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35年以上紡がれた「オリンピックとゲームの歴史」 4つのタイトルからその軌跡を振り返る

2021年07月23日 12:11  リアルサウンド

リアルサウンド

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 来たる7月23日に開催されるスポーツの祭典「東京オリンピック・パラリンピック」。2013年の招致決定から実に8年、新型コロナウイルス(COVID-19 )の影響を受けて1年の延期と開催方式の変更が余儀なくされたものの、16日間にわたって計33競技(※オリンピック)が実施となる。


 コロナ禍もあって無観客での開催が大半になってしまったが、そんな今だからこそ、筆者は自宅で安全に楽しめる「オリンピックゲーム」に焦点を当てたいと考えている。オリンピックゲームとは文字通り、”オリンピックを題材に取り扱ったゲームタイトル”だ。今回は具体例として新旧4タイトルをピックアップし、ゲームシステムの傾向やオリンピックの描かれ方にフォーカスする。


【画像】数あるオリンピックゲームの代表格、懐かしの『ハイパーオリンピック』


・『ハイパーオリンピック』シリーズ(1983年/コナミ)


 オリンピックゲームの元祖を挙げるなら、1983年10月に稼働を開始したアーケード筐体向け作品『ハイパーオリンピック』(海外版タイトル名:Track & Field)が妥当だろう。1984年7月のロサンゼルスオリンピックをテーマとしており、「100m競争」・「110mハードル」・「走幅跳」・「やり投げ」・「走高跳」・「ハンマー投げ」の合計6種目を収録。後にLSIゲームやMSXといった他機種へ移植が進み、1985年6月にはファミリーコンピュータ(以下、ファミコン)版も発売。以降、2010年ごろまでシリーズ作品が展開されてきた。中でも『ハイパーオリンピック』は、数あるオリンピックゲームの中でも知名度が高め。40代以上のユーザーなら「オリンピックゲームと言えばコレ!」と本作を挙げる人が少なくないはずだ。


・アーケードアーカイブス TRACK & FIELD


 気になるゲームシステムは”ボタン連打”の一言に尽きる。コントロールパネルは、キャラクターを走らせるためのRUNボタン、助走をつけたキャラクターを跳躍させるためのJUMPボタンに分かれており、プレイヤーは2種類のボタンを駆使してベストスコア更新を目指していく。


 一部の競技はボタンを押すタイミング等が異なるものの、基本スタンスは6競技で共通。ゆえに、プレイヤーはとにかくボタンを押して押して押しまくる必要性があった。ゲームシステム的にはシンプル極まりない作りであったからこそ、プレイヤー自身の反射神経と連打力(いわゆるフィジカル)がふんだんに試された。定規派や硬貨派など、連打に用いる道具で派閥が分かれた経験者も多いのではないだろうか。


・『ニューマンアスレチックス』(1993年/ナムコ)


 『ハイパーオリンピック』のリリースからおよそ10年、1993年にアーケード筐体タイトルとしてスタートしたのが『ニューマンアスレチックス』である。ただし、こちらは携帯アプリ版やバーチャルコンソール版(Wii)をのぞき、家庭用ゲーム機へは一切移植されていない。現在プレイ手段を整えるには基盤が必要となるため、そういった点ではオリンピックゲームの中でもレア度が高いと言えるだろう。続編の『マッハブレイカーズ』も1995年にリリースされているが、同様にアーケード筐体版のみとなっている。


 プレイヤーは最初に「ハリー」(アメリカ)・「シャロン」(フランス)・「マサエモン」(日本)・「ボンゴ」(ケニア)の中から1名を選択。こちらもやはり、3つのボタンを全力で押す”連打重視”のゲームシステムを採用している。


