2021年07月21日 10:31 弁護士ドットコム
きくちゆうきさんの4コマ漫画『100日後に死ぬワニ』。2019年12月12日から2020年3月20日にかけての連載中、ツイッター上で好評を博したが、その後、商業展開が発表されると、一転して炎上に至ったことは記憶に新しい。
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この騒動は、大手広告代理店の関与など、ほとんど言いがかりに近いものも含まれていたが、その後も"オリンピック級"の不運が続いている。今年7月からは、劇場版アニメの上映がスタートしたが、観客動員はかんばしくないようだ。
4コマ漫画を原作としたアニメーション映画『100日間生きたワニ』は7月9日から上映されている。監督・脚本は、異例のヒットとなった映画『カメラを止めるな!』の上田慎一郎さんとアニメーション監督のふくだみゆきさん夫妻。
主人公ワニの100日間の日常と、ワニが死んでから100日後の仲間たちの姿を描いたオリジナルストーリーで、公式ウェブサイトには「こんな時代だからこそ、大切なものを見つめ直し、前を向いて進んでいくあなたに贈ります」というメッセージが添えられている。
ところが、映画レビューサイトでの荒らし行為が報告されているほか、東京・新宿の映画館「新宿バルト9」のオンライン予約システムの座席選択画面上で「100 ワニ」「100 ウニ」などの文字を作る「いたずら」が発生するなど、中身以外のところで話題を呼んでいる。
公開から約1週間後の週末、弁護士ドットコムニュースの記者が、新宿バルト9の予約システムをのぞいてみたところ、上記のような「いたずら」の痕跡は一つも確認できなかった。1日1回の上映で、コロナ関連で半減された約40席はほぼ満席となっている。
本当は『竜とそばかすの姫』が見たかったが、せっかくなので鑑賞することに。
当日1時間前でも問題なく、ばっちり予約することができた。約63分のアニメーションで1900円はいささか高い気もしたが(あとで経費精算しよう)、はたして劇場版『100ワニ』は、脚本・演出・音楽ともにきれいにまとまった良作だった。
上映後、会場をあとにする観客の中には、「ヤバい」と目頭をおさえたり、涙をぬぐう人もいた。あくまで印象だが、若い女性グループが多かったように思われる。個人的には、ワニたち登場人物が、靴を履いていないのが気になってしかたなかった。
ネット上で、いったん「おもちゃ」にされてしまうと、どんなに良いものであっても、その価値が傷つけられてしまうことがある。コロナ禍のオリンピックを控える中、『100ワニ』は、われわれが失ったものを見つけるきっかけになる・・・かもしれない。
なお、新宿バルト9は、オンライン予約システム上で迷惑行為をしないよう注意喚起をおこなっている。さらに、警察への届け出を警告するなど、悪質な迷惑行為に対しては厳しく臨む姿勢も示している。
こうした「いたずら」は、まさに靴を脱がずに土足で他人の家に上がり込むようなものだ。弁護士によると、偽計業務妨害罪にあたるおそれもあるので、厳に慎しんでほしい。そして、批判するならば、まずは鑑賞してからにすべきだろう。