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BTS、ポジティブな存在感で世界を変えるグループに? インタビューの発言から伝わるメンバーの心情

2021年06月27日 10:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『Rolling Stone Japan vol.15』

 BTSが『Rolling Stone』誌の表紙を飾り、6月25日にはインタビューの日本語訳をノーカット掲載した『Rolling Stone Japan vol.15』が発売された。『Rolling Stone Japan』のWEBサイトではメンバーによるソロインタビューの翻訳記事を順次公開。発売日までのカウントダウンを盛り上げた。


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 アジア人グループが表紙を飾るのは、1967年に米国で創刊されて以来、初のこと。年々大きくなっていくBTSの、さらなる一歩を見届けるような気持ちだ。本誌では、メンバー7人の個性が集うところから、世界的な成功を収めるまで歩みを振り返り、近づいている兵役についての話題、そしてARMY(ファン)との絆について語られている。本誌の俯瞰的な語り口と共に、メンバーのソロインタビューを合わせて読むと、より深く彼らの心情に迫ることができる。


 RMの才能とカリスマ性の発見からスタートしたBTSのプロジェクト。ラッパーか、それとも「アイドル」と呼ばれるポップスターになるか、RMは新たなアイデンティティを模索し続けたと明かす。一方、ネガティブな感情や両親の反対をバネに、高いラップスキルを磨いていったSUGA。ダンスには定評がありながら、未経験からスタートしたラップを彼らしい明るいスタイルへと昇華させたJ-HOPE。


 路上でスカウトされ、「僕には欠点が多い」と1から音楽的スキルを地道に習得していったJIN。デビュー前「隠れメンバー」となりプロモーションには登場せず、BTSの完全体を印象づけるキーパーソンとしてお披露目される使命を背負ったV。常に高い期待を自分に課し、BTSを「彼ら(ARMY)のひたむきな情熱に応えるためにも、ミスを犯すわけにはいかない」と完璧主義な姿勢を貫くJIMIN。そしてBTSというグループと共に、少年から大人へと人間的にも成長を遂げていったJUNG KOOK。


 原石の才能が磨かれていった練習生時代。それぞれが乗り越えた苦悩。7人で過ごしてきた濃密な時間。そして、世界制覇を果たした先にも尽きることのない成長意欲……。リアルタイムで彼らを追っていた人にとっては一つの区切りとして振り返ることができ、そして最近BTSを好きになった人には一気に知ることができる、必読記事といった充実ぶりだ。


 なかでも興味深く思ったは、その見つめる視点が韓国や日本のメディアとは少々違う空気を放っているように感じられたこと。記事の冒頭から、RMが「僕たちはアウトサイダーです」と話している点からも、ホームである韓国や多くのK-POPアイドルが活躍する日本でのインタビューとは異なるスタンスが伝わってくるからだろうか。


 日頃、流暢に英語を駆使して会見やインタビューをこなしているRMだが、会話の内容が複雑になる取材の際は、通訳をつけることにしているという。そして、今回のインタビューにも通訳を伴って答えていることが記されている。


 「マイノリティに属する人々が、僕たちという存在からエネルギーと勇気を少しでも受け取ってくれたらと思っています」(※1)。先述したとおり、創刊以来『Rolling Stone』誌の表紙を飾ったアジア人グループがいなかったということは、それだけ米国音楽市場において彼らのようなアーティストが成功を収めるのは簡単ではなかったということ。


 BTSが今回表紙を飾った背景には、ヒットソングを歌う人気グループというだけではなく、そのポジティブな存在感が世界を変えていくのではないかという期待を集めているようにも感じられる。インタビューは彼らの成長に伴って、世界が変化していることにも言及。全編英語詞の「Dynamite」はBillboard Hot 100で通算3回も1位を獲得。第63回グラミー賞にもノミネートされ注目を集めた。


 続いて、長引くパンデミックに混乱する世の中に放たれた「Life Goes On」は、「Dynamite」とは異なり歌詞が韓国語であることから、米国のラジオ局で流れる機会は皆無に等しかったという。それでも、Billboard Hot 100で1位を獲得。1958年にスタートして以来、主に韓国語で歌われた曲が1位を獲得するのは、これが初めてのことだったそうだ。


 「壁は確かに崩れつつあり、止まることはありません」とRM(※2)。さらにBTSは「Dynamite」に続いて全編英語詞の「Butter」も発表。さっそく、Billboard Hot 100で4週連続1位を獲得し、大きな反響を呼んでいる。BTSの発するエネルギーは、人々の心へと広がるたびに熱を帯びていく。徐々に、そして着実に、頑なになったしがらみを溶かし、そしてより風通しのよい世界に。


 「(「Dynamite」の)練習を重ねて何度も歌ううちに曲にも慣れて、より自然に発音できるようになりました(※3)」(JUNG KOOK)、「たくさん英語を勉強しているおかげで、だんだん英語に慣れてきました(※4)」(SUGA)……と、ソロインタビューからも貪欲に言語の壁を超えた存在へと駆け上がっていく様子が伺える。


 彼らが、すでに日本語という壁を超えた軌跡も自信の一つになっていることだろう。6月16日にリリースした日本ベストアルバム『BTS, THE BEST』は、今年度最高初週売上を突破し、記録的なヒットを達成している。こうした数字は韓国から日本、そして世界へと羽ばたく彼らを応援するARMYの気持ちの大きさそのものだ。


 記事の中に、こんな言葉があった。「BTSはファンにとって、親友のような存在であるべきだ」(※5)。世界的なスーパースターでありながら、その存在感は一番頑張っている身近な友だちのよう。お互いにその奮闘ぶりが励みになり、その熱意の交換がやがて世界を変えていく。ここからBTSがどのようなチェンジメーカーとしての活躍を見せてくれるのか、ますます目が離せない。


※1、2、5:『Rolling Stone Japan vol.15』より
※3:https://rollingstonejapan.com/articles/detail/36056/3/1/1
※4:https://rollingstonejapan.com/articles/detail/36082(佐藤結衣)