長時間労働、過労死、残業代の未払いなどが報じられるたびに、イメージが悪くなる「残業」。しかし、社会人4年目の20代キャリアコンサルタント・渡邉元士さんは、このところ新卒就活生が「残業を嫌いすぎじゃない?」と感じているという。どういうことなのか、説明してもらった。
キャリコアコンサルの渡邉です。このところ「残業」について、過度に気にしている就活生が多い印象があって、ちょっと心配しています。「ワークライフバランス」「自分らしく生きる」のが大事なのは、当然だと思います。私自身も「自分らしく働く」をテーマにした会社でアドバイザーをしています。しかし、その私ですら「そこまで嫌がるの?」と疑問に抱いてしまうぐらい、就活生は残業を嫌がる傾向があると感じます。
そこで今回は、「残業」について、あらためて考えてみたいと思います。
「仕事=やりたくない」前提でいいの?
「残業が嫌だ」という学生の話を聞いていると、残業は「嫌な仕事をさせられる」と決めてかかっている場合がほとんどです。つまり、そもそも「仕事=やりたくないこと」という前提なのです。
仕事をしていれば辛いことがあるのは事実ですが、それでいいのでしょうか。就活生=選べる立場にあるわけですから、まずは「辛いことを乗り越えた先に、やり甲斐を感じられる仕事」や「辛いことも一緒に頑張ろうと思える仲間がいる組織」を見つけるのを重視した方が、自身の幸せに繋がるのではないかと思います。
理由は2つあります。仕事自体を楽しめる可能性が高くなることと、その結果、スキルを身につけやすくなることです。これからは成果を出すためのスキルがないと厳しい時代です。年功序列はほぼ崩れ、「上に言われたことをこなしている」だけで出世できるとは限りません。
スキルを身に着け、仕事力を磨くには、前向きに仕事に取り組むことがいちばんです。だから「仕事が嫌だ」という環境を前提に考えるのではなく、むしろ逆の環境を探すべきだと言いたいのです。
変化の激しい時代です。日本の人口も減り続けていて、国内経済の見通しは不透明です。いまの大学生が「ラクな会社に就職できたから、死ぬまで逃げ切れる」となる可能性はかなり低いと思います。
そう考えると、「成長できる環境」に身を置いて「サバイブできる人材になる」ことが、今の大学生たちにとっては必須条件と言えると思います。
前向きに頑張ることができる環境に身を置こう。
私が言いたいのは「いま残業なしのホワイト企業で働く」ことを重視するあまり、将来の視点を忘れてしまっていないか、ということです。
もちろん、心身の健康を害すレベルの残業や、意味のない理不尽な残業は避けるべきですし、そうした環境に身を置くのはおかしいです。しかし、最初から「仕事=やりたくない」が前提になっていると、仕事の充実感や働き続けるモチベーションを保つのは難しい気がします。
どうしても「仕事=楽しくないこと」という考えを払拭出来ない方は、OBOG訪問などで先輩たちと話してみて、みんながどんな働き方をしているのか、具体的なイメージをつかむのが良いと思います。「仕事はつまらない」という人ばかりではないですから。
【プロフィール】関西学院大学商学部卒。在学中に創業期のキャリア教育系スタートアップ(株)STORYに参画。採用責任者として、約400人の面接・約50人の採用に携わる。その後、ベンチャー複数社にて新卒採用、EdTech・人材サービスの立ち上げを経験。2020年9月より(株)STORY CAREERにてキャリアアドバイザーとして活動。