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換気のプロ目線による「街中の換気の実態」 第3回 換気のプロが指摘 - 飲食店の安全と危険の境目

2021年07月07日 07:11  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
長引くコロナ禍で、感染対策で重要とされる換気に対する意識も徐々に薄れてしまったと感じることもある。エアコン空調による冷房で窓が締め切りになってしまいがちなこの季節だからこそ、気を引き締めたいものである。

これまで2回にわたって、「空調のプロ」である、ダイキン工業 空調営業本部テクニカルエンジニアリング技術担当課長の髙橋弘史氏に、人が集まる商業施設や飲食店、劇場、スポーツ施設、公共交通機関、公共施設における換気の実態について伺ってきたが、最終回の今回は、空調のプロから見て、換気対策を十分していて安心と思えるお店や場所の判断基準やチェックポイントを教えてもらった。

○飲食店の換気設備をチェックする

「自分が個人的に訪れたお店や相談にあたったお店で、(感染対策の)意識が高いなと思うのはやはり高級飲食店です。来店するお客さんも意識が高い人が多いようで、感染症対策の質問を受けた際に理路整然と説明できるように対応と心構えをしっかりとしている印象があります。例えば、店内にCO2センサーを取り付けて、空気の状況を可視化してわかるようにしているお店もあったりしますよ」

髙橋氏が飲食店を訪れる際に、チェックしているのは厨房設備。

「厨房が見える飲食店の場合は、キレイに保たれているかを見ますね。見た目に厨房が清潔に保たれていると分かる場合は、それだけ換気設備の手入れも行き届いていて、しっかり機能できていると言えます。反対に換気設備が汚れた状態だと、十分に風量が保てておらず、設備に備わっているはずの相応の性能を発揮していない可能性があります」

高級店の場合には、厨房だけでなく客室にも換気扇を備えていることが多いという。

しかし、換気で重要なのは単に風量を上げていくという作業ではなく、「給気と排気をしっかりとやること。空気がしっかりと入れ替わっている環境のところは、入店した瞬間に空気がキレイだと感じます」と髙橋氏。

「入った時に扉を開けると、風がスッと入っていくのがわかるお店は、給排気がしっかりできている証拠」とのことだ。

○換気設備は後付けできる

このように素人でも判断できる簡単なチェックポイントはあるものの、客をもてなす店舗の側としては、スタッフを含めて安全性を確保したいものだ。

そこでダイキン工業が昨秋開設したのが「空気の相談窓口」というコールセンター。開設以降、半年で5,000件の相談が寄せられ、直近では月間約900件の相談が集まっている。

相談内容は、「うちの換気ができているのか分からない」といった漠然としたものからさまざまだそう。

電話で相談を受けた後は、要望に応じて最寄りの営業所のスタッフか契約代理店のスタッフが現地に訪問し、風量の測定や、風の流れを可視化できる装置などを用いてチェックと診断を行い、アドバイスを行っているという。

「換気設備は、新築や大規模な改築時でないと導入できないと思われている方が多いのですが、後付けで導入できる換気設備のご紹介やご案内もできますので、気軽にご相談下さい」と話す。

換気のプロとして、事業者向けのセミナーなどを通して換気の啓蒙活動も行っている髙橋氏だが、「第一の感染対策はやはりマスクです」と強調する。

「次に、手洗い、消毒、距離という4要素を確実に守ること。そして、万が一、エアロゾルが発生してしまったとしても、換気が十分であれば、感染のリスクをかなり減らすことができます」と説明した。

コロナ禍を終息させるためには、外的な環境以上に1人1人の主体的な節度ある行動こそがカギを握ると言える。

神野恵美 フリーライター・編集者。ワーキングマザーとして10余年、世の中にあるさまざまな便利ガジェット・ツールを駆使して、生き延びる。趣味は料理に掃除、洗濯と野球、旅行、音楽や映画鑑賞などなど、周りが呆れるくらい趣味人間。"モノ"より"コト"優先で生きてる。 この著者の記事一覧はこちら(神野恵美)