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エヴァ“フィナーレ舞台挨拶”、緒方恵美「いつでも14歳に戻れるよう努力していく」

2021年07月11日 19:04  コミックナタリー

コミックナタリー

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」舞台挨拶の様子。
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の舞台挨拶が、本日7月11日に東京・新宿バルト9にて開催。碇シンジ役の緒方恵美、葛城ミサト役の三石琴乃、赤木リツコ役の山口由里子、碇ゲンドウ役の立木文彦、庵野秀明総監督が登壇した。

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“フィナーレ舞台挨拶”と銘打たれた本日のイベント。冒頭に緒方が「今日はアニメの冒頭で最初に出会う人たち(を演じたキャスト)が揃ったんですよ。このメンバーで最後の挨拶をさせていただくのが感慨深いです」と語ると、庵野は「懐かしいなあ……。今日は最後の舞台挨拶ということで、改めてお礼を申し上げたく登壇しました」と述べ、舞台挨拶をスタートさせた。

まずはTVアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」初収録の思い出について、質問された登壇者たち。緒方が「絵が100%入ってましたね」と真っ先に答えると観客からは笑いが起きる。三石が「きれいなカラーでしたよね」と振り返ると、緒方も「これは大変なものが始まったと思ったのは覚えてます」と続ける。しかし三石が「だんだんホワイティになってきて……(笑)」と述べると、緒方も「最終話は絵もなく、白と黒の画面が交互に出てくるだけ。タイムコードもない」と力説する。すると庵野は「最終話じゃなくて1話前だと思う。25話のほうが厳しかったよ」と冷静に訂正する。

さらに緒方は、映像だけではなく台本も直前まで届かなかったと明かし「台本がアフレコの前日の夜中に届いたんですよ」と続けると、三石も「もう私たちにすべて任されたんだって、フリーだと思えばよかった(笑)。絵に合わせたいっていう職業病が悪かったのかな?」と言い出し、なかなか愚痴が止まらない。そんなキャスト陣に庵野は「ラジオドラマにあとから絵をつけてるみたいなもの」「声に合わせて作りますから大丈夫」と飄々とした様子。また「エヴァ」が声優として初めての仕事だったという山口は「ほかを知らなかったので。ああいうものだと思ってしまいました(笑)」と笑顔を浮かべていた。

また「シン・エヴァ」を完成させた現在の心境について問われた庵野は、「今、自分が作るアニメでやれることはだいたいやったと思う。『序』『破』『Q』のときはやり残したこともあったけど、今回でようやくほとんどできたかなと」とコメント。さらに「シンジはどんな存在?」という質問を受けた緒方は「TVシリーズをやってたときは、自分とは真逆だと思ってたんです。私は強いと思ってたし、こういう性格ではないと思っていたんです。でも26年経って、今は自分はシンジだったと思います」と語った。

本日の舞台挨拶用にSNSで募集した質問に答えるコーナーでは、立木が“あの人”の名前を呼ぶシーンについて「エヴァの歴史の中でレイを呼ぶことがたくさんあって、あの人に対する気持ちを込めてたんです。今回はその気持ちに正直に、だけどどこか自然に湧いてくるような、心から湧いてくるような感じで喋ったような記憶があります」とアフレコ時の思いを述べる。また三石と山口には、「お互いのキャラクターの好きなところは?」という質問が届き、三石は「たくさんあるんですけど、根本は声だと思います。リツコの声が好き」とシンプルに回答。山口は「リツコは、母のようにどっぷりとミサトの中に収まっていたような居心地のよさがあったと思う。『エヴァ』の中で大きな愛を持っている存在はミサトさんだけ。それはリツコにはなかったから、憧れというか安心でもありました」と返し、お互いに「好き」と顔を見合わせた。

さらに「あなたにとっての『エヴァ』とは?」という質問に対し、立木は「26年間やってきたリアル人生ゲームみたいなところもあり、今となっては人生経典みたいなところがある」とコメント。続く山口は「私は『エヴァ』のオーディションから声優の世界に入ったのですが、思ってもいない職業についてしまった感じがあって。自分の運命を変えられた作品。庵野監督のもとで『エヴァ』のいちクルーとして作品の中で生きることが、今生の使命のようで。運命の出会いですね」と語る。

また三石は「ザ・マウンテンって感じですね(笑)。途中で崖から落ちてしまったり頂上まで行ってみんなで喜び合ったり。下山しても次の山はないのかって探してしまうような。何言ってんだろ私(笑)」と独特な表現で思いを表す。そして緒方は「私はストレートに、自分自身のもう1つの14歳の記憶だと思ってます」と述べ、庵野は「スカして言えば、『僕の最新作』で済んじゃうんですけど(笑)」と笑いながらも、「企画から30年近く関わってる作品なので、人生の半分を費やした作品。それが終わったのは感無量ですね」と感慨深く話した。

最後の挨拶で、三石は「葛城ミサトという役として、のたうち回ったり喜んだり泣いたり叫んだりした時間が愛おしく思ってます。監督を始めスタッフの皆さんに感謝の気持でいっぱいです」と涙を浮かべながらも、「打ち上げにパリにでも行きたいなって夢を見てます(笑)。本当にありがとうございました」と最後は笑顔を向けた。また緒方は「役者というのは、努力をするのは当たり前ですが、運がなければ生きていけないと思ってます。そういう意味で私たちは、私は本当にありえない運をいただいてここまで来ることができ、それは『エヴァ』のおかげだと思います」と込み上げる感情を押さえながら語る。そして「この先またシンジに会えるかどうかわかりませんが、いつ呼んでいただいても14歳に戻れるように、そういう自分でいられるように、これからも努力していきたいと思います」と思いを伝えた。そして庵野が「今日は最後に皆さんにお礼を申し上げたくてここに来ました。ありがとうございました」と感謝を述べ、舞台挨拶を締めくくった。

(c)カラー