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何が変わった? フィアット「500」の新グレードに試乗!

2021年07月19日 11:41  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
コンパクトで愛らしいスタイルが人気のフィアット「500」(チンクエチェント)。2021年5月にラインアップの変更があり、日本で買えるグレードは従来の「Pop」(ポップ)と「Lounge」(ラウンジ)から「Cult」(カルト)と「Dolcevita」(ドルチェビータ)に入れ替わった。何が違うのか、新グレードに乗ってみた。

○「シチリアオレンジ」がレギュラーに!

パワートレインは1.2リッター4気筒と0.9リッター2気筒「TwinAir」(ツインエア)の2種類で変更なしだが、内外装をリフレッシュし、新たな機能が追加になったという「500」。違いを確かめるため導入から間もない広報車を借り出し、都内~箱根の往復200キロを試乗した。選んだのは「1.2 カルト」というグレード。販売価格がジャスト200万円というベーシックモデルだ。

試乗車のボディカラーはカルト専用色の「シチリアオレンジ」(有償色、5.5万円)。丸いボディの大きさは全長3,570mm、全幅1,625mm、全高1,515mmで基本的に変更がないので、このカラーの500であれば最新モデルだと識別できる。

インストルメントパネルがボディと同色となるのは従来型と同じ。明るいシチリアオレンジのパネルが、ステアリングやダイヤル部分のホワイトといいコントラストになっている。

4座のシートは新色の深いブルーの表皮を採用。背もたれの部分には連続した「FIAT」のロゴが新たにあしらわれている。ブラックのマットも「500」の数字が連続するデザインになっていて、オーナーのハートをくすぐってくれる。

○新装備のクルコンを試す

フロントには1.2リッター直列4気筒の8バルブエンジンを搭載。フィアットが代表作として1980年代から連綿と採用し続けてきた「FIRE」(ファイア)シリーズのリファインバージョンだ。自然吸気の圧縮比を上げてパワーアップを図ることで、現行型では最高出力51kW(69PS)/5,500rpm、最大トルク102Nm/3,000rpmを発生する長寿エンジンになっている。公称では0~100km/h加速が12.9秒、最高速度は160km/hとあるので、データ的に不満は出ないはず。さっそく走り出してみた。

トランスミッションは従来型と同じく「デュアロジック」を採用。クラッチ操作が不要の2ペダル式5速MTだ。ゲート式のシフトレバーを左側に倒すことで、「Auto」(自動変速)とMT(手動変速)が切り替えられる。自動変速モードがあるので当然、AT免許でも運転することが可能だ。

箱根に向かう途中の圏央道や小田原厚木道路では、新装備の「クルーズコントロール」(クルコン)を使ってみた。

クルコンはセットした速度でクルマを走行させられる機能だ。作動中はアクセルを操作しなくても一定の速度で走ってくれるが、「アダプティブクルーズコントロール」(ACC)とは違って前を走るクルマとの距離までは調整してくれないので、車間が詰まった場合にはブレーキ操作を行う必要がある。

クルコンはACCとは違う単純な機能だが、これがあるのとないのとでは、ロングドライブでの疲労具合に大きな差がつく。かなり昔から高級車には装着されていた装備ではあるものの、それがついに「500」にまでも採用されたというのは感慨深い。

新型「500」では、パドルシフトが復活したことも嬉しいニュースだ。過去に装着したモデルはあったが、再び標準装備になった。

デュアロジックを上手に操るには、シフトタイミングがきたのを見計らってアクセルを緩め、すかさずシフトチェンジして再びアクセルを踏み込む、といったような操作が必要になってくる。絶対的にはアンダーパワーなので車速の伸びはそれほどではないけれども、箱根ターンパイクをマニュアルシフトで走ってみると、ちょっとしたスポーツ感覚やクルマとの一体感が味わえて楽しかった。

1.2 カルトが装着するタイヤは、エアボリュームのある175/65R14のコンチネンタル製「エコ・コンタクト6」。イタリアの石畳や高速道路で鍛えたサスペンションと相まって乗り心地がよく、短いホイールベースにもかかわらず直進性に優れた、どっしりとした走りを見せてくれる。

気になった点としては、坂道発進の際に働く「ヒルホールド」のキープ時間が2秒間しかないので、ブレーキペダルから足を離すと思いがけず後退してしまうシーンがあった。ただ、このあたりのクセをしっかりと把握しつつ操作に慣れていけば、200万円という価格は「安い」と思わせてくれるはず。デビューから14年目に突入していながらも、高速での快適性や街中での走りに磨きをかけることで、フィアット「500」は魅力あふれるクルマであり続けているのだ。

原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)