 とは言え、収録されている競技は全て架空のもの。”各国の選手は人間離れした超人”という設定を生かし、身の丈以上のミサイルをぶん投げる「ミサイルトス」(ケニア)、テリーマンさながらに新幹線を全身で受け止める「バーサスエクスプレス」(日本)、凶暴なモンスターに光弾をぶちかます「ニューマンスナイパー」(北極)……などなど、地域ごとに独特なシチュエーションを用意。オリンピックの再現と言うより、”オリンピックの構造を使ったバラエティ色の強いスポーツゲーム”といった印象が目立つ作品だ。


・『マリオ&ソニック』シリーズ(2007年/任天堂・セガ)


 時が進んだ2007年、任天堂とセガはタッグを組んで「マリオ&ソニック」シリーズを発表。第一作目を飾ったのは『マリオ&ソニック AT 北京オリンピック』で、『スーパーマリオ』シリーズと『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』シリーズのキャラが一堂に会する、豪華なゲーム内容で話題となった。


 シリーズ作品は計6タイトルにわたり、そのうち5作品が家庭用ゲーム気と携帯ゲーム機の両方で展開。シリーズ累計1000万本を売り上げている(2バージョン合計)。2021年7月時点では、最新作『マリオ&ソニック AT 東京2020オリンピック』がNintendo Switch向けに発売中だ。


 本シリーズの特徴は、何と言っても”人気IPの共演によるお祭り感”。メーカーの垣根を越え、さらに味方・悪役を問わずオリンピックの競技で正々堂々、スポーツマンシップにのっとって実力を競い合う。


 そして本作はボタン連打に終始せず、Wiiリモコンやタッチペンを用いた直感的な操作方法も魅力の一つ。Wiiリモコンとヌンチャクを交互に振って走る(トラック競技)。タイミングに合わせてヌンチャクを振り上げる(トランポリン)。Wiiリモコンとヌンチャクを弓に見立てて矢を放つ(アーチェリー)。いずれもWii版の操作方法だが、こうした基本アクションはシリーズを通して丁寧に受け継がれている。


 そのほか、「ドリーム競技」なるゲームモードも実装されており、こちらは『マリオパーティー』シリーズのミニゲームを彷彿とさせる内容。こうしたゲーム全体の仕様は第一作目から変わっておらず、”各競技の再現とパーティーゲーム由来の遊びを提案したオリンピックゲーム”と言えるだろう。


・『東京2020オリンピック The Official Video Game』(2019年/セガ)


 任天堂と共同で開発した『マリオ&ソニック』シリーズとは別軸で、セガは公式ライセンスゲーム『東京2020オリンピック The Official Video Game』を手掛けている。


 こちらはトラック、水泳、ラグビー、柔道などを含めた合計18種目を収録、キャラクターIPの利点を生かした『マリオ&ソニック』シリーズと比べ、本作はクセのないオーソドックスかつシンプルなゲームデザインを採用。コントロールスティックとボタンを使った操作方法を取り入れ、実際の会場(新国立競技場・東京アクアティックスセンター等)をゲーム内で細かく造形し、”オリンピックのゲーム内再現”に力を入れている。


 特筆すべきは「アバター」作成モード。性別と体格に始まり、肌の色、身長、筋肉量、目の大きさ、顔の輪郭……等々、顔まわりに絞っても15項目をプレイヤーが自在にカスタマイズできる。さらに、作成したアバターは「パワー」・「スピード」・「テクニック」とステータスの異なる能力タイプを設定可能。手の混んだクリエイトができるだけでなく、”自慢のアバターを全世界のユーザーへ共有する”といった楽しみ方も用意されている。ゲームシステムはシンプルながらも、アバターを使ったお遊び要素があり、その使い方はプレイヤー自身の手に委ねられている……というわけだ。


 ビデオゲーム市場の勃興期に産声を上げ、35年以上にわたって歴史を紡いできたオリンピックゲーム。今年はご時勢の問題で現地観戦は難しいが、自宅のテレビで選手の活躍を応援しつつ、オリンピックゲームのプレイ経験に思いを馳せてみるのも良いのではないだろうか。(龍田 優貴)