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ドラマ化で話題!『プロミス・シンデレラ』が描く”恋愛の障壁” 崖っぷちバツイチ女子の恋愛は成就するのか?

2021年06月13日 11:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 2021年7月から放送が予定されているドラマ『プロミス・シンデレラ』。原作は橘オレコ氏が漫画アプリ「マンガワン」で連載している同名漫画である。


 夫の不倫が原因で家を出ることなってしまった「桂木早梅」は、キャリーケースに詰めた荷物をすられてしまい、公園で寝泊まりして生活していた。そんな彼女の前に現れた高校生「片岡壱成」とひとつ屋根の下で暮らすこととなり、お互いを意識していく様子が描かれる物語だ。


 「次にくるマンガ大賞2018」Webマンガ部門にランクインしたり、累計発行部数も200万部を突破するなど、本作はドラマ化が決定する前から多くの読者に支持されている作品である。本稿ではTVドラマの放送開始を控えた『プロミス・シンデレラ』の魅力を考えてみたい。


 物語序盤の山場として挙げられるのは、第7話「本音」で描かれる早梅と夫「正弘」が離婚届けを記入するため再開するシーン。元々ふたりで暮らしていたマンションで離婚届けを記入しながら、早梅と正弘は口喧嘩をすることとなる。


 正弘が待ち合わせの時間通りに来ないことや、ふたりで風邪を引いた時に無理して早梅の看病をしたため、正弘が風邪を拗らせ入院してしまったこと。正弘も鞘(さや)付きの枝豆を味噌汁に入れてほしくなかったと反論する。


 ふたりは口喧嘩を通じて、これまで言えなかった本音を互いに知る機会となっているように見受けられる。現に早梅は正弘が言いたいことを我慢していたことが、不倫の原因だったのではないかと考え始めるのである。


 早梅が改心しつつある状況のなか、その場に居合わせた壱成のある一言を皮切りに正弘の表情は一変する。その直後に正弘は膝と手を地面につけて早梅に謝り、正式に離婚をすることなるのだ。


『プロミス・シンデレラ』2巻(小学館)

 一文無しで途方に暮れていた早梅が壱成に拾われるなど、本作では人生のどん底で救われる場面もありつつ、ハッピーエンドに収束すると見せかけて状況が急変する展開が非常に多い。ドキドキしてしまう登場人物の恋模様に加え、ハラハラとさせる予定調和を破壊するストーリーによって、読者は物語の世界に没入して作品を読み進めることができるのである。


 『プロミス・シンデレラ』が破壊したものは予定調和だけではない。恋愛における障壁だ。10歳差という早梅と壱成の年齢差に加え、既婚者であった早梅の境遇など、ふたりの間には異性として好意を寄せることへの様々な障害が存在している。



個人的には早々にくっつけてイチャイチャさせるのはそんなに萌えないというか、順調にうまくいく恋愛よりは“ケンカップル”のような仲だったり、何か1つ障害があるほうが好きなんです。それを乗り越えたときに2人がどうなるのかを妄想するのが好きで。


(「プロミス・シンデレラ」橘オレコインタビュー – コミックナタリーhttps://natalie.mu/comic/pp/promisecinderella)



 インタビューで橘氏が語った言葉の通り、早梅は壱成の家で暮らし始めてからも正弘に未練を残す様子が見られ、壱成を異性として見るようになるまでかなりの時間を有している。


 様々な障害を認識し、お互いに思う感情を自分で整理しながら、ゆっくりと好意を寄せていく早梅と壱成。目まぐるしく展開するストーリーによって際立つ心情の繊細さが、童話『シンデレラ』のような共感を読者に与えたのかもしれない。


■あんどうまこと(@andou_ryoubo)
フリーライターとして漫画のコラムや書評を中心に執筆。寮母を務めている。