またしても、角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)がクラッシュしてしまった。
2021年F1第7戦フランスGP予選Q1。開始後、早々にソフトタイヤを履いてコースインした角田は、タイムアタックに入った直後の1コーナーを立ち上がったところで、スピン。コントロールを失ったカーナンバー22のマシンはリヤからタイヤバリアに突っ込んでしまった。
ただし、今回のクラッシュは同じクラッシュでも前戦アゼルバイジャンGPの予選Q3でのクラッシュや、第5戦モナコGPのフリー走行2回目で犯したクラッシュとは、意味合いが異なっているように思う。
モナコのクラッシュは予選とレースに向けてデータ取りを行わなければならないQ2で犯した軽率なミスだった。ガードルに囲まれたモナコでは小さなミスが命取りになるという典型的なミスで、いわゆるモナコの洗礼を浴びた形となった。
アゼルバイジャンではその反省を踏まえて、フリー走行から予選Q2まではクラッシュすることはなかった。初めて進出したQ3で、「僕の昔からの個性というか悪いところでもあり、いいところでもあるんですけど、Q2でトップと1000分の29秒差とうまくいったので(Q3で)3番手以内を目指した」(角田)末のクラッシュ。もちろん、クラッシュしたこと自体は褒められたことではないが、最後のタイムアタックで攻める姿勢を見せたことは間違いではない。
だが、今回のクラッシュはフリー走行での軽率なミスでもなければ、O3の最後のアタックのような、限界ギリギリで攻めなければならないシチュエーションでもなかった。
Q1の1セット目のタイヤ。しかもタイムアタックに入った直後の1コーナーだった。プロのレーシングドライバーとして、決して犯してはいけない類のミスだ。
なぜ、クラッシュしたのか。角田は次のように説明した。
「ターン1の内側にある黄色い縁石に乗って、マシンのコントロールを失いました」
黄色い縁石とは、通常の赤白の縁石のさらに外側にある高い縁石のことで、いわゆるソーセージ縁石のことだ。
「なんとかクラッシュを回避しようと、フルブレーキングしたけど十分じゃなかった。クラッシュ自体は大きな衝撃ではなかったけれど、1速に入れて再始動しようとしたのに、クラッチが機能せず、ギヤが入らずに動くことができませんでした。ギヤボックスが故障していなければいいんですけど……」
予選を通過しなかった角田だが、FIAから「フリー走行でレースに出場するに十分なタイムを記録している」との理由で、日曜日の決勝レースには無事、出走することとなった。
予選でミスした角田が日曜日にできることは、ミスを取り返すことではなく、同じミスを繰り返さないこどたろう。