親が"疑似科学"にハマってしまった。しかも、なにやら怪しい商品を買おうとしていて家族にも勧めてくる。一体どうすればいいのか──。
キャリコネニュースに寄せられた20代女性読者の相談に、心理カウンセラーの浮世満理子氏が答える。
「今までにもスピリチュアルや疑似科学などにハマっていて、毎回勧めてきます」
「実家の母(60代)が『電磁波を遮断する機械を購入する』ということがきっかけで喧嘩になってしまいました。母は最近仕事がデスクワークに代わり、毎日PC操作をするようになりました。その頃から体調が悪くなってしまったんです」
やがて母親は電磁波が原因だと思いこんでしまったという。さらに知り合いから電磁波を遮断する機械を紹介され、通常5万円のところ2万円以下で買えるというパンフレットまでもらってきた。
「母親から『あなたも体調不良だといっているから、買ってあげようか?』と言われました。私は電磁波で病気になるというのは疑似科学だと思っています。『なんでそんなの信じるの?』と言ったことがきっかけで電話口で大喧嘩になりました」
「今回の喧嘩は、母の趣味を否定してしまった自分にも非があると思っています。母はいい大人ですし、好きなことにお金を使えばいいと思っています。でも、今までにもスピリチュアルや疑似科学などにハマっていて、毎回勧めてきます」
「私を思ってのことだとは思いますが、いつも『自分は不要だ』と拒否していました。それでも毎回勧めてくるので困ります。今後、母とどうすれば良好な関係を築けるのでしょうか」
疑似科学にハマり続けるのは"寂しい"から?
今回の相談のポイントは、「疑似科学を信じる原因」と「バックファイア効果」になります。何を"疑似科学"と呼ぶかは様々な定義がありますが、そういったものは宣伝やPRがつきもの。お母様には元々"健康不安"があって、解消するために疑似科学を信じているのではないでしょうか。
最近だと「コロナは無い」「ワクチンはDNAの組み換えをしてしまう」という考えを支持する人もいますが、信じている人たちに間違っていると否定すると、より自分の信念を深めてしまう「バックファイア効果」が働きます。お母様もそのせいで、より意固地になっているのだと考えられます。
電磁波遮断器はちょっと胡散臭いと感じるご家族も、もっともです。でも信じるものは人それぞれ違いますからね。相談者さんからすれば、毎回疑似科学などを勧めて来られて不快かもしれませんが、それはやっぱり娘を心配しているからです。
なのに相手から拒否をされ、距離を取られる。孤立してしまうと"誰でもいいからコミュニケーションしたい"となり、声をかけてきてくれる疑似科学やカルトなどにハマってしまいがちなんです。お母様が疑似科学などにハマり続けるのも、寂しい気持ちがあるからではないでしょうか。
円滑な親子関係のために家族が"健康アドバイザー"になってみて
その上、健康に対する不安があれば、より寂しさも不安も増してしまいます。相談者さんができることは、健康不安を持つ親を、家族が安心させてあげることです。見ず知らずの団体ではなく、ご自身が密にコミュニケーションを取ることでお母様の寂しさは埋められます。
もし、お母様がハマっているものを不安に思うなら、相談者さんがお母さんの"健康アドバイザー"になってみてはどうでしょう。具体的には、何かを勧められた場合、相手は健康不安を持っているということを念頭に、否定せず、逆に自分が安心安全と思うものを提案します。
例えば、
「私の健康を気遣ってくれてありがとう。でもヨガとか太極拳とかもいいらしいよ!」
「免疫を上げれば体調を崩しにくくなるらしいよ。私もやってるんだけど、ビタミンC摂ると調子いいよ」
「もずくって栄養があるから摂るといいんだって。今度買って帰るから一緒に食べようよ」
など、相手の好意を受け取りながらも「これがいいんだって!」と別のものを勧め、コミュニケーションを取ってみてください。家族間でコミュニケーション欲が満たされると、疑似科学などに誘われても「娘がおすすめのサプリを持ってきてくれるから」と断るようになりますよ。
ポイントは、相手を否定するのではなく、良好な人間関係を築こうとすること。そうしたら「お母さんも何か気になっている(買おうと思っている)商品があれば先に相談してね」とも伝えられますしね。
お母様が購入を検討した機械は金額的に大したことはありません。しかしハマって何千万円をつぎ込んでしまう人もいます。これは疑似科学以外にも当てはまります。正論が人を幸せにするわけではありません。相手を慮ったコミュニケーションがすべてを解決するのだと考えています。
【回答者プロフィール】浮世満理子 同社運営のアイディアヒューマンサポートアカデミー学院長、上級プロフェッショナル心理カウンセラー。これまでにプロサッカーJ1クラブやプロテニスプレーヤー、プロゴルファー、陸上、体操選手らのメンタルトレーニングを担当し、2008年にはトレーナーとして北京五輪に同行した。