2021年08月14日 09:11 弁護士ドットコム
コロナ下で提唱される「新しい生活様式」の実践例として、自転車通勤等に注目が集まっています。
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一方で、自転車が関連したトラブルや事故も増えており、警視庁の発表によれば、全交通事故にしめる自転車の関与率は年々上昇しており、2020年度は40.6%にものぼりました。
そこで、弁護士ドットコムでは、一般会員2241名を対象に、自転車の利用に関する意識調査を行いました。
その結果、道路交通法(以下、道交法)では原則として禁止されている「道をあけてもらうために歩道でベルを鳴らす」「傘さし運転」などの違法行為をしていると答えた人はいずれも2割を超え、ルールやマナーが守られていない実態がわかりました。
調査は、弁護士ドットコム一般会員を対象にウェブアンケートを実施し、2241名(男性1403名、女性805名、性別不明33名)から回答が得られました。その中から、週に1回以上自転車を利用する1173名(男性751名、女性407名、性別不明15名)を対象に調査しました。
自転車トラブルをめぐって、よくあげられるのが歩道上で自転車がベルを「チリンチリン」とならす行為です。今回の調査では、23.1%が歩道走行中に歩行者に対してベルを鳴らしていることがわかりました。
Q.自転車で歩道を走行中に歩行者がいた場合、「道をあけてほしい」という意思表示でベルを鳴らすことはありますか?
しかし道交法54条では、危険を避けるためやむを得ないなどの事情がない限り警音器(自転車のベル)を鳴らしてはいけないとされています。歩行者が自転車の進行方向をふさぐように歩いていても、道交法で定める「危険を防止するためやむを得ないとき」には該当しませんので、注意が必要です。
同様に歩道を走ることで、歩行者と接触するなどのトラブルも少なくありません。
「道交法を守って、車道を走行していますか?」と質問したところ、「車道を通りたくないので、歩道がすいていれば歩道を通る」と回答した人は43%にのぼりました。「できるだけ歩道を走るようにしている」(9.4%)とあわせて、半数超が車道を避けていることがわかりました。
Q.道交法を守って、車道を走行していますか?!画像タイトル 道交法を守って、車道を走行していますか?
歩道を走ってしまう人にも言い分はあるようです。「車道を走ると、車が近くて怖い思いを何度もしてしまい、歩道を走るケースが多くなってしまう」(35~44歳・男性)。
一方で、車のドライバーからは車道を走る自転車に不安を訴える声もありました。
「コロナ禍になってから着実に自転車が増え、毎日事故の危険を感じながら自動車を運転しています。車道を走るのであれば、ヘルメットの装着とバックミラー、ヘッドライト、反射鏡かテールランプの設置を義務化して、道路交通法を厳守させてほしい」(55~64歳・男性)
また、自転車の運転中にはいずれも禁止されている「雨天時に傘をさして片手で運転することはあるか」、「イヤホンで音楽を聞きながら運転することはあるか」、「スマホやタブレットを使用しながら運転することはあるか」の3点について質問しました。
結果としては、「スマホやタブレットを使用しながら乗る」が、すでにやめた人も含めて12.3%だったのに対して、「イヤホンで音楽を聞く」は14.8%で、以前していた人も加えると25.2%となりました。
さらに、「傘をさして片手で運転する」は20.9%、以前していた人を加えると45.2%にものぼりました。
Q.雨天時に走行する場合、傘をさしながら片手で運転することはありますか?
スマホを使用しながらの運転や傘さし運転、物を持つなどの片手運転は違反となり、5万円以下の罰金が科せられることがあります(道交法第70条・第71条1項6号)。また、交通事故に被害者を巻き込んでしまうと、数千万単位の賠償金や、刑事罰を受ける可能性も当然のことながらあります。
自由回答では、需要が高まるフードデリバリーサービスの配達員の危険運転の目撃情報や自身の被害経験が相次ぎました。
「夜にイヤホンとスマホを使いながら、無灯火でスピードを出して走ってきた学生の自転車に正面からぶつかられた。ぶつかってきた相手は泣いてばかりで、なぜかこちらが警察に連絡。(中略)帰ってから確認したところバッグは擦れており、中に入れていたデジカメは衝突時の衝撃で本体が壊れて使い物にならず」(25~34歳・女性)
「傘を差して歩道を走行し、道路標識も無視して走行する自転車をよく見かける。傘を差しているので前方視界は2、3mくらいしかないと思われるが、万が一車と衝突事故が発生した場合に過失がどうこう言われるかと思うとぞっとする」(65歳以上・男性)
「フードデリバリーサービスの配達員による、車道の逆走や信号無視などの危険運転に頻繁に遭遇し、こちらが緊急回避しなければ衝突事故を負っていた場面が幾度もあり、またその際に、配達員から謝罪の言葉や反省の色が見られた事が一度もありません」(35-44歳・男性)
今回の調査を受け、交通事故問題を手がけている弁護士法人サリュの平岡将人弁護士は次のように注意を呼びかけます。
「自転車の危険な運転は、近年たびたび問題となっていますが、根本的には、 『歩行者』のつもりで自転車を運転する人が多いためではないかと考えています。自転車は『軽車両』とはいえ車両であり、歩行者ではなく、自動車やバイクと同一線上の責任があります。軽車両であっても、歩行者など公道利用者の安全を守る責任が軽くなるわけではないのです」