千葉、埼玉、神奈川のベッドタウンの中でも、"意識が高い"と言われがちな神奈川県横浜市青葉区。中でも、東急田園都市線あざみ野駅周辺で暮らす"マダム"たちは、「あざみネーゼ」と呼ばれているという。
東京都港区白金に住む「シロガネーゼ」ほどではないものの、優雅な生活を送るあざみネーゼたち。今回は書籍『これでいいのか神奈川県横浜市』から、あざみネーゼを始めとする横浜市青葉区民の特徴ついて紹介する。(文:地域批評シリーズ編集部)
昼間のあざみ野駅へ出向いてみると、奥様仲間と一緒にランチを楽しむ光景が
あざみ野周辺に住む奥様たちが、アザミネーゼと称されるには、街のイメージが関係してくる。たまプラーザ・あざみ野・青葉台などには、ケーキ屋やレストランなど外食系の高級店が多く、スーパーなどでも高級食材が普通に売っていたりする。加えて、東急が行ってきたちょっと高級感ある住宅作りも欠かせない要素。いわゆる道幅が広く、あちらこちらに桜並木があるといった独特の作りだ。
もちろん、セレブな奥様たちという面は、行動にも表れてくる。昼間のあざみ野駅へ出向いてみると、奥様仲間と一緒にランチを楽しむ光景が見かけられる。値段を調べてみると驚愕の事実が!
調べた限り、安くても相場が1000~1500円で、懐石料理が2500円であったり、挙げ句の果てには5000円を超えるコース料理まであるのだ。調査した範囲で最も値段が高かったのが、高級店として有名な店のスペシャルランチコース8400円。まさにスペシャルな値段。
働く男性たちが、仕事の合間を縫って食べる昼食は500円前後。高くても600?700円といったところが主流だ。最近では時代を反映してか、30歳前後の若い世代では、弁当持参で来る者も少なくない。
習うのも好きだけど、"自宅ビジネス"を行う人も
青葉区には稽古事教室が多いが、何も習っているのは子どもだけではない。語学やビーズ、料理、茶道、音楽からフラワーアレンジメントまで、あらゆる種類のカルチャースクールが揃っている。子どもが習い事に行っている間に、ママさんたちもじっくりと英会話やら、ダンスやらで楽しんでいるようなのだ。
あざみネーゼたちのスゴさは、これだけには止まらない。習うこともするが、自分の趣味・特技を利用して「教室」を開いている人も多くいる。すなわち、子どもやマダム仲間に教える側にまわっているのだ。
なかでも自宅でも教えやすいピアノや茶道・華道といった教室が数多く見られ、趣味を実益に生かして有意義な生活を送っているといえる。あざみ野周辺には高級エステも多いので、自宅ビジネスで稼いだ小遣いでエステに通い、そして小粋なオシャレをしてランチへと出かける……有閑マダム的な生活を想像してしまう。
意外とカタい、あざみネーゼのお財布事情
そんな「あざみネーゼ」たちが住む街ではあるが、本当にセレブが住んでいるのか、疑いたくなる側面もある。東急が建てた三規庭というモールには、当初は5万円も使うような寿司屋が入っているなど、高級テナントがズラリと並んでいた。
しかし、あざみネーゼたちの財布の紐は予想以上に堅く、次々と高級店が撤退していき、サイゼリヤが入ったり、回転寿司になったりしている。どうやらあざみネーゼたちは、自分が欲しい物ややりたいことにはお金を出すが、日常生活品などには必要以上にお金を遣わない傾向にあるようだ。
それどころか、ネイルサロンやらピアノ教室など、自宅でできる「習い事教室」や資産運用に熱心で(昨今の経済危機で顔面蒼白な奥様も多いことであろう)、優雅に遊んでいるかに見えて、実はきっちりお小遣いを稼いでいるわけだ。
銀座で必死に600円のランチを探す夫の給料と、自分の稼ぎで楽しく暮らす(教室などで生き甲斐もゲット!)のが、あざみネーゼの正体なのであろう。
結局のところ、他所に住む人たちが思うほどセレブな人はおらず、駅周辺から離れるとアパートや田園風景などもあり、田園調布や白金台のような本気の「大金持ち」の家も少ないというのが結論。
住人たち(というか奥様連中)はステレオタイプな発想で自分たちをセレブと思いこんでいるかもしれないが、頑張っても"プチ"セレブが限界ではなかろうか。
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本書では、ほかにも青葉区民のお財布事情やライフスタイル、横浜市内の他エリアについても言及されている。"カッコイイ"イメージの強い横浜だが、その実情を紐解くとまたその見方も変わるのかもしれない。
■書籍情報
『これでいいのか神奈川県横浜市』
著者:小森雅人氏、川野輪真彦氏、藤江孝次氏編
価格:790円+税
発行:マイクロマガジン社
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