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名車と暮らせば~メルセデス「S124」との悲喜こもごも~ 第14回 ランボルギーニに乗ったら、W124に乗り換えたくなった?

2021年07月01日 11:31  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
今回はちょっと趣向を変えて、お仕事の話を少しだけ。去る3月半ば、イタリアのスーパーカーメーカー「ランボルギーニ」の広報担当者から、1通の招待メールが届いた。SUV「ウルス」での日本縦断に参加してみませんか、とのお誘いだ。このメールが、愛車「S124」との暮らしに大きな影響を及ぼすことになろうとは、この時はまだ知る由もなかった。

○ランボの猛牛「ウルス」で西日本を走る

その文面は「ランボルギーニでは、日本、世界が新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受ける今、サーキットから山道、砂地、氷、砂利に至るまで、どんな道にも臆することなく走行するURUSが、この状況下だからこそ、あらゆる道を解き放ち、自由というものの真髄を日本全国で体現し、日本の美しさ、力強さなどの多くの魅力を様々な形で発信していくプロジェクト『URUS Challenge : UNLOCK ANY ROAD JAPAN』を実施いたします」というもの。イベントの内容はSUVの「ウルス」での日本縦断で、福岡を皮切りに広島、神戸、大阪、名古屋を経由してから日本海側を北上し、札幌、仙台、横浜を経てゴールとなる東京・六本木の「THE LOUNGE TOKYO」を目指すというものだった。

コロナ禍という厳しい状況ではあるけれども、今回の内容をみると多くの人を集めるイベントというわけではないし、現地への移動はあるものの、基本的にはずっとクルマを運転し続けるだけなので、安心・安全だ。ランボルギーニのチャレンジングな思いには共感できるし、「NO」という理由は見つからないではないか。早速、OKのお返事をさせていただいた。

約1カ月間にわたって、リレー形式で日本を縦断するという今回のイベントに参加したのは、私のようなフリージャーナリストをはじめ、自動車やファッション、ライフスタイルなどのメディア関係者(すなわち精鋭のドライバー?)ら12名。参加の意思表明と同時に、各自が希望するコースを3つほど選ぶことができたので、自分としてはあまり走ったことのない日本海沿岸と北海道内、そして、生まれ故郷の岡山を中心としたコースのどれかでお願いしてみた。割り当てられたのは4月27日に広島空港をスタートし、30日夜に大阪にたどり着くという計4日間のロングコースだった。

広島空港を午前10時にスタートするということで、万全を期して同空港ホテルに前日泊した筆者。スタート当日、時間通りに姿を現したイエローに輝くウルスをドライブしてきたのは、第1走者であるモータージャーナリストの吉田由美さんだ。全行程でのバトン役を務めるというイエローのジャケットを着たランボルギーニ・テディベアにサインを入れてもらい、手渡しでそれを受け取って引き継ぎが完了。最高出力650PS、最大トルク850Nmの4.4リッターV8エンジンを搭載したスーパーSUV「ウルス」でのドライブ開始である。

筆者が乗り込んだ「ウルス」は専用カスタマイズオプションである「ウルス パールカプセル」仕様の1台。4層パールカラーのイエローとハイグロスブラックのルーフがスペシャルなコントラストを見せていて、ボディサイドには「UNLOCK ANY ROAD JAPAN」のイベントタイトルと福岡から東京に至る走行ルートが描かれている。

フロントには走行シーンを常時インターネットで生配信するためのカメラを装着。リアラゲッジルーム内には手作り感満載の送信用PC機材を搭載している。クルマの位置はGPSで24時間把握され、コンソールにあるレシーバーを使えば同行スタッフと会話できるだけでなく、東京の本部にも状況が伝わる仕組みになっている。同行するダークブルーのウルスにはスチール、ムービー、ドローンの各担当カメラマンが乗り込み、さらにもう1台の同行車「アルファード」には、イベント統括やスケジュールを担当するスタッフが乗り込むという体制だ。

初日は広島空港から山陽道を走り、瀬戸大橋を渡って香川県の「フラワーパーク浦島」へ。折り返して瀬戸大橋のたもとで撮影を済ませ、岡山のホテルで2泊目(約270キロ走行)。2日目は備前焼の窯元である岡山県備前市や世界遺産の姫路城を訪れ、ランボルギーニ神戸を訪問して同地で3泊目(約180キロ)。3日目は明石海峡大橋から淡路島に立ち寄り、折り返してランボルギーニ大阪を訪れたあと大阪で4泊目(約140キロ)。4日目は奈良県十津川村の十二滝で撮影後、和歌山県の熊野本宮まで出向いて折り返し、信貴生駒スカイラインで夜景を撮影して大阪に戻って5泊目(約330キロ)と、無事にハードスケジュールをこなすことができた。お世話になったランボルギーニ神戸、大阪の皆さんや、訪れた地で出会った方々、そして、長い時間をともにしたスタッフ、ランボルギーニ関係者全員に感謝である。

5月23日に六本木で行われた到着式では、アウトモビリ・ランボルギーニ日本の代表であるダビデ・スフレコラ氏が「このたびのUNLOCK ANY ROAD JAPANを通じて、日本各地の美しさをお伝えできたとともに、山道、砂地、サーキットなど、あらゆる道を走破したウルスの力強さを改めて認識いただけたら幸いです」 とコメントした。

筆者を含め、参加した各ドライバーたちの行程や折々の写真については、イベントタイトルの「UNLOCK ANY ROAD JAPAN」で検索すればすぐに見つかるので、ぜひ探してみていただければと思う。
○「S」が「W」に代わるかも?

ウルスのボディは全長5,112mm、全幅2,016mm、全高1,638mmで、この連載の主役である愛車「S124」(4,760mm×1,740mm×1,490mm)とは比べものにならないくらい巨大だ。そのため、大阪市内の都市高速道路で頻繁に出くわすETCゲートや、グーグルマップが提示してくれる狭い道路を通過する際には、左ハンドルということもあり、かなり気を遣うことがあった。しかもホイールはスペシャル仕様のどでかい23インチなので、「ガリッとやったら一体、いくらかかるんだろう」と心配にもなる。

とはいえ、2度にわたって瀬戸内海を横断した瀬戸大橋と明石海峡大橋での爽快な高速走行、和の雰囲気あふれる備前市内の一般道、熊野川沿いの長いワインディング、対向車が来ないことを祈って走った夜の信貴生駒スカイラインの登坂道、奈良の住宅街の狭い道など、ありとあらゆる道路を制限速度順守で走っている限りでは、大出力を発生するエンジンパワーのほんの少しだけを使っているという余裕のある感覚や、異常に剛性が高いボディによる滑らかな走り味がとても印象的で、実はちょっと、124でのドライブを想起させるようなイメージがあった。

帰宅後、早速S124の3号機に乗ってみると、あれれ、あんなに頑丈だと思っていたワゴンのボディが妙に緩く感じる。考えてみると、ウルスで味わったゆったり感と剛性感がミックスされた感覚は、実はS124ではなく、代車で借りたことのある「W124」のセダンに乗った時の感じに近いのかも。やばいやばい。W124セダンが欲しくなってきた。

原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)