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BTS、「Permission to Dance」で伝える“繋がっている”という希望 紫色の風船が象徴的なMVから感じたこと

2021年07月11日 10:01  リアルサウンド

リアルサウンド

BTS「Butter」

 BTSが、7月9日にCD『Butter』を発売。同日に、新曲「Permission to Dance」のMVを公開した。“音楽の力“という言葉を耳にすることがあるが、この「Permission to Dance」のMVには、まさしくその力が宿っていることを感じられる楽曲だ。


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 MVは、カフェのワンシーンからスタート。1人の女性店員がバターの添えられたホットケーキを持って歩いてくる。そしてカメラが徐々にズームアウトすると、彼女の口元にマスクが装着されていることに気づく。温かみのある色味の映像に、真っ白なマスクにハッとさせられる。そう、ここはマスクが必要な世界。現実を生きる私たちと地続きの空間にあることを改めて印象づける。


 彼女はそのまま窓の方へと歩み進め、そっと空を見上げる。青く澄んだ空は、やがて紫色の風船を飛ばすJUNG KOOKのもとへと繋がっていく。この紫色の風船には「希望」が込められているのだそうだ。普段は、なかなか目に見えない「希望」。それがBTSの音楽によって、誰もが気づくことのできる形として私たちの前に現れる。


 ピアノの鍵盤を弾くように動かされたJUNG KOOKの指。その先にはSUGAの奏でるピアノに合わせてRMが歌い、他のメンバーがリラックスしてリズムに乗る空間が広がる。そしてJIMINが伸ばした指先を、今度はJINが掴むようにして歌い繋ぐ。


 このMVには意図的に「繋がっていく」イメージが多用されているように見える。空から空へ。指から指へ。希望から希望へ……人と人が距離を取り、断絶を余儀なくされている今だからこそ、彼らは何度も見せ、伝えてくれる。いつだって「私たちは繋がっているのだ」という希望を。


 やがて様々な場所で、JUNG KOOKが飛ばした紫色の風船が目撃されていく。空を見上げ、指をさし、笑顔になっていく人々。J-HOPEやVが歌い、思い思いにメンバーが踊る背後には、まだまだこの紫色の風船があるのが見て取れる。何度でも、どれだけ見過ごされたとしても、これからも「希望」を届けていきたいという意志の表れのような場面。


 だが、よくよく見ると紫色の風船は、掃除をするワゴンにもくっついている。さらにコインランドリーの洗濯機の中、トラックの中にもチラ見えする。私たちが気づかないだけで、きっと日常の何気ない風景でも「希望」は存在していて、きっとBTSの音楽はそれを可視化するきっかけにすぎないのだと言わんばかりに。


 後半、西部開拓時代のカウボーイを連想させる衣装には、母国のみならず新たな地で挑戦を続ける彼らを象徴しているようにも見える。この楽曲に、英シンガーソングライターのエド・シーラン、英出身プロデューサーのスティーブ・マックらが曲制作に参加したというのも、世界との繋がりを感じさせるものだ。


 そんな国を越えて生まれた楽曲に合わせて、彼らが踊るのは国際手話を取り入れたダンス。親指を伸ばした両手を胸の前で上下させるのは「楽しい」、手のひらを舞台に見立て人差し指と中指を動かすのは「踊る(ダンス)」、そして両手でVを作るのは「平和」という意味なのだという。このMVを見た各国の老若男女が〈Da na na na na na na〉と口付さみながら、踊る姿が目に浮かぶではないか。


 たとえ言語が違っても、交わらないと絶望しても、人と人とが繋がる方法(希望)はきっとある。まさに「We don’t need permission to dance(私たちがダンスをするのに許可はいらない)」。きっと共通言語を持っていない人たちが「はじめまして」となったとしても、この音楽が流れ思い思いにダンスをすれば、それだけで打ち解けられるような気がする。この楽曲は、この世界を平和にするひとつのアンサーだ。


 未知のウイルスとの戦いで思うような活動ができない日々がまだまだ続く。BTSもその当事者でもある。それでも、今できることを発信し続けていく。7月9日には『A Butterful Getaway with BTS』にて初パフォーマンスを披露。トーク部分では、この曲の持つイメージを「enjoy」「キャンプファイヤー」「自由」……と表現していた彼ら。JIMINが最後に「ダンスだけは誰でも気の向くままに楽しむことができる。ただ踊ればいいです」と笑顔で解説してくれた。


 ライブでARMY(ファン)直接届けたいという思いを噛み締めながらも、円形のスペースで周りをぐるりとダンサーが囲み、MVのラストを思わせる力強くも熱いステージを見せてくれたBTS。MV、オンエア、そしていつか行なわれるはずのライブ。ここにも「繋がっている」というメッセージを感じずにはいられない。


 どんな環境にも屈しないBTSの明るく縛られない心が、この楽曲の開放感を増している。その強い志に、温かなメッセージに、胸が熱くなる思いだ。やがて来る、世界中の人がマスクを外して、笑い合ったり、キスができる日まで。このMVが私たちを支えてくれることだろう。(佐藤結衣)