角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)がF1第9戦オーストリアGPの予選で自己最高位となる7番手を獲得した。
これまで、角田の予選最高位は第6戦アゼルバイジャンGPと第8戦シュタイアーマルクGPの8番手だった。しかし、アゼルバイジャンGPではQ3の最後のアタックでウォールにクラッシュ。シュタイアーマルクGPではQ3でバルテリ・ボッタス(メルセデス)のアタックを妨害したことで、3番手降格のペナルティを科せられ、両手をあげて喜べない部分があった。
しかし、今回のオーストリアGPの予選はそういったケチがまったくつかない走りで、しかも自己最高位を上回ったのだから、本人もうれしそうだった。
「予選での自己ベストを獲得できただけでなく、今日のパフォーマンスにはとても満足しています」(角田)
角田が成長したなと感じさせたのは、その後の言葉だ。
「チームにはすごく感謝していて、先週のペースを維持して、最大限の成果を出せるように取り組んでくれました」
2カ月前の第4戦スペインGPの予選後に「(チームメイトと)同じマシンなのか少し疑問に感じる。もちろん同じだけど、マシンの特徴が違いすぎる」と自らのマシンに不満を募らせていたドライバーと同じ者とは思えない言葉だった。
さらに、こう言ってチームに感謝した。
「チームがいいタイミングでコースインさせてくれたおかげで、トラックポジション(コースインしたときの前後のマシンとの位置関係)もよかったので、最後のアタックで自分もラップをまとめることができました」
レッドブルリンクは1周が短いために、前のマシンに近づいてコースインすると、アウトラップで前車との間隔を開けるためにスロー走行しなければならず、タイヤのウォームアップに支障をきたす。逆にタイミングが遅すぎると、アウトラップで後方からタイムアタックしてきたマシンがやってくるため、一旦走行ラインを外さなければならず、ゴミを拾ってしまう。そういった煩わしさを感じることなく、自分のタイミングでアタックを開始できた角田は、「リズムをつかみながら走ることができるのが好き」というレッドブルリンクの4.318kmを水を得た魚のようにスムーズに駆け抜けていった。
Q3進出は3度目だが、Q3の最後のアタックで初めて満足する走りをして締め括ることができた。
「スリップストリームを使えていれば、ストレートでもう少しタイムを縮められたかもしれませんが、順位的にはそこまで変わらなかったと思います。上がっても、1ポジションかな。それよりQ3進出が目標だったので、それを達成できて、かつ自己最高位を更新できたことは素直にうれしいです」
開幕戦から、ずっと現場で角田を取材しているが、これほど穏やかな表情を見たのは、9戦目で初めてのこと。
ただし、穏やかではあったが、喜びを爆発させるような雰囲気ではない。なぜなら、レーシングドライバーとして最も大切なことは日曜日のレース結果だということを認識しているからだ。
レースで最高のパフォーマンスを披露する。週末のアプローチを変えたのは、そのため。心地よい緊張感を保って、角田の土曜日は終了した。