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「4人で1室」ステイホームや自宅療養も困難…シングルマザーの居住貧困明らかに

2021年08月13日 16:11  弁護士ドットコム

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新型コロナウイルスの影響で「ステイホーム」が呼びかけられている中、シングルマザー世帯の住宅には部屋数が十分にないことから、家族が感染しても隔離するスペースがないなど厳しい居住環境に置かれていることが民間支援団体の調査で明らかになった。


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調査によれば、比較的家賃が安い公営住宅を利⽤できている世帯は約2割で、限られた収入の中、約5割の世帯が公的補助のない⺠間の賃貸住宅を選択。その負担が部屋数の減少につながり、⼦どもの学習スペースや家族が感染した際の隔離スペースの確保が困難となっているという。



8月13日にオンラインで開かれた会見で、追⼿⾨学院⼤の葛⻄リサ准教授は、「様々な研究で、狭⼩で劣悪な居住環境が居住者の⼼⾝に深刻な影響を与えることがわかっています。シングルマザーの住宅の質向上を支援するような政策を早急に打ってほしい」と話した。



●3~4⼈が1室で住んでいるという子育て世帯も

調査は、シングルマザー支援に取り組む認定NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」とジェンダー政策の専門家・研究者らによる「シングルマザー調査プロジェクトチーム」がおこなった。



公的年⾦・⽣活保護を受けていない⺟⼦のみで暮らしているシングルマザー(東京252⼈、東京以外287⼈)を対象に、2020年8⽉~2021年7⽉に毎月おこなったパネル調査の一つとしてWEBフォームで実施された。



⾃宅の部屋数が1室という割合は、東京以外では5.2%、東京では10.7%で、中学⽣以上の⼦がいるにもかかわらず1室という世帯も東京で5件、東京以外で4件あった。部屋数は世帯⼈員の増加にあわせて増える傾向にあるものの、3~4⼈が1室で住んでいるという世帯もあった。



シングルマザー世帯の住む⺠間の賃貸住宅は公営住宅よりも部屋数が少ない傾向にあり、特に、東京の⺠間賃貸の81.3%が1~2室という実態が確認された。一方、公営住宅で1室という世帯はゼロだった。



コロナ禍で退職を余儀なくされたシングルマザーも複数おり、経済的に困窮している世帯も少なくない。家賃の安い公営住宅に対するニーズは⾼いが、数が限られているため、抽選に当たらなければ、民間の賃貸住宅を選択せざるをえない。



コロナ対策として「住居確保給付⾦」制度もあるが、約5割の世帯が制度を知らないと回答。 また、離職・廃業後2年以内ではないなどの理由で、相談や申請をしたのに給付⾦を受けられなかった世帯もあったという。



葛⻄准教授は、「住まいを喪失することは、単なる物理的な屋根を失うだけではなく、⺟親の仕事や⼦どもの成育環境を剥奪することと同義だという認識すべき」だという。



即時的な対応として、住居確保給付⾦や⽣活保護をより柔軟に利用できるようにするとともに、恒常的な対応として、公営住宅の質の改善、⺠間賃貸住宅への家賃補助の充実などを挙げた。



「『住宅か、子の教育か』ということを選ばせるような社会ではなく、やはり住宅を失わせないようにして、(子の教育も含め)きちんと保障していくということが重要だと思います」(葛⻄准教授)



●「家賃高い」「小さい部屋しか借りられない」世帯に踏み込んだ支援を

自由回答では、シングルマザーから次のような声があげられていた。



「⼦どもが多い(5⼈)が、⾦額的に⼩さい部屋しか借りられない。市営住宅は4年連続当たっていない。少しでも広い部屋に住みたい」



「⼤学⽣の⼦どもがリモート授業で在宅の為、家族3⼈でワンルームでの⽣活が苦しい。上の⼦の勉強部屋の確保の為に引っ越しを検討し、物件探しをしているが、現在の物件のレベルを下げても部屋数が増えると家賃が⾼額になるので、動くことが難しい」



「家賃が⾼くて毎⽉家計を圧迫しています」



「払える⾦額が都営しかなく、もう3年都営に申込んでいるがポイント⽅式でも最下位だし抽選も2家族しか応募していないのに外れてしまいました」



しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長の⾚⽯千⾐⼦さんは、自治体に対して、「ひとり親の低所得世帯に踏み込んだ政策を作ってほしい」と注文をつける。



「低所得の子育て世帯全体は、非常に厳しい住居環境にいます。広く『ひとり親世帯』を支援することも大事ですが、低所得世帯の住居を確保するための支援にも踏み込んだ方がよいのではないかと思います」