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8世代目に突入! フォルクスワーゲン「ゴルフ」の歴史を振り返る

2021年08月17日 11:31  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
フォルクスワーゲン(VW)の「ゴルフ」といえば、もうすぐ誕生から50年を迎える言わずと知れた名車だ。ようやく日本にもやってきた最新型(8世代目=ゴルフ8にも乗ってみたが、さすがはゴルフといった感じの出来栄えだった。クルマの電動化が世界的に加速する中、「ひょっとすると今回で最後?」と心配する声も聞かれるゴルフではあるが、新型が上陸したばかりの今、名車の歴史を振り返ってみるのも悪くないだろう。

ゴルフの生産台数は、初代からの累計で3,500万台に達している。その台数は今でも順調に増え続けているが、一方では「クルマの電動化」の急速な進展により、「ゴルフ」は役割を一旦終えて、フルEV(電気自動車)の「ID.3」にバトンを渡すのではと心配する声も聞かれる。

実際に「ゴルフ3」や「ゴルフ4」を所有したことがある筆者にとって、ゴルフという名のクルマが新車として売っていない世界が到来してしまうのは、ちょっと寂しすぎる。そこで今回は、ゴルフの存続を願いつつ、初代からの歴史を振り返ってみたい。

○「ビートル」の後継者として登場した初代「ゴルフ」

「大人2人と子供3人の家族が、アウトバーンを100km/hで安全、快適に走行できるクルマ」としてフェルディナンド・ポルシェ博士が設計し、長きにわたってVWの主役を務めたのが、「カブトムシ」の愛称で知られる「ビートル」(タイプ1)というクルマだった。ビートルの後継モデルとして1974年にデビューしたのが、初代「ゴルフ」だ。

“ゴルフ”という名称の由来はスポーツではなく、メキシコ湾流の「Golfstrom」(ゴルフシュトリーム)からというのは知る人ぞ知るお話だ。ビートルとは対照的な四角くてコンパクトなボディをデザインしたのは、かの有名なジョルジェット・ジウジアーロである。

ビートルが空冷OHVフラット4(水平対向4気筒)をリアに縦置きしたRR(後輪駆動)であったのに対し、初代ゴルフは水冷直列4気筒をフロントに横置きしたFFモデルとして登場した。レイアウトも駆動方式も、180度の方向転換だ。日本では、発売の翌年からヤナセが1.5リッターモデルの輸入販売を開始した。

110PSを発生する1.6リッターインジェクション付きエンジンを搭載した高性能バージョン「GTI」(Iはインジェクションの意)が発売となったのは1976年のこと。「ホットハッチ」と呼ばれた最初のモデルで、赤い縁取りのグリルやオーバーフェンダーが速さの証だった。残念ながら日本に正規輸入されることはなかったが、並行輸入で日本に入ってきた個体には当時、羨望のまなざしが注がれたものだ。

初代ゴルフにはカルマン社がコーチワークを行なった「カブリオ」や3ボックス版の「ジェッタ」といった派生モデルも登場した。
○今でも人気の「ゴルフ2」

丸目のヘッドライトや太いCピラーなどで初代ゴルフのイメージをキープしつつ、ボディ(3,985mm×1,665mm×1,415mm)とエンジン(1.8L)を拡大して1983年に発売となったのが「ゴルフ2」だ。翌1984年には、1.8Lガソリンと1.6Lディーゼルが日本に導入となった。グレードは「GLi」や「CLi」などであった。

ゴルフ2のシンプルなスタイルは今でも人気だ。「オートモビル カウンシル2021」に展示されていた走行距離の少ないピカピカの個体(1991年式GLi)は379.8万円のプライスタグをつけていて、ちょっと驚かされた。大きめのエンジン音やロードノイズを気にしない方であれば、今でもしっかりと楽しめるのがゴルフ2だ。

ノーマルの8バルブエンジン(90PS)の燃料噴射装置をボッシュKEジェトロニックとし、圧縮比を10.0まで高めて馬力を112PSへとパワーアップさせた「GTI」は1984年に登場。1986年には16バルブ化したDOHCヘッドによって139PSを獲得した「GTI 16V」がデビューしている。メルセデスやBMWなどの高性能モデルにも車線を譲ることなく、アウトバーンを200km/hで走る続けることができるGTI 16Vは、やはり憧れの的だった。

GTIは1985年から日本へも正規輸入されたが、排ガス対策のため、それぞれ105PS(8V)、125PS(16V)へとわずかにパワーダウン。日本の保安基準の関係で、4灯グリルの中央2つが点灯しないことなども話題になった。

1990年には4WDのシンクロをベースに車高を上げたクロスオーバーモデル「カントリー」がデビュー。アンダーガードやプロテクターを装着したワイルドなスタイルが今でも人気で、程度の良い個体は相当な価格で取引きされているようだ。
○ボディの種類が増えた「ゴルフ3」

1991年には、安全性と高級化を掲げてフルモデルチェンジした「ゴルフ3」が登場した。少し丸みを帯びたハッチバックボディは相変わらずゴルフらしさをキープしていたものの、全長は4m超えの4,020mmとなり、「D」を横に伸ばしたような異形ヘッドライトによる顔つきは、これまでとは違う印象を抱かせた。エンジンは1.8L(CLI)と2.0L(GLi)で、フロントに横置きするFFという形態に変わりはない。

