コロナ禍のテレワーク推進で、都心のオフィスを縮小・撤退する企業が増えています。オフィス仲介大手の「三鬼商事」の調査(https://www.e-miki.com/market/tokyo/)によると、東京ビジネス地区の平均空室率は、2021年5月時点で5.9%でした。同地区の平均空室率は15カ月連続で上昇しています。
一方で、私の所属する会社は、世界33か国で400人がフルリモートで働いていますが、あえて東京にオフィスを構えています。その理由を説明します。(文:株式会社ニット 広報 小澤美佳)
対面の方が向いている業務とは?
理由の一つは「心理的安全性の確保できる場を作るため」です。世界中にメンバーがいるので物理的な理由でオフィスに来られない方もいますが、「みんながいつでも集まれる場所を創りたい」という代表の強い想いから、オフィスを作りました。
もう一つの理由は「face-to-faceで行った方が良い業務もある」からです。テキストコミュニケーションやビデオツールでの対話より、直接会って話す方がイノベーションが生まれやすく、成果が出ると考えています。例えば、ディスカッションの積み重ねが必要な新規事業の開発、何気ない会話からアイデアが生まれる未来を語るブレスト、心理的な距離の近さにより安心して相談できるキャリア面談などです。
一方で、業務の内容を明確にして、それを遂行するジョブ型や、チーム制ではなく個人で業務を推進する単独型の仕事などは、テレワークとの相性が良く、生産性の向上が見込めます。また、一人ひとりが自律し積極的に動けるチームで、互いの信頼関係が構築されている場合も、テレワークが有用だと思います。
私自身は、業務内容によって、テレワークとオフィス出社を選択するハイブリッド型で働いています。
例えば、雑談やディスカッションをする場合はオフィスへ、集中する際には自宅、気分転換をする場合はカフェで仕事をするなど、業務内容やその日の気分で場所を使い分けています。
一度でも対面で話をしていると、仕事が「円滑に」
今までお伝えしてきた通り、私はテレワークを推進する企業でも、対面で会う場所はあった方が良いと考えています。
特に新入社員や異動してきたばかりの方との面談、新しいプロジェクトメンバーとのキックオフなど信頼関係をこれから構築していく場合は、対面で一度話をしておくことで、関係性の構築が早いと思います。
一度でも対面で話をしていると、その後テレワークに移行した場合も仕事を円滑に進めやすくなります。
しかし、必ずしも「オフィス」という形態だけでなく、コワーキングスペースや、カフェで落ち合って会話するなどでも良いと思います。
テレワークはあくまで手段です。「なぜテレワークをするのか?」「なぜオフィスワークをするのか?」という目的を、会社単位というよりも、部署単位そして個人の業務に明確に落とし込みましょう。そうすることで、どちらを選択しても生産性高く働くことができると思います。
【プロフィール】小澤美佳
新卒でリクルート入社。採用領域の営業、営業マネージャーを経て、リクナビ副編集長として数多くの大学で講演実施。採用、評価、育成、組織風土醸成など幅広くHR業務に従事。中米ベリーズへ単身移住・起業。その後、ニットに入社し、営業・人事を経て、広報。オンラインファシリテーターとしても活動中。