少子高齢化が進む日本。このまま行くと、2065年には高齢者1人を現役世代1.3人で支えることになるという。社会保険料も今後さらに上がっていくと見られるが、高齢者のために若者世代に負担を強いることは、果たしてどこまで許容されるのか。
経済評論家・佐藤治彦氏の著書『急に仕事を失っても、1年間は困らない貯蓄術』(亜紀書房)の中から、年金制度をめぐる論考を紹介する。
「現役=経済的に余裕がある。老後=経済的に余裕がない」という図式は成立しない
20世紀末の日本には独身貴族という言葉がありました。若い世代は経済的に余裕があり、たくさんお金を使って楽しんだ。今や若い人はけっして豊かではありません。それどころか、生活や奨学金の返済に追われている人ばかりです。正社員ではなく非正規やアルバイトで生計をなんとか支えている人も多いです。
つまり、現役=経済的に余裕がある。老後=経済的に余裕がないという、単純な図式で考えるのが非現実的なのです。老後の面倒は、世代を超えて面倒がみられる人に、それ相応の負担をしてもらう。もっとはっきり申し上げると、経済的余裕のあるシニアには積極的に年金を支える側にまわってもらうべきだと思うのです。
さらに収入に対してだけでなく、資産を多く持つ人にも負担してもらいましょう。そして、年金に対する不安の減少にも手をつけるべきです。今や禁じ手とされてきたマクロ経済スライド方式が実際に稼働し始めた年金制度。これは、人口や物価、経済、財政の状況に応じて、老後に支払う年金の金額を減らすことができる制度です。
私は、この制度を全面的に否定するものではありません。ただ、毎月25万円もらう人と、5万円しかもらってない人を同率で減らすのは間違っていると思うのです。
ここではベーシックインカム的な考え方で、たとえば、1人毎月10万円までの年金は一切減らさない。マクロ経済スライドで年金を減らすのは高額の年金をもらっている人で、それも、たとえば、10万円以上15万円までの部分と、15万円以上の部分では、減らす比率を後者の方を大きくする。そんな工夫が必要ではないかと思うのです。
豊かな生活を送る老人にとって、年金は生活費というより小遣い
引退して老後を迎えた後にもらう年金額まで、大きな格差をつける必要はないと思います。そして、多くの年金をもらう人とは、もともと高額の所得を得て、老後も豊かな資産を持っていることが大多数です。すでに十分に暮らしていける人たちです。
その豊かな生活は、本人の努力や工夫もあったでしょうが、日本の社会、経済の仕組みがあってこそ、十分な資産を築くことができたのです。日本社会あってこその豊かさなのです。ですから、その社会に貢献してもらおうというわけです。豊かな生活を送る老人には、年金は生活費というより小遣いです。そんな余裕のあるシニアには年金制度を支える側にまわってもらえばいいのです。
●書籍情報
『急に仕事を失っても、1年間は困らない貯蓄術』
著者:佐藤治彦
出版社:亜紀書房
価格:1200円+消費税