2021年08月03日 10:01 弁護士ドットコム
ホストクラブの「担当」(指名したホスト)が勝手につけた「未収金」をあとから請求してきた——。ホストクラブでの金銭トラブルに関する相談が、弁護士ドットコムに寄せられました。
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女性は通っていたホストクラブで、担当ホストに言われるがまま、ツケにあたる「未収金」を作らされていました。担当は「払わなくていいから」と女性に許可なく100万円の会計を出していたこともあり、その総額は400万円にもなっています。
「未収金」は毎月男性が自分の給料から立て替えており、もはや「自腹営業」のような状態でした。ただ、女性が男性との同棲費用を出していたので、男性は「生活を助けて貰ってるからそこは気にしなくていいよ」と言っていたそうです。
しかし、女性が別れを告げると態度が一変。まだ払い終えてない未収金に加え、今までの立替金すべてを請求してきました。
一般的にこうした未収金の支払い義務は誰にあるのでしょうか。若林翔弁護士に聞きました。
確かに、ホストクラブでの売掛の未収についてのトラブルは多いです。ホストクラブにおいては、客が飲食代金等を後払いする売掛、カケ、ツケなどと呼ばれる料金の支払方法があります。
この売掛金について、客が支払いを怠った場合(未収)には、客から永久指名を受けた「担当ホスト」と呼ばれるホストが、この売掛金の未収額を店に対して立替払いをし、売掛金・未収金の回収は担当ホストの責任でおこなわれることが多いです。
実際に、担当ホストが店内での順位を上げるためなどの目的から、自腹で客の料金を払う約束をして客に来てもらうというケースもあります。
このような場合には、客である女性が、担当ホストから「払わなくていいから」と言われることがあるでしょう。
また、客の許可なく「担当が勝手に」注文したといって売掛金についてトラブルになるケースもあります。
客が注文をしていない飲食代金や担当ホストが「自腹で支払う」と言って注文をした飲食代金については、客に売掛の支払義務は生じないことが多いです。
ただ、その旨を立証することはなかなか難しいです。
なぜなら、ホストクラブでは、売掛の場合には、後々売掛金についてトラブルが生じないように、飲食終了後に、伝票や簡単な契約書などにサインをしてもらうことが多く、そのようなサインをした場合には、客は売掛金の内容・金額について了承した上でサインをしたと評価される可能性が高いからです。
今回のケースでは女性がサインをしていたかどうかは分かりませんが、担当ホストが自腹で払うと言っていた場合や、注文をしていない飲み物を注文された場合には、伝票などの書面にサインをしないことが重要です。
仮に、書面にサインをしてしまった場合には、その後に担当ホストとの間で、担当ホストが自腹で払う約束であったことを確認する書面を交わす、LINEなど文字に残るものでその内容を確認しておくのがよいでしょう。
【取材協力弁護士】
若林 翔(わかばやし・しょう)弁護士
顧問弁護士として、風俗、キャバクラ、ホストクラブ等、ナイトビジネス経営者の健全化に助力している。また、店鋪のM&A、刑事事件対応、本番強要や盗撮などの客とのトラブル対応、労働問題等の女性キャストや男性従業員とのトラブル対応等、ナイトビジネスに関わる法務に精通している。
Youtube:『弁護士ばやし』チャンネル
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事務所名:弁護士法人グラディアトル法律事務所
事務所URL:https://fuzoku-komon-law.jp/