1992年には日本への輸入が始まる。1993年に初の“外車”として筆者が新車購入したのが、このゴルフ3だった。低速域ではプルプルとした振動を伝えてくる4速ATモデル(ブラックのGLi)だったけれども、高速道路でのスピードの乗りと直進性の良さは、それまで乗っていた国産モデルとは全くの別物。家族と荷物を満載しての帰省やキャンプなどで活躍し、走行距離は一気に伸びた。

1996年には、VWが主催していた「ポカールレース」の前座である「タイムトライアル」に参加すべく、2.8Lの狭角V6エンジンを搭載した「VR6」に乗り換えを敢行。サーキット以外でも、コンパクトボディに170PSの大排気量エンジンを搭載した滑らかでパワフルな走りを堪能した。唯一の欠点は燃費。リッターあたり6km走ればいい方という感じで、満タンから200kmも走ると残りのガソリンが心配になる程だった。

ボディバリエーションが増えたのもゴルフ3の特徴で、新しくなったカブリオレ、セダンのヴェントのほか、ゴルフ初のワゴンであるバリアントが登場している。
○3.2Lモデルも登場した「ゴルフ4」

1997年には4世代目へと進化を遂げたゴルフ。1998年には日本への輸入も始まった。特徴は1.8Lのターボエンジンを搭載した点とレーザー溶接した高品質なボディで、全体の高級感がさらに増した。

筆者もここで、ゴルフ4に乗り換えた。購入したのは、VWのチューニングメーカーであるCOXが手がけたゴルフ4 GTIのコンプリートモデル「COX C18 TR」だ。これを手に入れて、タイムトライアルに参加し続けた。

ノーマルで150PSの1.8Lターボは、マフラーやコンピューターチューンにより180PSにパワーアップ。オーリンズの可変式ダンパーや専用ブレーキ、専用タイヤ(確かブリヂストンS-02)など足回りにもしっかりと手が入っていたほか、エクステリアも専用バンパーやサイドスカート、リアウイングなどで武装してあり、なかなかの存在感を発揮していた。

ゴルフ4のハイパワーモデルとしては、2002年に最強バージョンの「R32」が登場している。搭載するV6エンジンは車名の通り3.2Lの排気量を誇り、馬力は241PSまで上がっていた。ハイパワーに対応するため、駆動方式は4WDに。タイムトライアルでのトップタイムはR32の独壇場だった。

ボディバリエーションはゴルフ3 カブリオレのフェイスをゴルフ4にチェンジしたカブリオレ、ヴェントの後継となるセダンのボーラ(エンジンは直4、V5、V6があった)のほか、ワゴンも選べた。
○ダウンサイジングの嚆矢となった「ゴルフ5」

「ゴルフ5」へのフルモデルチェンジは2003年だった。4,205mmまで拡大した余裕のあるボディと丸目4灯のヘッドライト、直噴式のFSIエンジン、リアのマルチリンクサス、6段ATなどが特徴で、翌年には待望のGTIモデルも登場している。2.0リッター直4にインタークーラーとターボを装着したFSIエンジンは、最高出力200PSを発生。トランスミッションは6MTか機械式ツインクラッチの「DSG」が選べた。筆者がツインクラッチを初めて体験したのがゴルフ5で、出だしでクラッチがつながる際のガシャガシャした感じにちょっと驚いたのを覚えている。

R32は最高出力を250PSまでアップ。「4MOTION」と呼ばれる4WDシステムによる走りは強烈だった。ゴルフ5の後期型は1.4リッター直噴ターボ+スーパーチャージャーのツインチャージャーTSIエンジンを初搭載。ダウンサイジングの先駆けとなった。
○「R」が登場した「ゴルフ6」

2008年には「ゴルフ6」が登場。プラットフォームを変更しなかったため、ボディは5mm拡大にとどまった。顔つきは、つり目4灯のヘッドライトによりシャープな印象に。発売当初は1.4LのTSIエンジンを2種類用意していた。

GTIは2L直噴ターボのTSIで211PSを発生。高性能バージョンは3.2Lから2L直噴ターボへとパワートレインを変更し、名前も「R32」から「ゴルフR」に改めた。初代ゴルフRの馬力は256PS。ゴルフ6にはEV版の「ブルーeモーション」やディーゼルエンジン(TDI)搭載モデル(日本未導入)もあった。
○新プラットフォームで性能がアップした「ゴルフ7」

「ゴルフ7」は2012年に発売となった。新開発のモジュラープラットフォーム「MQB」を採用したボディにより、軽量化と高剛性化が一気に進み、走行性能は一段とアップ。標準モデルは1.2Lと1.4Lの2種類のTSIエンジンを搭載していた。

2LのTSIを積むGTIは220PSを発生。4WDの「R」は、同じく2LのTSIながら280PSの馬力を誇った。富士スピードウェイのショートコースでGTIに乗った際には、可変ダンパーのDCCとコーナーで内側のブレーキを軽くつまんでくれるXDS+が効果を発揮。アンダーが出そうなコーナーでしっかりと鼻先を旋回してくれるその走りっぷりに感動した覚えがある。

ディーゼルエンジン搭載モデルでの燃費不正(いわゆるディーゼルゲート)が発覚したのはこの時期で、VWへの信頼度は大きく低下した。その信頼を取り戻すべく、デジタル化や電動化に大きく舵を切り、2020年に登場したのが最新の「ゴルフ8」というわけだ。

原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)