2021年07月15日 20:11 弁護士ドットコム
東京・池袋で2019年4月、乗用車が暴走し松永真菜さんと長女の莉子ちゃんが死亡した事故で、自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致死傷)の罪で起訴された男性(90)の論告求刑公判が7月15日、東京地裁であった。
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検察側は、ブレーキとアクセルを踏み間違えた過失は初歩的で基本的な操作の誤りだとして禁錮7年を求刑した。被告人側は踏み間違えた記憶はないとして無罪を主張し、結審した。判決は9月2日に言い渡される。
男性が問われている過失運転致死傷罪の罰則は「7年以下の懲役若しくは禁錮または100万円以下の罰金」で、求刑された「7年」という年数は上限にあたる。
公判後、東京・霞が関の司法記者クラブで開いた会見で、真菜さんの夫の松永拓也さんは、「被害者の無念、沈痛を思えば、7年というのは足りるものではない。ただ、日本は法治国家。上限7年の求刑がおこなわれたという点では、検察の判断に感謝したい」と話した。
この日の公判では、論告求刑の前に、松永さんや真菜さんの父親の上原義教さんが、被害者参加人として、心情に関する意見陳述をおこなった。
松永さんは、真菜さんや莉子ちゃんのことを振り返るとともに、今回の裁判で、被告人の男性に対して「実刑判決が出ると信じている」と陳述。仮に実刑でも、年齢や健康状態を理由に収監されない可能性にも言及したうえで、「刑務所に行かなければ罪と向き合うことはできない」と述べた。
上原さんは、事故の数日前に真菜さんや莉子ちゃんと最後にした会話で、かき氷を食べるのを楽しみにしていたことを振り返った。そのうえで、男性に対しては、「あなたも人の子なら、車のせいにせず、自分の犯した罪に向き合ってください」と述べた。
松永さんは、公判後の会見で、「ここまで長かった。むなしさと『やれることはやった』という気持ちがあり、複雑な感情でいる」と話した。
「最終弁論で、男性の主張は変わりませんでした。過失がないということを変わらず主張し続けました。
心がつぶれそうになりながらも読み上げた『心情に関する意見陳述』を聞いても、なお変えられないんだなと。男性には罪と2人の命と遺族の無念と向き合う時間と場所が必要だと思います。
それが何かと言えば、刑務所に入ることです。ですので、裁判所にはしっかりと公平公正な判決を下していただきたいと願っています」(松永さん)
会見で「今は落ち込んでいる」と切り出した上原さんは、「多くの方々に支えられて、今日やっと自分の言いたいことを言えた」と語ったが、一方で「むなしさ」を覚えているという。
「求刑の7年には、私個人としては納得いかないです。私自身も間違うことはあります。しかし、これだけの証拠をぶつけられて、ましてや技術のことをよく知っている方が、それでもなお車のせいにし続けていることを残念に思います」(上原さん)
会見の中で松永さんも上原さんも、男性に対して、努めて冷静に「反省してほしい」と繰り返し述べるとともに、遺族としての苦しい率直な今の心情を明かした。判決が出た際に2人に報告するかどうかを問われた松永さんは「特にしない」と話した。
「一人の人間として、この世からいなくなった2人には、ただただ穏やかでいてほしい。もし天国があるならば、苦しみも痛みもない世界で穏やかにいてほしいと思うので、裁判の報告はあまりしていません。ただ、遺族としては、最大の刑罰を望んでいます」(松永さん)