2021年07月20日 16:21 弁護士ドットコム
熊本県で2020年11月、死産した双子の赤ちゃんを自宅に放置したとして、母親のベトナム人技能実習生(22歳)が死体遺棄の罪に問われた事件。熊本地裁は7月20日、懲役8カ月、執行猶予3年(求刑:懲役1年)の有罪判決を下した。
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この判決に対して、外国人技能実習生問題弁護士連絡会(実習生弁連)は「妊娠、出産すると強制帰国させられるという技能実習生のおかれた状況を無視し、また孤立出産した女性を広範に犯罪者と扱うおそれ」があるとして、強く抗議する声明を発表した。
報道によると、実習生は2020年11月、自宅で死産した双子の赤ちゃんの遺体を段ボール箱に入れて、自宅に放置したとされている。弁護側は「ベトナムでは土葬が一般的で、適法の安置行為だった」などと無罪を主張していた。
声明は「技能実習生が妊娠して出産することも、人が人として生きる上で当然に認められるべき権利である」にもかかわらず、「監理団体から『妊娠などしないように』と指示され」ており、「意に反することを強制されていたという点で被害者としての面があるのに、これを無視して刑事責任を問うこと自体に大きな問題がある」と指摘。
そのうえで、判決について「有罪として確定してしまうと、技能実習生のみならず孤立出産(死産)したすべての女性が、出産後の身体への多大な負担にもかかわらず、出産当日に埋葬に向けた法的に正しい手続きに着手しないと死体遺棄罪に問われることになりかねない」として、刑法の解釈の観点からも批判している。
さらに、「異国の地で言葉も地理も社会システムも分からずに独りで出産し、かつ地元にある限られた品々で埋葬の準備をおこなった実習生を罪に問うというのは、病者に鞭打つ行為に等しい」として、判決に強く抗議したうえで、技能実習制度の廃止そのものも求めている。