している。オンラインで展開することで、デジタル版ウィンドウショッピングのような役割を果たすのではないか」と語る。加えて、パーフェクト社のARメイクアプリ「YouCam メイク」の技術応用でタッチアップ機能を搭載し、ライブコマースの実施も予定している。
 なお、現状でインスタグラムも積極的に稼働している。バイヤー数人で管理しているアカウント「@takashimaya_beauty」は、新商品をいち早く投稿し、各店頭と連携して予約・販売開始情報も即座に流す。インスタグラムと連動した店頭キャンペーンの参加者も徐々に増え、アカウントから店頭への送客の流れも出来つつあるという。

 コロナ禍で電話注文やオンラインは以前より格段に成長したことは事実で、オンラインの売上は同25%増と拡大する。しかし、田中部長はこれについて「純粋な成長だとは考えていない」と話す。店頭とデジタルの本格的な両軸稼働を推進する2021年7~12月は「2桁増を目標とし、まずはTAKASHIMAYA BEAUTYの稼働など新しい取り組みを軌道に乗せたい」と見据える。下半期には年間の大型イベントであるコフレ商戦が控える。今年はデジタルを活用しながら接客の精度を高める考えだ。


■高島屋 化粧品専門サイト:TAKASHIMAYA BEAUTY