F1第6戦アゼルバイジャンGPの表彰式のセレモニーが行われている裏に設置されているミックスゾーンに現れた角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)。開幕戦のバーレーンGP以来、5戦ぶりにポイントを獲得したものの、そこに笑顔はなかった。
「久しぶりにいいレースだったのでは?」と尋ねられると、「いいえ、まったくいい日じゃなかったです」と即答し、こう続けた。
「レッドフラッグまでは調子がよくて、ある程度走りもよかった。でも、レッドフラッグの後はフラストレーションの溜まる2周でした」
前日の予選で8番手となった角田は、予選6番手のランド・ノリス(マクラーレン)がペナルティで3グリッド降格したため、今シーズン最高位となる7番手からスタートした。
スタートでひとつポジションを落としたものの、7周目にはフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)を抜き返して、再び7番手となった。タイヤはまだグリップしていたが、アロンソがピットインしたため、チームはアンダーカットされないよう9周目に角田をピットインさせる。アロンソの前でコースに復帰した角田は、上位陣が1回目のピットストップを終えた段階で8番手と入賞圏内をキープしていた。
その後、ランス・ストロール(アストンマーティン)がクラッシュして7番手となり、レースは終盤に入った。このまま7番手でチェッカーフラッグを受けるかと思われた46周目に、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)がタイヤトラブルでクラッシュ。すぐさまセーフティーカーが導入され、赤旗が出された。51周のレースは49周目にセーフティーカー先導でグリッドへ向かった後、スタンディングスタートで再開されることが決まった。
事実上、2周だけのミニレースという異例の形で締め括られることになった。
6番手からスタートした角田だったが、再スタート直後にノリスとアロンソに相次いでオーバーテイクされてしまう。それが、納得いかなかった。
「アグレッシブにいったつもりですが、正直どうやったらあのシチュエーションでポジションをふたつも落とさないでレースできるのかはまだわからない。自分としてはできる限りのことをしたのですが……」
決してポジションを守ろうとか、接触を避けて守りに入って抜かれたわけではない。自分のレースをしたのに、肝心な場面でふたつもポジションを落としたことに戸惑い、不満の残るレースになってしまった。
「すごくフラストレーションが溜まるレースでした。特に最後の2周が……」
開幕戦からスタートに課題を抱えていた角田。しかしその後、マシンの挙動に自信が持てず、自分の走りができないという問題にも対処しなければならず、スタートの課題を克服するまでには至っていなかった。
モナコGP後、イタリアに移ってエンジニアとのミーティングを重ねたことで、マシンに関してはかなり自信を持って攻めることができるようになった。
「ステップアップできたレースウィークだったんじゃないかなと思います」
最後にポジションをふたつ失ったが、それよりも大きなモノを得たアゼルバイジャンGPだった。