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「配偶者の社内不倫をやめさせて」会社に関係バラしてはダメ?

2021年07月18日 09:01  弁護士ドットコム

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妻や夫が勤務先で不倫。そんな場合、不倫の事実を会社に伝えて、2人を別れさせたいと考える人もいます。しかし、法的には問題はないのでしょうか。


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弁護士ドットコムには「配偶者が上司と社内不倫している事実を会社に伝え、再発防止策を話し合いたい」と相談が寄せられています。



この相談者によれば、配偶者と上司が複数回旅行に行ったり、同じ出張先で不貞行為をしているといいます。また、2人は不貞行為があったとわかるメッセージや長時間の電話でのやり取りなどもしていたようで、その証拠を相談者が持っているようです。



配偶者の不倫相手である上司には慰謝料を請求する予定ですが、再度の不倫を防ぐためには、「2人の勤務先に事実を伝え、再発防止の相談や部署変更のお願いをしたい」と考えています。



会社に従業員同士が不倫している事実を伝えるのは問題ないのでしょうか。河内良弁護士に聞きました。



●解決につながらない可能性

——会社に従業員同士が不倫している事実を伝えた場合、どのような問題が発生するでしょうか。



まず、「上司が配偶者と不貞関係に及んだ」という事実は、上司と配偶者の社会的評価を低下させるものです。それを、合理的な理由もなしに外部に吹聴するような行為は、その内容が真実であったとしても、上司と配偶者の名誉を毀損するものであると言えなくもありません。



ただ、一般に、名誉毀損にあたるとされるためには、それが刑事上の犯罪行為であるか、民事上の不法行為であるかを問わず、「公然性」すなわち「不特定または多数人の知り得る状態に置くこと」が必要と解されています。



今回の場合、勤務先に知らせるという行為が、どのくらい公然性を備えているか、逆の言い方をすれば、どのくらい、勤務先の特定の人に対してだけ伝えるかによると考えられます。



また、これとは別に、勤務先に告げることに合理的な理由を見出すことができれば、「合理的な理由もなしに」告げたことにはならないようにも思われます。



——具体的にはどのような場合に「合理的な理由」があると考えられますか。



たとえば、「社内にいわゆるコンプライアンス部門のような部署がある場合に、上司と部下の関係で不貞行為が行われたことがセクハラにあたるとして、その部署に申告する」ということであれば、その合理性を説明できるのではないでしょうか。



——今回のケースではどうでしょうか。



相談者のニーズは、上司と配偶者の再接触の防止にあるわけですが、そのニーズを正面から会社に伝えても、会社が従業員の業務外(=プライベート)での行動をコントロールできるわけではないので、むしろ、ニーズを隠して、「配偶者に対するセクハラが再発しないよう、部署の変更をお願いしたい」と告げるのが関の山ではないかと考えます。



なお、コンプライアンス部門が正常に機能している場合、会社が仮に調査をしようとすれば、配偶者に対する聴き取り等の活動を行う可能性があります。



この聴き取りの際に、配偶者が「セクハラではない。単なる自由恋愛だ(=私も合意のうえでしていることだ)」と応答したら、会社はそれ以上の追及をしない(できない)でしょう。



●「接触を完全に防止する手立てはない」

——今後2人が接触しないようにするための方法は何かあるのでしょうか。



既に述べたとおり、会社は、従業員のプライベートでの行動をコントロールできるわけではありません。



「配偶者が上司を見限った」という状態になれば、配偶者が上司を避けるようになるので、結果として接触防止ができる(それでも上司が接触を図るなら、接触禁止の仮処分なり、ストーカー規制法に基づく警告なりを、配偶者が自ら申し立てることもできる)のですが、上司と配偶者がお互いに熱を上げている状態が続くなら、接触を完全に防止する手立てなどありません。



接触の可能性を低下させるためには、上司と配偶者の目を覚まさせる必要があり、その方法として、「上司と配偶者の一方または双方を被告として、慰謝料請求訴訟をすみやかに提起し、裁判を抱えているという状態を作り出す」というのは、心理作戦として有効ではありますが、それすら絶対ではありません。



「言われた額は払うけど、2人は別れません」と応じられたら、上司と配偶者が逢瀬を重ねるたびに証拠を押さえて、訴訟を起こすということを繰り返すだけになるからです。




【取材協力弁護士】
河内 良(かわち・りょう)弁護士
大学時代は新聞奨学生として過ごし、平成18年に旧司法試験に合格。平成28年3月に独立した。趣味はドライブと温泉めぐり。
事務所名:河内良法律事務所
事務所URL:http://www.kawachiryo-law.jp