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細田守が最新作の着想明かす「インターネット世界で『美女と野獣』を作ったら…」

2021年07月06日 21:48  コミックナタリー

コミックナタリー

「竜とそばかすの姫」完成報告会見の様子。左から玉城ティナ、染谷将太、佐藤健、中村佳穂、成田凌、細田守監督。
細田守監督最新作「竜とそばかすの姫」の完成報告会見が、本日7月6日に東京・グランドハイアット東京で開催された。

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完成報告会見には細田監督をはじめ、すず/ベル役の中村佳穂、久武忍役の成田凌、千頭慎次郎役の染谷将太、渡辺瑠果役の玉城ティナが参加。さらに、このイベントにて出演が発表された竜役の佐藤健も登壇した。普段、ミュージシャンとして活動している中村は「こういう場に初めて立つので興味深く楽しく、そして光栄に思っています」と挨拶。佐藤は「竜という難しい心を持った役どころをやらせていただきました。自分に務まるのか非常に不安でしたが、細田監督の温かなディレクションで最後までやり切ることができました」と述べ、すでに解禁されていた予告編を見ながら「『どこからどう聞いても俺じゃん!』ってバレないかヒヤヒヤしてました」と心配していたことも明かす。

過去作「デジモンアドベンチャー/ぼくらのウォーゲーム!」「サマーウォーズ」でインターネットを題材として取り扱ってきた細田監督。「竜とそばかすの姫」でも“現実世界とインターネットの仮想世界”をテーマに選んだことに触れ、「インターネットができてからまだ25年ぐらいしか経っていないので、仮想現実と現実の関係性を映画にしてきたという点では、世界の監督の中でも僕はかなり特別な存在なんじゃないかと。しかもインターネットを肯定的に描く監督としては、おそらく世界で僕1人だと思いますので、そこはこれからも表現していきたいなと思っています」と語る。

また細田は「竜とそばかすの姫」の始まりとして「美女と野獣」があったことに言及。「インターネットっていうのは現実と虚構の2つの部分を併せ持っている存在で、『美女と野獣』も二面性を持った物語ですよね。だから18世紀フランスの『美女と野獣』を、現代の日本のインターネットを介したら一体どういうふうに表現できるのか。どんな恋物語になるのか、どんなロマンスがそこにあるのかと思ったことが発想の原点でした」と明かす。

映画の感想を求められた中村は「圧、倒、的って感じです」とコメント。佐藤は「細田監督の真骨頂であり、新境地を見せていただいたなあという感じです。インターネット世界だとか、細田監督のきっと得意とされるところを描いた世界観なんですけど、その表現の仕方がすごく新しくて。こんなに映像が美しいだけで、人間はここまで胸が震えるんだと思わされました。さらにそこに中村さんの素敵な歌声が重なり合っていくので、もう中盤から後半にかけてはずっと涙腺が刺激されっぱなしの状態で、どこのシーンが感動するとかじゃなかったです」と熱弁した。

初めて観た映画が「デジモンアドベンチャー/ぼくらのウォーゲーム!」であり、細田監督の大ファンだという成田。「竜とそばかすの姫」について「数秒ですごい作品が始まったと思いました」と述べ、細田作品の魅力について「SNS(を含むインターネット)っていい部分もあれば悪い部分もやっぱり目立ってしまうと思うんですが、そこにも触れながら映像と歌で美しく表現されているのがすごいなと思います」と述べる。

イベントの前に映画を観たばかりだという染谷は「アクションがあってラブロマンスがあって、それでいて歌は素晴らしいし、映像も美しい。もう号泣しちゃって目がパンパンで、メイクさんを困らせてしまうぐらい本当に感動しました」とコメント。玉城は「細田さんがこうやってずっとインターネットを肯定してくれているのが、私はとてもうれしくて。高校生とかの時期ってコンプレックスだったり、自分はもっとできるっていう気持ちを持ってたりすると思うんです。それをどうやったら乗り越えられるか、肯定できるのかが描かれていて、学生時代の自分に見せてあげたいなって思いました」と話した。

ここからはキャスティングの話題に。中村はオーディションですず/ベル役に抜擢されたそうで、細田監督はその歌声を「中村さんの歌ってやっぱり特別だと思うんです。世の中には歌がうまい人とか、すごい表現力を持った人がたくさんいますけど、中村さんは歌を大事にして、歌にも愛されているというか……歌と中村さんが近い存在になっているようなところがものすごい特別な人だなあと思います」と称賛。佐藤は彼女の演技について「本当に初めてとはまったく思えないぐらい堂々とされていて。僕は後からアフレコに入ったんですが、あまりにも上手すぎたので『どうやってるんですか?』って教えを乞うてやらせていただきました」と褒め、中村を照れさせる。

竜役の佐藤については、細田監督の相当な思い入れがあった様子。「竜という役どころはやっぱりものすごい表現力が必要なので、それを一体誰が演じることができるんだろうというふうに思ってたんですよね。きっとこれができる人は日本だとほんのわずかで、そのうちの1人が間違いなく健くんだと思うんだよねという話をキャスティングが始まる前からしていて。そのぐらい、(佐藤が)この映画に必要だなということを強く感じてました」と明かした。

コロナ禍の影響で舞台となった高知県に監督とスタッフで行くことができず、リモートでロケハンしたというエピソードも明かされた。細田監督は最後に「『竜とそばかすの姫』は作るのに本当に苦労した映画です」と述べながら、「ラブロマンスがあってアクションがあってサスペンスがあってっていうような、エンタテインメントの面白い要素がたくさん詰まっています。どんな方でも楽しんでいただけるような映画になったと思いますので、ぜひ皆さんで観ていただければと思います」と呼びかけ、イベントは幕を閉じた。

■ 「竜とそばかすの姫」
2021年7月16日(金)全国東宝系にて公開

□ スタッフ
原作・脚本・監督:細田守
企画・制作:スタジオ地図