8月15日(日)、フランス・ル・マンのサルト・サーキットで、WEC世界耐久選手権第4戦ル・マン24時間レースに向けた公式テストデーが実施され、4連覇を目指すTOYOTA GAZOO Racing(以下TGR)の新型ル・マン・ハイパーカー(LMH)、GR010ハイブリッドが、サルト・サーキットでの記念すべき第一歩を記した。
昨年開催されなかったテストデーは、レースウイークの前に公道区間を閉鎖して全長13.626kmのサルト・サーキットを実際に走行できる唯一の機会。この日は、2回・合計9時間にわたる練習走行セッションが設けられた。
今季のWECで、ここまで3戦全勝を飾っているTGRの2台のGR010ハイブリッドは、この日の走行を2番手、3番手タイムで終えた。
ディフェンディングシリーズチャンピオンのマイク・コンウェイ、小林可夢偉、ホセ・マリア・ロペスがドライブした7号車GR010ハイブリッドが708号車グリッケンハウス007 LMHとわずか0.225秒差の2番手、昨年のル・マン・ウイナーである中嶋一貴とブレンドン・ハートレーが駆る8号車はそこから0.282秒おくれの3番手となった。
8号車のドライバーであるセバスチャン・ブエミは、同日、ドイツのベルリンで行なわれたABB FIAフォーミュラE世界選手権のシーズン最終戦『ベルリンE-Prix』に出場していたため、このテストデーは欠席し、夕方、ベルリンからル・マンに到着した。
ブエミを除いた5名のドライバーにより、レースウイークへ向けた唯一のテストデーは、晴天の下、現地時間午前9時に開始された。GR010ハイブリッドは、これまでのLMP1車両とは根本的に異なる車両パフォーマンス特性を持つまったく新しい車両ということもあり、チームはいつも以上に準備のための幅広いテストプログラムに注力した。
午前9時から4時間にわたったセッション1は、2度の赤旗中断により若干走行時間が失われたが、TGRの5人のドライバーは着実に周回を重ね、空力及びメカニカルのセットアップ、エネルギー配分やタイヤに関するデータを収集。特にタイヤでは、3種類のドライ用コンパウンドをサルト・サーキットで初めて評価した。
サルト・サーキットは1周の大部分が公道セクションということもあり、予想どおりテスト開始当初は路面が非常に汚れていたが、62台のレース出場車両が周回を重ねるうちに路面がクリーンになっていき、ラバーが乗って徐々に状況は改善していった。
8号車を駆るハートレーが、開始から2時間半ほどを過ぎたところで、3分31秒263というこのセッション最速タイムをマーク。このセッションでは、アルピーヌが2番手、コンウェイがベストラップをマークした7号車が3番手につけた。
14時からの5時間のセッション2では、レースコントロールの確認のために、25分間にわたるセーフティカー導入のテストも実施された。加えてフルコースイエローのテストも行なわれたが、それ以外はトラブル無くセッションは進み、チームはスムーズにテストプログラムをこなした。7号車は再びコンウェイが最速タイム、8号車はハートレーのタイムが最速となった。
レースウイークの走行までの2日間のインターバルで、チームは収集したデータを解析し、セッティングの最適化を進めるとともに、車両のチェックと再整備を行ない、18日(水)午後から始まる公式練習第1回目のセッションに臨む。
TGRからテストデーに出場した5人のドライバーのコメントは、以下のとおり。
■「パフォーマンスについて語るには、まだ早い」と中嶋一貴
■7号車トヨタGR010ハイブリッド
●小林可夢偉
「今日のテストは順調に終わり、満足しています」
「ハイパーカーで初めてのル・マン走行で、いつものように午前中のコースコンディションはあまり良くなかったものの、その後徐々に改善されていきました」
「これまでのところ、GR010ハイブリッドはとても力強く感じます。バランスも悪くないですが、改良の余地はまだ沢山あるので、この後の数日でデータを分析していきます」
●マイク・コンウェイ
「ル・マンに戻ってきて、周回を重ねることができて良かった。GR010ハイブリッドは好感触で、良い兆候だ。
「我々はこの日、一歩一歩改良を進めた。今日はレースウイークに想定しているコンディションに近かったので、今日得られたデータは車両理解の参考になるはずだ」
「まだまだ学習中で、すべての面で最適化にトライしているところだ。最速タイムをマークすることはいつでも嬉しいが、重要なのは来週からであり、今日はとにかく目の前のことに集中した」
●ホセ・マリア・ロペス
「ル・マンでのハイパーカー初走行日は、良い一日となり、大きなトラブル無く走行を終えることができた」
「まだこれから長いレースウイークが待っているが、最初のテストは終え、この後はあっという間に時間が過ぎていく。これから水曜日までに、得られたデータを理解するという、最も重要な作業が待っているが、今のところとても満足している」
「GR010ハイブリッドは、まるでル・マンのために生まれた車両のように感じる。いつもそうだが、ここル・マンでは車両が生き生きとして、すべてのポテンシャルが見られるように感じる。そんなル・マンで走れるというのは本当に最高だ」
■8号車トヨタGR010ハイブリッド
●中嶋一貴
「ル・マンに戻り、新しいGR010ハイブリッドで走ることができて最高です。GR010ハイブリッドは1周目から好調で、ル・マンというコースでの感触を楽しむことができました」
「今日は長い一日でしたが、時間が経つにつれコース路面はどんどん良くなっていきました。決勝レースへ向けた異なるセットアップやタイヤのテストなど、予定していたプログラムを消化するために、多くの周回をこなすことができました」
「全体的に見れば今日の結果には満足していますが、パフォーマンスについて語るにはまだ早いです」
●ブレンドン・ハートレー
「ハイパーカーとともに、サルト・サーキットに戻ってこられて嬉しい。昨年までここでレースをしていたのとはまったく別物のクルマなので、多くのことを学んでいるところだ」
「やっとここル・マンで走ることができたGR010ハイブリッドは本当に水を得た魚のようで、特に高速セクションでは素晴らしく、楽しめた一日だった」
「今日一日で我々は多くを学んだし、良い方向へ向かっていると思う。レースウイークが楽しみだ」