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意外と知らない「クルマ」の豆知識 第6回 「ファストバック」ってどんなクルマ?

2021年08月06日 11:41  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
クルマのボディタイプにはセダン、ワゴン、シューティングブレークなどさまざまな名称がありますが、今回は「ファストバック」を取り上げます。この言葉、気になり始めたのはマツダが「MAZDA3」を発表してからで、「ハッチバックじゃないの?」と思った覚えがあります。ファストバックとは何なのか、モータージャーナリストの内田俊一さんに聞きました。

正直にいって、「こうだからファストバック」という明確な定義はない。例えばMAZDA3のファストバックも、「これとハッチバックは何が違うの?」と問われると、たぶん誰も答えられないだろう。そこで、ある程度の例外はあるということを大前提としつつ、概念としてお話をしよう。

まず、大きな特徴はクーペスタイルであるということ。つまり、ルーフラインがなだらかにリアに向けて傾斜していくスタイルである。ただし、トランク部分がきちんと分かるようにデザインされているのではなく、あくまでもリア後端まで一筆書きのように流れているものを指す。テールゲートの有無は問わない。

具体的に、クルマを例に説明しよう。アウディ「A5/S5」だ。

S5はきちんとトランクスペースが確保されていることが外観からも明確にわかるので、こちらはクーペ。一方で、A5 スポーツバックはどこからトランクが始まるか外観からあまり想像できないので、ファストバックといっていいだろう。

ただし、あくまでもこれは概念的な説明であり、見る人それぞれに解釈できるのが厄介なところではある。

さて、以前、「リフトバック」という名称があったのをご存じだろうか。1970~80年代にトヨタ自動車「セリカ」や「カローラ」などにあったボディタイプだ。2ドアのファストバックスタイルで、テールゲートを備えたクルマをそう呼んでいた。

特にセリカリフトバックの場合、なだらかなファストバックスタイルの典型といえよう。一方のカローラはルーフ後端に明確な角があるため、どちらかというとハッチバックの派生というニュアンスが見て取れる。ほぼ同時代のクルマである6代目「スカイライン」には、テールゲートが備わった5ドアハッチバックがあった。日産のディーラーが、「我々は、リフトバックではなくハッチバックと呼びます」と名称を強調していた記憶がある。

あくまでもファストバックはノッチがない、つまり、折れ、切欠き、段差がないボディタイプの総称と捉えてもらえればいいと思う。

内田俊一 うちだしゅんいち 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験をいかしてデザイン、マーケティングなどの視点を含めた新車記事を執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員。 この著者の記事一覧はこちら(内田俊一)