前戦オーストリアでのレースを終えた後、角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)はしばらくレッドブルリンクに残った。ピレリが2022年から導入する18インチタイヤのテストのためだ。
「ルーキーなので、少しでもマシンに多く乗ることができるのは、僕にとってとても大切だし、面白い仕事でした」と言う角田にとって、イギリスGPで採用される、約100kmの短いレース形式の『スプリント予選』と呼ばれる新たなセッションを採り入れた新しいフォーマットはハンディとなる。「F1マシンでの走行経験が(シルバーストンでは)少ないにもかかわらず、予選までのフリー走行が1セッションだけ」(角田)だからだ。
第7戦フランスGPの予選Q1でクラッシュした角田は、その後、週末のアプローチを再度見直した。
「それまでは、自信があると感じたときはセットアップ変更の直後でもプッシュしていました」
この方法はフリー走行から予選までにセッションが1回しかないFIA-F2までのカテゴリーではうまく機能していた。しかし、F1ではそのまま機能しなかった。それが結果となって露呈してしまったのが、Q1の1回目のアタックでクラッシュしたフランスGPだった。
「セッティングを変更した直後にプッシュするのは大きなリスクがある」ことを思い知らされた角田は、続くオーストリアでの2戦ではフリー走行から予選までだけでなく、セッション中にセットアップを変更した後も、一歩ずつ限界を探るよう慎重に攻めるアプローチに変えていった。
しかし、そのアプローチを今回の新しいフォーマットで機能させることは難しかった。
予選前の60分間のフリー走行で、角田が走行したラップは29周。これはメルセデス勢2台に次いで、ジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)とともに2番目に多い周回だった。しかし、このうち21周はミディアムタイヤを装着しての走行で、予選シミュレーションとなるソフトタイヤでの走行はわずか1セットのタイヤでの8周だけだった。
それでも角田はフリー走行1回目でチームメートのピエール・ガスリーから約コンマ1秒遅れの12番手につけていた。
予選は気温は25度、路面温度は40度というコンディションのなかでスタート。1セット目のタイヤでのアタックで15番手と苦しい出だしとなった角田は、2セット目のタイヤでのアタックでQ2進出を賭けてコースインしたが、自己ベストを更新できない。逆に最後のアタックに入る前に16番手以下だったドライバーのなかから数人が自己ベストを更新してQ2進出圏内に突入してきたため、16番手に降格。フランスGP以来、3戦ぶりにQ1敗退となった。
「渋滞のため完璧なラップを刻めないまま、予選に臨むということで、今回は僕にとって難しい予選となりました。最後のアタックラップでは再びトラフィックに悩まされました」と言う角田と、15番手のランス・ストロール(アストンマーティン)との差は、わずか0.026秒差だった。
予選は終了したが、日曜日のレースのスターティンググリッドを決めるのは、土曜日のスプリント予選の結果。16番手から少しポジションを上げて、フィニッシュしてもらいたい。