2021年07月25日 10:01 弁護士ドットコム
新型コロナウイルスのワクチンの有効性は、さまざまな研究結果から明らかになってきたが、ワクチンの供給不足から、接種できないもどかしさを抱えてる人が多い一方で、「絶対に打たない」と固い決意をしている人もいる。
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日本全国で交わされているであろう「ワクチンどうする?」「実は…」という会話。どんな人が、どんなふうに「打たない」理由を伝えているのか。記者が気になって街中を歩いてみると、さまざまな人が「ワクチンを打たない」理由やその戸惑いを語ってくれた。
テレワークできず、客と近くで接触せざるを得ない接客業の人はどうだろうか。
東京・渋谷のネイルサロンに勤める女性(40代)は「私は接種しますが、若いスタッフたちがワクチンを打たないのが心配」と話す。
「昨年4月の緊急事態宣言では、多くのネイルサロンがお店を閉めましたが、それ以降は感染対策を徹底したうえで、お店を開けています。お客様との間にアクリル板を置くなど、できることはしていますが、不安を抱えながら働いています」
若い世代の接種の見通しがたったころ、女性は「やっとこの緊張感から解放されるんだと心の底からホッとしました」と話す。ところが職場でワクチンの話をすると思いがけない反応が飛び出し、驚愕することになる。
「30代以上のスタッフは皆、大喜びでワクチンを楽しみにしているんですが、20代スタッフはほぼ全員が打たないと言うんです。しかもその理由が『不妊症になるから』だって言うので、耳を疑いました」
女性は厚労省のコロナワクチン特設サイト(https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/)を読むなどして、不妊になることはデマだと知っていた。
しかし、今年6月に入って、会社の人事担当者から「ワクチンの接種を強要することはパワハラに該当する」と通達があったため、パワハラと受け止められることを恐れ、「接種したほうがいい」とは言えずにいる。
「不妊症のことは根拠がないみたいよ、とは言いました。でも、若いスタッフたちは、『インスタやツイッターで危ないと言っているお医者さんたちもいます』と反論してくるので、もう彼女たちに言うのはあきらめました」
「接種はしないつもり」という美容師の女性(40代)もいる。ほぼすべての客から「ワクチンはどうする?」と聞かれる。
「相手の反応を見ながらですけど、私は体力があるほうだし、打ちませんよ、と正直に伝えますね。そうすると、けっこうな割合で『実は私も打ちません』と言われます」
ワクチンの供給不足が問題となる中、幸いにも女性の居住区では、7月から接種が始まっている。また客から「職域接種で余りがあるから、打ちたければ来て」と誘われることも何度かあり、決して打てないわけではないのだ。
女性が接種しないのは、「自分は大丈夫だろうという思いとワクチンの安全性への不安」の2つだ。
「学生時代はバレーをやって体力には自信もありますし、むしろワクチンの副反応のほうが仕事に影響がありそうです。これまでもインフルエンザの時期など感染対策を徹底することで、ワクチンを打たなくても体調を崩したことはありません。コロナになってかはら、マスクをしながらヘアカットやカラーもしますし、こまめな消毒を心がけています」
接客する中で、女性のもとには「私の知り合いのお医者様が言うには」「ネットでみたお医者さんが言っていたのだけど」といった、ありとあらゆる「ワクチンが危なさそう」と感じる情報が寄せられる。
体力があるからコロナに感染しない、という根拠はなく、ワクチンの安全性への不安が女性を頑なにしているようにも感じられた。
なお、厚生労働省ではサイトで次のような注意を掲載している。
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_hukuhannou-utagai-houkoku.html)
・国内外で、注意深く調査が行われていますが、 ワクチン接種が原因で、何らかの病気による死亡者が増えるという知見は得られていません。
・海外の調査によれば、接種を受けた方に、流産は増えていません。
・接種後の死亡と、接種を原因とする死亡は全く意味が異なります。接種後の死亡にはワクチンとは無関係に発生するものを含むにもかかわらず、誤って、接種を原因とする死亡として、SNSやビラなどに記載されている例があります。