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「ジャンプ」新連載『レッドフード』は王道少年マンガ? 童話×人狼で読者の心を掴むか

2021年07月14日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

ジャンプ新連載『レッドフード』は王道?

 「週刊少年ジャンプ」30号からスタートした川口勇貴の『レッドフード』。第14回金未来杯で優勝した注目作品である。


 小さな「カソカ村」。そこで「また」人が消えた。着ていた服と、血の跡を残して。彼らを脅かしているのは“人狼”と呼ばれる怪物。


(参考:【画像】ジャンプは2号連続で新連載が始まった


〈人間がある日突然食人衝動に目覚め、やがては人肉を食らう怪物となる〉


 つまり、隣人が突然、人狼になる可能性がある。なぜそのような怪物が生まれたかは分からない。ただ、一度でも人を食べた人狼はもう普通の料理で満足できなくなる。一生、人間を襲い続ける体になってしまうのだ。


 これ以上の被害が出ることを恐れたカソカ村の村長は、怪物退治専門の傭兵組織「狩人組合」に要請を出す。組合を設立したのは「赤ずきん」という伝説の狩人だという。


 カソカ村に派遣されてきたのは、村人にとっては期待外れの小さな女の子・グリム。まずは前金をよこせというグリムに、人狼に親を殺された少年ベローはかみつく。しかし、もう危機はすぐそこに迫っていた。


■狩人vs人狼 王道少年漫画


 狩人たちの目的はすべての人狼を倒すことだ。世界観はシンプルで分かりやすい。そして大切な人を奪われて人狼に憎しみを抱く少年・ベロー。今は、自分が暮らしている村の人たちを人狼から守りたいと思っている。


 一方、グリムはクールで、一見、公私混同をしないように見える(が、今後どうなるかはわからない)。


 初めての戦いで、センスの片鱗を見せたベローをグリムが狩人にスカウトするが、ベローの回答はNOだ。そこでグリムは「村の安全の保障」と「自分への信頼の獲得」を優先させる。村を守り抜いて、信頼のおける人物であることを証明してみせてから、ベローを狩人として育てていくのだろうか。


 ベローの親の仇は、すでにカソカ村の村長がとっている。村を守るということ以外に、ベローは狩人になるどのような理由を見つけるのか。


■童話、狼の性質、人狼ゲーム……要素をどう生かすのか


 第1話ではは、グリムがわざと人狼に食べられて、腹の中に爆弾を仕掛けるという、グリム童話をオマージュしたような展開がある。「レッドフード」=赤ずきんということで、明らかに童話をヒントに描かれているが、人狼には狼という動物本来の性質も加えられている。


 また、人狼は圧倒的な力を持ち、人間の姿に化けることができるので周りの人たちの目を欺くことができる。これは、コロナ禍におけるオンラインプレイの隆盛も含め、ブームになって久しい「人狼ゲーム」に通じる。童話、狼、人狼。この要素を今後どのように絡ませていくのか。


 『赤ずきん』はグリム童話版が有名だが、元は民話。グリムの以前にはフランスの詩人シャルル・ペローが物語にしている。ペロー版ではおばあさんも赤ずきんも食べられておしまい。主要人物の名前がグリムとベロー(ペロー)というのは何か関係があるのか……。今後の展開を注視したい。


(文=ふくだりょうこ)