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職場でクラスター発生、コロナ感染で休職したら減給査定された…そんなのアリ?

2021年07月23日 08:41  弁護士ドットコム

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コロナ感染による休職を理由とした減給は妥当なのか——。そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。


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相談者の職場でクラスターが発生し、相談者自身も感染者となったため、休職を余儀なくされました。感染経路などから「職場内での感染」と判断されたといい、労災申請もしています。



ところが、給与の査定で、感染による休職があったため「5%の減給」を伝えられました。相談者としては、職場内での感染だったことに加え、休職していない時期は会社の期待するパフォーマンスに応え、コロナ禍でも会社業績が黒字だったことから、減給に大きな不満があるようです。



コロナ感染で休職したことを理由に減給することは可能なのでしょうか。また、労災申請が認められた場合、減給の査定にはどう影響するのでしょうか。村松由紀子弁護士に聞きました。



●「コロナ感染休職で減給」が有効な場合も考えられる

——コロナに感染し休職した場合、それを理由に減給することはできるのでしょうか。



感染に至る経緯によって、減給可能な場合もあると考えます。



まず、事故等による休職を賃金査定の際の考慮要素とすることができるかどうかですが、就業規則等に、どのような査定条項を設け、人事評価を行い、賃金額を定めるかは、基本的には使用者の人事権の行使として、会社に大きな裁量があります。



したがって、事故等による休職を考慮要素に加えること自体は、直ちに不合理とはいえず、原則として有効です。



もっとも、使用者の賃金査定も無制限というわけではありません。人事権の濫用にあたる場合や、人事の評価が合理性を欠き、社会通念上著しく妥当性を欠くと認められる場合には、賃金減額の有効性が否定されます。



——今回のケースについてはどうでしょうか。



今回のケースでは、2通りに分けて考えることができます。



まず、使用者が、感染予防マニュアルを作成するなど適切な対応策をとっていたにもかかわらず、相談者をはじめとする従業員が、このマニュアルに反したため、クラスターが発生したといった場合、コロナ感染による休職を賃金査定の判断要素に含めることは一定の合理性があり、減給が有効と認められる可能性が高いと考えます。



一方、使用者が感染予防のための適切な対応策をとっていなかった、もしくは対応策をとっていたが、クラスターが発生したといった場合は、相談者にとっては避けられなかった感染による休職を賃金査定の判断要素に含められることになり、明らかに不合理です。



コロナの治療期間が通常約2週間程度であることや、特段の後遺症のない限り、治療後は元の職務遂行を期待できることからすれば、2週間の休職のみを理由に毎月5%の減給をおこなうことは、社会通念上著しく妥当性を欠くとして、減給が無効になる可能性が高いと考えます。



●「労災認定=減給無効」とは限らない

——相談者は労災申請をしているようです。職場でコロナに感染した場合でも、労災が認められることはあるのでしょうか。



労災として認められます。



どのような場合に労災として認められるかについては、厚生労働省から通知も出されていますが、基本的な考え方は他の労災と変わりません。



——もし労災が認められた場合、減給の査定に対して何か影響あるのでしょうか。



労災として認められた場合でも、先ほど述べたように、感染について従業員側に原因があるようなときは減給の査定に一定の合理性があると考えますので、労災が認められるか否かのみで、減給の有効性についての判断が決まるわけではありません。




【取材協力弁護士】
村松 由紀子(むらまつ・ゆきこ)弁護士
弁護士法人クローバーの代表弁護士。同法人には、弁護士4名が在籍する他、社会保険労務士5名、行政書士1名が所属。企業法務を得意とする。その他、交通事故をはじめとする事故、相続等の個人の問題を幅広く扱う。
事務所名:弁護士法人クローバー
事務所URL:https://clover.lawyer/