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別のクルマ? 人気SUV「ディフェンダー」の1,000万超えグレードに試乗

2021年07月30日 11:02  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
ランドローバーの人気SUV「ディフェンダー」は、価格の幅が大きいクルマだ。最も安いグレードが551万円であるのに対し、最上級グレードは1,171万円ともはや別のクルマの観がある。価格差は走りの差として感じられるのか。新登場の最上級モデルを箱根ターンパイクで走らせてみた。

○待望のディーゼルエンジン車が日本上陸!

ランドローバーの本格SUVモデル「ディフェンダー」は日本での発売当初、ロングホイールベースの「110」に2リッター直列4気筒ガソリンターボエンジンを搭載した「P300」モデルのみのラインアップだったが、少し遅れてショートホイールベース「90」の「P300」が追加となり、さらに「110」には、6気筒ディーゼルエンジン+48Vマイルドハイブリッドシステム(MHEV)の「D300」が登場した。待望のディーゼルエンジン搭載モデルに先日、ようやく試乗することができた。

試乗したのは、2021年モデルでは最上位グレードとなる「ディフェンダー110 X D300」だ。7人乗りの3列シート仕様(5人乗り仕様もある)で、車両本体は1,171万円というなかなかのプライスタグをつけている。

用意された個体は、ボディを傷から守るラッピングのサテンプロテクティブフィルム(53.8万円)、3列シート選択時に同時装着できる装備を満載したファミリーパックプラス(47.3万円)、コールドクライメートパック(10.9万円)、コンフォートコンビニエンスパック(8.1万円)などのパック類、リアリカバリーフック(6.1万円)、データプラン付きWi-Fi接続(3.6万円)など、計146.7万円相当のオプションを装備していて、総額は1,317.7万円となっていた。

○英国テイストあふれる車内

全長4,945mm、全幅1,995mm、全高1,970mm、ホイールベース3,020mmの大柄な4ドアボディを持つ「110 X D300」の試乗車は、ゴンドワナストーンという名前のサテンカラーにボンネットやルーフをブラックに塗ったシックな2トーンカラーを採用。フロンドア下部に最上位モデルである「DEFENDER X」のグレード名が小さく書かれているのが、控えめでおしゃれだ。

インテリアはビンテージタン/エボニーのウィンザーレザーとプレミアムテキスタイルを表皮とするシートに、同色のダッシュボード、アームコンソールなどを組み合わせる。英国車好きにはたまらない出来栄えだ。センターコンソールのウッド部分やドアパネルは、取り付けた鋲の頭の部分がむき出しになっていて、アウトドアモデルであることを主張している。

ラゲッジルームに格納する3列目シートはブラックの表皮で、引き出してみるとエマージェンシーとまではいえないけれど、さすがに小ぶりなサイズだ。それを格納して2列目シートを前いっぱいまでスライドさせると(7人乗り仕様は完全なフルフラットにはならない)、ギザギザの床面の視覚効果もあって、まるで軍用車の内部を思わせるハードで広大な荷室が出現する。こちらのルックスも、好きな人には“刺さる”はずだ。

肝心のパワートレーンは、最高出力221kW(300PS)/4,000rpm、最大トルク650Nm/1,500~2,500rpmを発生する排気量2,993ccの直列6気筒ターボディーゼルエンジンに、最高出力18kW(25PS)/10,000rpm、最大トルク55Nm/1,500rpmの電気モーターという組み合わせだ。ベルト駆動のオルタネーター/ジェネレーターモーターが減速エネルギーを回収するとともに、エンジン始動時やスタート時にパワーを補助する48VのMHEVシステムである。

通常であれば場所を取るはずの縦置き6気筒ディーゼルエンジンやMHEVシステムが、ボンネット内のスペースに余裕があるおかげで、意外とコンパクトに収まっているように見えるのが面白い。この6気筒ディーゼルは「レンジローバースポーツ」やマイチェン後の「ディスカバリー」も採用していて、いずれも高評価を受けているという。同社の新規開発の内燃機関としては、これが最新で最後のものになるかもしれない(ジャガー・ランドローバー・ジャパン広報による)とのことだが、どんな走りを見せてくれるのだろうか。待ちきれないので、さっそく動かしてみよう。

○静かで滑らか! 回せば直6の高音質が響くエンジン

まず、エンジンをスタートしても、「あれっ」と拍子抜けするほど静かだ。さすがにボンネットを開けるとディーゼルらしい音が聞こえてくるけれども、たっぷりと使用した防音材と構造により、外部への遮音性はとても高い。室内も同様で、アイドリングの透過音量は低い。ディーゼルエンジン搭載モデルであることは、タコメーターのレッドゾーンがガソリンモデルよりも低い4,500rpm~であることによってのみ確かめることができる、といっていいほどだ。

走り出すと、ディーゼルエンジンが低回転域から発生する大トルクにモーターパワーの補助が相まって、2.5トン近い巨体が軽々と、しかも静かでスムーズに加速していく感覚にちょっと感動してしまう。軽くアクセルを踏んでクルマに任せたまま走り続けると、8速ATはほとんどシフトショックを伝えることなく(ここでも48Vシステムが効いているのかもしれない)ポンポンとシフトアップしていき、2,000rpm以下の領域だけで結構なスピードまで持っていってくれる。

タイヤは255/60R20サイズのグッドイヤー製「WRANGLER」(ラングラー)というオールテレイン(全地形タイヤ)タイプだけれども、乗り心地が良くてロードノイズが抑えられているので、まるで高級セダンに乗っているような感覚まで味わえる。

せっかく箱根ターンパイクに乗り入れたので、登りでシフトレバーを左に倒し、スポーツモードを試してみた。するとこのディーゼルエンジン、レッドゾーンまで淀みなく回って、しかも直6エンジン特有の「クォォーンッ」という快音まで聞かせてくれるではないか。これは気持ちいい!

直進性は良好だし、コーナリングではストロークが大きいはずのサスペンションなのに姿勢が崩れることなく、中速コーナーを綺麗に曲がっていく。5スプリットスポークからのぞくレッドキャリパーのブレーキはペダルコントロールがしやすく、今度はまるで背の高いスポーツカーの気分だ。当然、オフロードでの性能はいわずもがな。「110」のディーゼルは、どんな使い方にも対応できる、本当にマルチな才能を持っているクルマだと確信できた。

○手に入るのは来年?

ジャガー・ランドローバー・ジャパンの藤井崇史マーケティング・広報部プロダクトマネージャーに聞くと、ディフェンダーの販売状況は今、ガソリンとディーゼルが半々だという。ということは、「110」のディーゼルが売れ行きの半分を占めているということで、その人気ぶりがわかる。

ただし現在は、コロナ禍と半導体不足のWパンチにより、日本への割り当て台数が少ない状況が続いているとのことで、今すぐ注文しても納車は年明けになるそう。どのグレードを選んでも、状況はほとんど変わらないようだ。

ディフェンダーが欲しいと思っても、今はカタログをじっくり眺め、膨大なオプションから最適なものを選び、決まったらオーダーを入れてじっくりと待つほかない。ただ、納車を待つ時間がこんなに楽しいクルマは、そうあるものではないと思う。

原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)