2021年06月17日 10:41 弁護士ドットコム
「建設アスベスト給付金法」の成立を受けて、研究者や弁護士らの団体が6月16日、建材メーカーも資金を拠出すべきなどとする提言を発表した。
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建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み肺がんや中皮腫などになったとして、元作業員らが起こした「建設アスベスト訴訟」は今年5月、最高裁が国や建材メーカーの責任を認めた。
判決を受けて6月9日に成立した同法は、症状の程度に応じて550万円~1300万円を支給するもので、裁判を起こしていない人も救済の対象としている。
アスベスト関連の病気は潜伏期間が長い。政府は今後30年間に発症する人も含めて、支給対象者を約3万1000人、支給総額を4000億円と推計し、基金を創設する。
立命館大名誉教授の吉村良一氏(民法・環境法)らが共同代表を務める「石綿被害救済制度研究会」は提言の中で、同法で給付が損害賠償としての性質を持つことが明記されたこと、つまり責任の所在を明確にしていることなどを評価しつつ、残された課題を指摘した。
以下、大きく2点を紹介する。
(1)最高裁で責任が認められたのに、建材メーカーの関わり方が盛り込まれていない。建材メーカーはアスベストで利益を得ていたのだから、アスベストの使用量を調査し、その量に応じて基金に資金を拠出すべき
(2)同法では、屋外作業者が対象外となっている。作業実態を考えると、屋内と屋外でアスベストにばく露する危険性は大きく変わらない。司法判断で法的責任までは認められないとしても、行政施策としての救済制度では、すべての建設アスベスト被害者を対象とすべき
また、国の責任期間が限定されていることも問題視している。
建設アスベスト訴訟全国連絡会も同日に発表した声明で「最大の課題」として、建材メーカーが補償基金制度への参加や拠出を拒んでいることを挙げた。また、屋外作業者が対象外となったことについても、救済の必要があると言及している。